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なにぶんわがままなものでして(旧題:わがままでごめんあそばせ)★  作者: 茄子
芽吹くものと枯れていくもの

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ミリアのお茶会

「ねえ、聞きました? 例の噂」

「ええもちろん、シシリア様のことでございましょう?」


 貴婦人や令嬢を集めてのお茶会は今に始まったことではないけれど、今日はシシリアが欠席しているせいか、噂の中心がシシリアになってしまっているわね。


「少し早い気もしますが、確かにおかしくはありませんものねえ」

「ええ、むしろ婚姻期間から考えれば遅いぐらいでしょう?」

「婚姻期間って、ふふ、シシリア様の場合は例外ではありませんか」

「それにしても、本当にシシリア様は妊娠なさっているのかしら?」

「けれど、頻繁に医師がモストロム侯爵家に出入りをしているのでしょう? 季節の変わり目や暑さで使用人が体調を崩していると言っても、苦しいものがございましてよ」

「そうですわよね」


 そうよねえ、季節の変わり目も、この暑さも毎年の事だし、こうなるのは目に見えていたわよね。

 むしろよく今まで持った方だと思うわ。


「ねえ、ミリア様はご存じではありませんの?」

「もうしわけありません、シシリアからは聞いておりません」

「お二人の仲ではありませんか。ここだけの話にしますから、ね?」


 うそつけ、ここだけの話(大勢に言いふらします)でしょうが。

 そもそも、本当に私はシシリア本人から聞いたわけじゃないんだし、嘘は言ってないわよ。


「本当に聞いて無いんです」


 シシリアからは、ね。


「そんな、そこを何とか。誰にも言いませんから、ね?」

「私は聞いていないと言っているのですけど?」


 あっと、思わず声が低くなっちゃったわ。

 だめね、普段ならちゃんと対応できるのに今の時期はどうしても情緒不安定になりがちだわ。

 シシリアからもハツカネズミしてるなんてよく言われるし。

 だって仕方がないじゃない、大丈夫だって言ってくれても色々考えちゃうんだもの。


「申し訳ありません。そうですわよね、聞いていないのならしかたないですわよね」


 聞いてきた令嬢が気まずそうに席を移動したのを見て内心でため息を吐き出してしまう。

 こんな時シシリアならうまく流せたんでしょうねえ。

 鉄仮面はあの子の十八番だもの。

 まあ、それでもティアンカ様はあの子の逆鱗だか地雷を踏み抜くかしたみたいだけど、何をしたのかしら?

 知りたいような、知るのが怖いような……。

 サフィール様は「仕方がない」って言ってたから、よっぽどのことをしたのよね。

 でもまあ、サフィール様はシシリア信者だから大抵のことは「仕方がない」で済ませる気もするけど、今回はちょっとニュアンスが違かったから本当に何かしたんだろうなあ。


「ねえ、ミリア様」

「なんでしょうか?」

「最近食の好みが変わったんですか?」

「え?」

「以前はクリーム系のお菓子をよく召し上がっていらしたのに、本日というか最近は焼き菓子や冷菓子をよく召し上がっているから気になってしまって」

「そうですわねえ、暑くなってきてクリーム系を食べる気分じゃなくなってしまったのかもしれませんわね」

「ああ、なるほど。確かに暑いときにクリーム系はあまり食がすすまないときがありますものね」

「ええ」


 あっぶなー。

 この子よく見てるわね、気を付けなくっちゃ。

 でも食の変化に関しては今言われて初めて気が付いたけど、確かにそうね。

 でもシシリアほど顕著じゃないから大丈夫よね?

 あのこ、一時期サラダを食べるのにも苦労してたぐらいだし、メイドの子がアレを作らなかったら栄養不足で最悪な結果になってたかもしれないわよね。

 まあ、アレは私の店でそのうち商品化する予定なんだけどね。

 一応今は原価とか材料とか味とかを研究中ってところなのよね。

 流石にシシリアが飲んでたものそのものを出したら採算が取れないか高額なものになりすぎるもの。


「それにしても、本日はシシリア様が欠席で残念ですわね」

「そうですね、けれども暑気あたりをしてしまったというのなら仕方がありませんよね」

「そうですね」


 このこ、シシリアの事大好きだものねぇ。

 なんてほのぼの会話をしていると扉の方が騒がしくなっていることに気が付いて視線を向けると、僅かに空いた扉に向かってメイドが何かを言っているようだった。

 なにかしら? 急な来客なら私に取り次ぐはずだし。

 訝しんでみていると、扉が大きく開かれて、メイドが必死に止めるのが見え眉間にしわを寄せてしまう。

 止められているのは見間違いじゃなければティアンカ様だわ。


「まあ、なんですの、あれは」

「ティアンカ様ですわよね? 何をしていらっしゃるのかしら?」

「そういえば今日のお茶会にいらっしゃいませんでしたわよね?」


 そう言われて視線を向けられれば、扇子を開いて口元を隠して微笑みを浮かべる。


「なんでも、お勉強が忙しくてお茶会に割ける時間が無いとマレウス様より言われていますので、お誘いしておりませんでしたのよ」

「まあ、そうでしたの。ではどうしてこちらにいらしたのかしら?」

「お勉強が終わったとか?」

「それでしたらメイドに止められるのはおかしいのではありませんか?」


 まったく、面倒なことをしてくれるわね。

 マレウス様に言われたのをいいことにお茶会に誘わなかったのに、聞きつけて乗り込んできたに違いないわ。

 この間サフィール様とオベロン様の三人でお茶会をしていた時も乗り込んできて大騒ぎをしてくれたもの。

 メイドを呼び寄せてマレウス様を呼んでくるように伝える。

 ああなったティアンカ様はマレウス様じゃないと対処できないのよね。

 なんでもマレウス様が贔屓にしている薬師の飲ませるお茶に鎮静効果があるとかで、それがよく効くんだそうだけど、それを言った時のサフィール様の顔が怪しげだったのよねぇ。

 まあ、怪しい物には首を突っ込まないでおきましょう。

 特に今の時期はね。

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