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なにぶんわがままなものでして(旧題:わがままでごめんあそばせ)★  作者: 茄子
わたくしが愛されるのは当然ですわ
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食堂のレモンパイ

「オベロン様、一緒に昼食を食べましょう!」


 授業が終わり、これから食堂に移動して昼食を食べようかと話をしている最中、教室の扉からティアンカが顔を出してオベロン様を見つけるとすぐさま駆け寄ってそんな言葉をかけています。

 まあ、お接待役なので一緒に昼食を食べること自体は問題はないのですが、ティアンカの場合はその距離の近さが問題なのですよね。

 マレウス様は北の領地に視察に行かれてご不在ですし、今ティアンカを止めることが出来る者が少なくなっておりますわ。

 まあ、その視察も本来ならティアンカもついていくはずだったのですが、この寒い時期に北に行くなんて冗談じゃないなんて駄々をこねた挙句、行くぐらいならマレウス様との婚約を破棄するなんて言ったらしく、マレウス様は呆れた顔をしながらもお一人で視察に行かれました。

 婚約破棄を言い出すなんて、今までのティアンカには考えられない事でしたが、何か意識が変わるようなことでもあったのでしょうか。

 最近妙にオベロン様に構っていますが、まさかオベロン様の婚約者になろうと思っているわけではありませんわよね?

 オベロン様には祖国にちゃんと婚約者がいるとわかっていますわよね?

 はあ、なんだか不安ですわ。

 ティアンカの夢見がちな所の原因はわかりましたけれども、その妄想が悪化し過ぎて隣国との間に摩擦を起こしてしまう事になったら、わたくしの幸せの邪魔になってしまいますわね。

 そうならないことを祈っておりますけれども、隣国との友好な関係を続けるためには、わたくしの子供が隣国に嫁ぐのも一つの手かもしれませんわね。

 オベロン様はその事を拒否なさらないどころか手放しで喜ばれるでしょうね。

 わたくしを手に入れられないのなら、せめてその子供をと思うのは誰にでもある事ですもの。

 まあ、政略的なものもありますので、上っ面の綺麗ごとだけでは済まないのですけれどもね。


「ティアンカ様、申し訳ないのですが既にクラスメイトと一緒に昼食を食べる約束をしてしまっているのですよ」

「ええ、そんなものよりも私の方が優先度が高いですよね? というか、私が誘ってるんだからそんなものどうでもいいですよね」

「そうおっしゃられましても」

「もう! いいから行きましょう!」


 そう言ってティアンカはオベロン様の腕をつかむと教室の出入口に向かって歩き始めますが、それをクラスメイト達が立ちふさがって止めに入ります。


「ティアンカ様、オベロン様の意思を無視するような真似をなさるのがお接待役なのですか?」

「そうですわよ。しかも強引に腕をつかむなんて淑女のする事ではありませんわ」


 まったくもってその通りですわね。

 最近のティアンカの行動は流石に目に余るものがありますので、いい加減叔父様に進言すべきかもしれませんわ。

 まあ、今でもいても居なくても変わらないと言うか、下手にお接待役なんて仰せつかっているから面倒が起きているという感じなのですけれどもね。

 けれども、そうなりますと自然とわたくし共の仕事が増えてしまうわけで、そこが悩み所なのですよね。


「ティアンカ」

「な、なんですか。お姉様」

「先にした約束を無理に変更させることがお接待役の仕事だと思っているのですか?」

「だって、私が優先されるのは当たり前じゃないですか」

「そんなわけないでしょう。オベロン様にはオベロン様の都合があります。お前の都合で振り回して良い方ではないのですよ」

「私は別に振り回してなんかいません!」

「だったらその手を離して、貴女は勝手に食堂に行って昼食を取りなさい。仲のいいお友達が教室の入口で待っているではありませんか」


 正確には、マレウス様のよくないお友達ですけれどもね。


「お姉様はどうするつもりなんですか?」

「わたくしはいつも通りに友人と昼食を頂きますが、それがなにか?」

「……わかりました。オベロン様、明日は絶対に私と一緒に昼食を食べてくださいね!」


 そう言ってオベロン様から手を離して立ち去って行くティアンカの後姿を見送って小さくため息を吐き出してしまいます。

 本当に困った子ですわね。

 これでお接待役を外したらどういう行動に出るのでしょうか?

 オベロン様の傍による口実が無くなってしまうわけですが、変わらずにべったりとしそうですわよね。

 マレウス様の補佐をするとか、婚約者なのだから当たり前だとか言って。

 マレウス様からオベロン様に近づかないように言ってくださればいいのですが、言った所で効果があるかは不明ですし、下手に刺激をしてまた暴れられても困ってしまいますわよね。

 それにしても、流石に寒くなってきたせいか中庭で昼食を食べようと言わなくなっただけましになったと言えるのかもしれませんわね。

 中庭の地べたに座って食事をするなど、淑女としてどうかと思いますもの。

 まあ、最近は敷物を敷いていたようですけれどもね。

 ああ、そういえば、今日のデザートにはレモンパイがあると昨日聞いたような気がしますわ。

 この学園の食堂で提供されるレモンパイは美味しいので本日のデザートはそれに致しましょう。

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