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第二話

終戦日なのでどうしても仕上げたかったもので……雑いので多分修正します。







「行く末……となるとこの日露の結果も知っていると……?」

「はい……」

「……話が長くなりそうだな。よし、皆も座ろう」


 将和の表情に何かを察した陛下はそう言って将和らを椅子に座らせる。


「それで日露の結果はどうなるのだ?」

「……勝つ事は勝ちます。ですが……」


 将和は過去の記憶を紐解いて一つずつ海戦、会戦を説明していった。気付けば夜も更けて時刻は0100を指そうとしていたのである。


「ムゥ……」

「まさか……黒溝台会戦で負けた後に満州から撤退したと思ったら朝鮮が裏切るとはな……」

「勝ったは良いが……総力戦を味わうとはな……」


 将和の説明に山本や大山達は唸るのである。


「自分も覚えている限りの知識は提供します」

「ウム、感謝する三好」

「はっ」

「しかしそうなると満州での戦略もまた見直しが必要だな……」

「児玉さぁと話す必要があるでごわんな」


 大山達はそう話すのであった。将和が三回目の事を話してくれなかったら恐らくは三回目と同じ状況になっていただろう。








「また呼び出しては済まんでごわす」

「構いません」


 陛下らとの再会から一週間後、将和と長谷川は再び海軍省の山本に呼ばれたので大臣室に入室していた。


「今日はどんなで?」

「ウム……開戦時までに『薩摩』型は間に合うだろう」

「ほぅ、間に合うのですね……」


 山本の言葉に将和は安堵の息を吐いた。


「ウム」


 『薩摩』型は史実より早くに完成した宮原缶を搭載、更に『薩摩』もブラウン・カーチス式タービンを搭載した事で両艦とも20ノットの速度を発揮する事が可能となっていたのだ。


「これで何とか八・十艦隊は開戦時までに揃う事になる」


 海軍は前回及び史実と比べ、艦隊計画を大きく変更していた。即ち戦艦八隻、装甲巡洋艦十隻を建造配備整備を目的としていたのだ。

 戦艦はそれぞれ『富士』型二隻、『敷島』型四隻、『薩摩』型二隻の八隻。

 装甲巡洋艦は『八雲』『吾妻』『浅間』型二隻、『出雲』型二隻、『春日』型二隻、『筑波』型二隻の十隻である。


「それで『八雲』と『出雲』型二隻の三隻を改装途中と聞きましたが……?」

「ウム。三隻もタービン搭載に改装中でな」

「成る程……では装甲巡洋艦は全てタービン搭載に改装予定なのですか?」

「当初はそうだった……」

「当初はと……つまり……?」

「改装で海軍の費用が無くなってな。陸さんは陸さんで師団増強や砲弾生産備蓄があるから此方に(海軍側)に振り分けるのは無理なのだよ。ハッハッハ」


 山本は乾いた笑いをするしかなかった。何処の貧乏国家も全てはカネ次第である。


「それなら仕方ありませんね……」

「三隻ともパーソンズ式タービンを搭載だが17000馬力を発揮するようになっている」


 なお、『八雲』は23.9ノット、『出雲』『磐手』はそれぞれ23.4ノット、23.7ノットを発揮するようになっていた。


「まぁこの三隻と『三笠』『敷島』は戦後も改装して実験艦にする予定だから色々と変わるぞ」

「成る程、そいつは楽しみですね……」


 将和はそう言いながら出された茶を啜るのであるが山本は更に口を開いた。


「それと……開戦劈頭で旅順を攻撃する事は同じく決定済みだが……駆逐艦隊の雷撃をせんよ」

「えっ? しないんですか?」

「ウム……ヒントをやろう。『EA-3作戦』と言えばいいかな?」

「ブッ!?」


 山本の言葉に将和は啜っていた茶を吐き出した。その言葉は将和以外が知るなら長谷川と宮様くらいしかいなかった。


「……爆薬を仕掛けるのですか?」

「完成就役した第一型潜水艦5隻が呉にいるでごわす。これに決死隊を編成して爆薬を仕掛けるでごわす」

「……そう来ましたか……」


 山本の言葉に将和は天を仰いだ。自分が気付く前から進められていたのだろう。山本は将和の様子を見て悪戯に成功した子どものように笑っていた。


「ハッハッハ……ただ人選がの」

「何か問題が?」

「是非にとせがんでいるのが広瀬大尉なのだよ」

「あー……成る程」


 歴史の修正力なのか終焉の場所として定められているのか、広瀬大尉はこの作戦を志願していたのだ。


「まぁ東郷もそれとなく生きて帰れとは言うておるがの……」

「そう願うしかないですね」


 そう 言う将和だった。そして年が明けた1904年、日露の関係は最早壊れる寸前だった。

 直前交渉で日本側は満州をロシヤへ半島は日本の支配下に置くという妥協案を示した所謂「満韓交換論」をロシヤ側に提示した。

 なお、日本側は半島を支配下に置くつもりはなく、不干渉地帯になれば……という思惑もあった。

 だがロシヤは半島でも増えつつあったロシヤの利権を妨害される恐れのある妥協案に興味を示す事はなく、逆にロシヤは日本側に半島の北緯39度以北を中立地帯とし軍事目的の利用を禁ずる案を提供する。

 日本側もこの提案は事実上半島がロシヤの支配下になり日本の独立も危機的な状況になりかねないと判断した。またシベリア鉄道も建築中である全線開通するとヨーロッパに配備されているロシヤ軍を極東方面への派遣も容易となるため……政府と陛下も決断を迫られていたのだ。


「やはり前回と同じか……」

「はい……アメリカを通じて交渉をしていますが……ロシヤ側からの満足な回答は……」


 御前会議で陛下や伊藤博文、桂首相等はそう話していた。


「伊藤、そちらの働きには朕も感謝しておる」

「陛下……」


 そして陛下はゆっくりと立ち上がり座ると伊藤達に対して口を開いた。


「……決議通りで良い」


 陛下の決断に伊藤達も即座に立ち上がり陛下に頭を下げるのである。

 斯くして日本の方針は戦争という選択に決まった。

 そして1904年2月6日、外務大臣の小村寿太郎はロシヤのローゼン公使を外務省に呼び、国交断絶を言い渡した。また同日、駐露公使の栗野慎一郎はラムスドルフ外相に国交断絶を通知した。

 その過程で日本陸海軍は動員を実行していた。陸軍は25個師団を編成予定としていたが2月の段階で稼働していたのは常備師団を含めての16個師団(近衛師団を含む)だけだった。

 海軍は聯合艦隊を完結させ三個艦隊を編成していた。

 そして将和は前回と同じ辞令を受けていた。


「特務参謀ですか……」

「うむ。前回と同じくであるがその方がお前も動きやすいからな」


 海軍大臣室で将和は山本権兵衛と話していた。


「作戦計画も前回と同じく行動させている……上手くいけば初戦は制するだろう」

「手始めはウラジオストクの巡洋艦隊と旅順の太平洋艦隊……」

「下駄は東郷と上村に預けた。奴ならやれる」


 将和の言葉に山本はニヤリと笑うのである。そして海軍は同日から行動を開始した。釜山沖でロシヤ船籍を二隻拿捕に成功する。

 8日、陸軍先遣隊の第12師団の小越旅団が仁川に上陸した。同日1800、旅順東方44海里の円島付近に進出した第一型潜水艦五隻は夜の闇に紛れて旅順に近づこうとしていた。


「しかし少佐……海軍の上層部も面白い作戦を考えたモノですな?」


 決死特別攻撃隊の一員である杉野上等兵曹は攻撃隊隊長である広瀬少佐に問う。


「ウム……だが敵が考えていない驚くような作戦をしてこそ奇襲が成立するのだ。厳島然り桶狭間然りとな」

「成る程」


 広瀬と杉野がそう話していると五隻はゆっくりと2200には旅順口付近にまで到着した。そこで広瀬の乗艦する第一潜水艦から潜航を開始し、他の潜水艦もそれに続く形で潜航をした。

 安全深度は約45mだが大胆にも広瀬は潜望鏡深度で航行させ潜望鏡で確認しながら目標となる戦艦を見定めていった。


「いた。あの戦艦にするぞ」


 目標を定めた五隻はゆっくりと浮上をし特別攻撃隊の隊員達は大量の爆薬を喫水面付近に設置し作業を終えた潜水艦達は再び潜航、潜航しながらそのままロシヤ軍が警戒する水道出口を通過するのであった。

 そして円島沖で待機していると次々と聞こえる爆発音と旅順方面からの黒煙を見て乗組員達は万歳しながら喜びあい悠々と帰還をしたのである。

 そして被害を受けたロシヤ太平洋艦隊では艦隊司令長官のオスカル・スタルク中将は頭を抱えていた。


「初戦で戦艦三隻爆沈、一隻大破横転……神の慈悲は無いのか……」


 潜水艦隊の功績は十分過ぎる程だった。この攻撃でロシヤ太平洋艦隊は戦艦『レトヴィザン』『ペレスヴェート』『セヴァストーポリ』が爆沈、『ポベーダ』大破横転したのである。また戦艦と間違えられ爆薬を付けられた装甲巡洋艦『バヤーン』も大破横転していたのである。

 このため、太平洋艦隊は初戦で半数が瞬く間に壊滅に等しい状態になってしまったのである。


「それで奴等はどうやって攻撃したのかも分からないのか?」

「現時点では……」


 潜水艦を使用しての攻撃だと分かったのは日露戦役後の話であった。その後、この攻撃でスタルク中将は更迭され後任にはステパン・マカロフ中将が着任するのである。

 2月9日、第四戦隊(『吉野』『高砂』『須磨』『明石』)と第八戦隊(『津軽』『神威』)は仁川沖で防護巡洋艦『ヴァリャーグ』と砲艦『コレーエツ』と衝突した。


「撃ェ!!」


 四戦隊と八戦隊は1220に砲撃を開始し『ヴァリャーグ』は瞬く間に多数の命中弾で炎上した。そのため圧倒的不利と悟った『コレーエツ』は直ぐ様湾内で爆破され自沈した。

 『ヴァリャーグ』も炎上しながら自沈するのである。


「……前回以上に予想外過ぎる程の戦果でごわす」


 聯合艦隊旗艦『三笠』の長官室で報告を聞いた東郷はそう呟いた。その筈である。何せ旅順口攻撃で戦艦三隻を爆沈させ更に一隻を大破横転、艦隊の戦力を半減以下にさせたのだ。


「だが……この最初の戦果でウラジオストク艦隊が出てくる可能性が激減する……そいだけは許されもはん」


 前回は二隻を戦線離脱させてもウラジオストク艦隊は出てきた。だが今回のこの戦果で奴等は出てくるか?


「何事も無ければそいで良かが……」


 だが東郷の懸念は半分当たり、半分外れたのである。










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