表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻印のノッカー  作者: アキハル
1/25

序章

8万字の作品で、既に書き上げてあります。


なるべく短い間隔で追記修正しながらちょっとずつ投稿していきます。

よろしくお願いします。

 我々を山師(ノッカー)と呼ぶものがいる。

 貴方のようなやんごとなきお方にとってはまさに、だろう。

 やれあの森に不死の霊薬があるとか、やれあの山に金銀財宝があるとか囃し立てるバカ共。

 そういう世間の風潮は重々承知している。まぁそれに関して強くは否定しないし、あれこれ云うつもりもない。

 我々は秘密主義だから第三者にとって胡乱な存在であるのは当然だし、そういう存在であることを望んだのは我々の自己責任でもある。

 実際、秘密結社のようなものだし。



 うん、うん。嫌そうな顔で聞いているね。

 でもまず誤解を解いておきたいんだ。我々は決して詐欺師でも山師でもない。

 むしろ学者に近い。地質学者、生物学者、考古学者……まぁなんでもいいがそれらに類する職業といえる。国家資格?いや、そういったものはないかな……。

 何故なら我々が居を構える四月半島には国がない。無政府状態というやつでね。

 無法が法と化しているが、まぁ大丈夫だよ。来る途中に町並みは見てもらえたろう?

 どこにでもある、活気に溢れた港町さ。

 例の災害のせいで人の住み着くような土地ではなくなってしまったんだが……今はこの通り立派な共同体を築き上げている。

 食い扶持のない文無し、故郷を追われた落人、そして災害の秘密を解き明かしたい変人、そんな連中が百年前に集まってできたのがこの堺町(さかいまち)だ。

 我々の知的好奇心を満たすための愛すべき故郷さ。

 今では自治体らしきものができて、町には病院や学校なんてものも当たり前のようにあってかなりこう、ちょっとしたものになっている。

 そこいらの国の都市に勝るとも劣らない規模で、掲げる看板としては中々のものだろう?

 見た目はとても大事だからね。私も他の連中もそこには力を入れてる。

 我が堺町を利用するお客様も随分増えたから、資金が増えるとやれる事業の幅ももどんどん広くなっていってるんだ。近年の発展は眼を見張るものがある。

 もちろん、君の国の王様、あいや皇帝陛下も我々の貿易に欠かせないお得意様だよ。

 ああ失礼、この話題は嫌だったよね。

 話を戻そう。

 ええと、どんな話だっけ。そうそう私らは不審者の集団じゃないよって話。



 ん?そういう事言うから余計に怪しい?

 まいったなぁ……やはりマーサーに任せるべきだったか。自慢じゃないが私は昔から警戒心を持たれるタイプでね。こういう、何かをプロデュースする営業トークは苦手なんだ。

 なんでこういうときに限ってマーサーがいないのかなぁ……。

 学長は多忙なんだろうけどお客人をもてなすのは組織の長の役目だろうに。

 暇人が私だけだったのだから仕方ないか……。

 ナサニエルなら上手くやるだろうだけど口が上手すぎてある意味あいつが一番危険だし、イグナートは無愛想過ぎて論外なんだよな。でも私よりは誠実そうに喋るからなぁ。

 なんでいないんだよあいつら。

 ああ……私の出した課題のせいで死にかけてるんだった。現在進行系で。

 え?嘘嘘。誤解だってこの町は安全だから。

 こほん、気を取り直して。

 真摯に我々の理念理想を語ることで私の本気とこの町の安心安全を伝えよう。

 


 貴方は宇宙という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 この時代の人間としては馴染みのない単語だろう。いや、そも君の国が語源だったか。

 宇は天地四方上下、すなわち空間の全てを指し。

 宙は古来今、すなわち現在過去未来を包括する時間の全てを指す。

 2つを合わせて時間と空間のすべて、という意味だよ。

 だとすればまさに我々の立っているこの埃臭い研究室もまた宇宙に他ならない。

 草木の生い茂るありふれた森も、海へと伝う河も、街も人も全て宇宙の肚の中なのだ。

 そう、全ては殺されてしまった宇宙の肚の中。

 然るに、遺体を見つけなくてはいけない。カミの遺体を。

 カミとは宇宙という単位の生物なのだから。途方も無い話だけどね。

 ノッカーという言葉は西側で鉱山妖精という意味でね。私はこっちの呼称は気に入っている。

 未知の時間と空間を掘って掘って突き進む我々はまさに、宇宙を掘っているからだ。

 私は山師ノッカー、人はサンジェルマンと呼ぶ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ