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第5話 チョコ選び

告白宣言から数日後。

カナちゃんと待ち合わせをして、チョコを選びに行く日。


お母さんにはまだ合格したわけじゃないのにって顔をしかめられたけど、ムリヤリ家を出て来た。


お気に入りの水玉のニットワンピース。

真っ白なフェイクファーのボレロ。

編み上げのブーツを履いてお出掛け。

可愛い洋服を着るだけで、わくわくする。


街はバレンタイン一色。

どのショーウィンドウを見ても、所狭しと赤とピンクのハートが散らばっている。


風船や花でつくったハート。

キラキラ、イルミネーションになっているハート。

どれもすっごく綺麗!


カナちゃんを待っている間、わたしはキョロキョロしぱなっしだった。


「希美ー!ごめんねっ!お待たせ!」

息を切らしてはぁはぁ言ってる。

「全然待ってないよ。可愛い風船とか見てたら楽しくって」

「よかったぁーこれが麗ちゃんだったら怒られるとこだよー」

「あははっ」

「どこ見に行く?」

「カナちゃんに任せる」

「じゃあ、この下にいっぱいチョコ売ってるから見に行こっ」

「うんっ」

わたしたちが向かったのはデパ地下。

高級感がある店内に、整然とたくさんのお店が立ち並んでいる。


バレンタインまで1週間を切った店内は人でごったがえしていた。


「うわぁ…思った以上に混んでるね…」

「うん…」

2人とも店内の雰囲気に圧倒される。

バレンタイン商戦ってテレビでしかみたことないけど、すごい熱気。


「一周ぐるっとまわって、それぞれ気に入ったチョコがある店に走って、ここで待ち合わせにしようか」

「うん。わかった」


でも…人だかりが凄くてなかなかチョコを見れない。

歩いている途中に販売員のお姉さんに生チョコを勧められる。


「おいしいでしょー?生チョコは甘さは控えめで甘いものが苦手な彼でも食べやすいですよ」

販売員さんに渡されたチョコをカナちゃんがパクッと食べる。


「あっ、ほんとだ。甘くない」

カナちゃんの反応に

「そうでしょー?ラム酒を使っているので上品な味で、今年のパッケージは可愛いハート型なんです」

ニコニコと微笑む。


「じゃあ、これ下さい」

えっ!

カナちゃんったら!

即決!?


「ありがとうござますっ」

嬉しそうな販売員さん。


まだ半分もまわってないのに…

「希美ーお金払ってくるから他のところ見て来てー」

「う…うん」

「さっきのとこで待ち合わせね」


そういい残して、人ごみを掻き分けて行ってしまう。


えー!

カナちゃんっ!

ぽつんっと置いてきぼりになったわたし…

どうしよう…

こんな人ごみの中選べるかな…

不安になりながらも、トコトコとチョコを見てまわる。


ど…どれがいいんだろ…

わたしスーパーでしかバレンタインチョコ買ったことない…


販売員さんに近づくと断りきれなさそうでなかなか近寄れない。

カナちゃぁん…


涙目でキョロキョロしているとガラスのケースの端に置いてるまあるい箱に目がついた。


ボール…?

恐る恐る近づいて中身を見る。

真っ赤な球状の箱が、真ん中で割れていて、チョコが5個入っていた。


可愛い…


わたしは部活の後、一人で練習している柴田君の姿を思い出していた。

暗くなっても一人でボールを蹴っていたあの春の日。

真っ赤な情熱と大好きなボールと同じ形…


「あ…あのっ!これ下さいっ」

柴田君を好きになったあの時の映像が鮮明に流れて、気づいたらわたしはちこのチョコを買っていた。


しばらくしたのち…

待ち合わせ場所でカナちゃんと会った。


「よかったぁー甘くないチョコ買えて。彼氏、甘いの苦手なんだー」

満足した面持ちで帰りの電車に乗る。


「わたしも可愛いチョコ買えてよかった」

ぎゅっと紙袋を握り締める。

嬉しい…

柴田君、喜んでくれるかな…


「でもさー希美が柴田に告白するって言ったときはビックリしたよー」

「えー?」

「だって、今まで柴田に話しかけたりすら出来なかったでしょ?」

「うん…」

「麗ちゃんが心配してた気持ちわかるもん」

「うん…」


カナちゃんがわたしの顔を覗き込む。

「でもどうして告白、決心したの?わたしが最後だって言ったから?」

不思議そうな顔をする。


「んー」

「なによー教えてよ」

ひじでとんとんっと突くカナちゃん。


わたしはぐっと足を伸ばして

「進路の話した帰りにね、わたし、すっごくへこんでて…」

「どうして?」

「カナちゃんも麗ちゃんもちやんと将来考えてて…でもわたしは、どうして大学に行くのかなって…」

「そうだったんだ」

「でもね、帰りに一生懸命サッカーしてる柴田君を見て、

うまく言えないけど、元気もらった。だから好きになって、今度はわたしが柴田君がつらい時とか疲れたときにそばにいたいって思ったの」


「そっかぁ」

「でもカナちゃんの後押しがなかったら、チョコすら買いに行けなかったかも」

「あははっ」

「カナちやん、ありがと」

「うん…がんばって言えるといいね」

「うん…」


小さく頷いて、ピンク色のリポンでくくられたまあるい箱を見つめる。


チョコ…渡せるかな…


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