プロローグ
かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏……あの世でもよろしく頼むよ」
「……任されたわ貴方」
「暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
そう、将和は死んだ……筈だった。
「……明治……?」
そう、将和が目覚めるとそこは明治27年ーー1894年の日本だったのだ。
「どうしたの将和?」
「いや、何もないよ母さん(あれ……この感触は……)」
母親ーー三好ともの言葉に将和は首を横に振る。二人は今、とある屋敷を訪れていた。その屋敷こそかつて250年余りにも渡って日本という国家を維持運営してきた三好家の屋敷だった。だが、その屋敷はあまりにもお粗末であった。
二人は指示されるまま屋敷の中まで案内され通された部屋には一人の初老が座っていた。
「掛けなさい」
(やっぱりだ……じいちゃんじゃないか……という事はあの最初に会った時の……?)
将和がそう思う中、初老の言葉に二人が座ると初老は口を開く。
「二人にはあの馬鹿息子のせいで多大な迷惑をかけたのぅ……」
「いえ……」
「せめてもの罪滅ぼしで儂は君たち二人を探して漸く見つけた。老人の嘆きじゃ、儂らと暮らさぬか?」
「ですが和盛様……」
初老ーー三好和盛の言葉にともは迷う。それで果たして良いのか……。
(……うーん……この後の展開を考えるなら……)
将和は数十年前の記憶を探りながら頭をポリポリと描きつつもともに視線を向けて口を開いた。
「母さん、良いと思うよ」
「将和……」
「俺は親父がどんな奴だったかは知らないけど母さんが苦労していたのは知っているつもりだ。だからここいらで幸せになるべきじゃないかな」
「将和……」
将和の言葉にともは驚きつつも一瞬顔を伏せるが次に上げた時は覚悟を決めた表情だった。
「和盛様、真に勝手苦しいとは思いますが和盛様のご厚意。受け入れたいと思います」
「おぉ……おぉ……ありがとうともさん」
(こっからとなると……)
ともの言葉に和盛は涙を流しながら頭を下げるのであった。なお、その横では将和が脳内でこの後をどうするか悩んでいたりする。
「とまぁこんな経緯があったわけだな」
「……相変わらず凄いなお前……」
1900年、将和は海軍海兵学校に入学した際、記憶を持ったままの長谷川清とたまたま合流する事が出来た。そして今までの経緯を話していたのである。
「まぁ何せよお前と合流する事が出来たんだ。また派手にいこうや」
「クハハ。それもそうだな(だが清も三回目の記憶はなかったか……もしかしたら俺だけかもしれないな……)」
二人は互いに笑うのであった。
そして二人がとあるところに呼ばれてから歴史は動き出す。ゆっくり……ゆっくりと……。
「将和……久しいな」
「陛下、東郷閣下……お懐かしゅうございます……」
「おいおい三好君。ワシも忘れては困るよ」
「これは伊藤閣下、失礼をば……」
久しい再会。しかし、直ぐに来るは大陸からの侵略である。
「決議通りで良い」
「開戦劈頭に旅順港に突撃、停泊するロシヤ太平洋艦隊に至近距離での雷撃を敢行する!!」
「広瀬少佐!?」
「杉野ォ!? 杉野は何処だァ!?」
開戦劈頭、駆逐艦隊による夜襲は成功するも広瀬少佐という軍神を生み出してしまう。そして陸では第三軍は前回の戦訓を活かした。
「工兵隊の爆破をしてから突撃せよ」
「目標ォ!! 鉄条網爆破口まで躍進距離50!!」
「突撃ィィィィィィ!! 前へェェェェェェ!!」
第三軍は賭けに勝った。しかし、他の軍は賭けに負けたのである。
「秋山旅団長!! 突破されます!!」
「イカン!?」
「このままでは総崩れです!!」
「白兵戦、用意!!」
クロパトキンが解任された事でほぼ全面攻勢になった黒溝台会戦は日本側が支えきれずに崩壊した。黒溝台会戦で陸軍は兵力が枯渇した事により内地の予備兵力まで大陸に向かい、内地防衛にはついに女性まで徴兵され動員されるのである。
そして1905年5月27日、日本海軍聯合艦隊とロシヤバルチック艦隊は対馬沖で激突をする。
「とぉーりかぁーじ、一杯!!」
「神は我々を祝福した」
「『三笠』艦橋被弾!?」
「『三笠』が簡単に沈むか!!」
「三好参謀、おはんが指揮を取れ!!」
日本海軍は史実と同じく栄光の日を掴み取る事は出来た。そして人類……地球は血をまだ欲した。
1914年、二発の銃弾から欧州ーー世界は経験した事が無い世界大戦を経験する事になる。将和は今回もパイロットの道を選び欧州の空で撃墜の記録を増やすのである。そして将和は愛する人と再会をする。
「今回も……末長くよろしく頼む」
「末長く……任されたわ」
今回も何が起きるか分からない物語であった。
「『加賀』のマストにZ旗が掲げられます!!」
「長官……決めましたか……」
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