絶対イケメンじゃん
未定だった連日投稿が決定になりましたことをここにお伝えいたします。。。
廊下で。
「なぁあれ聞いたか!?」
「噂の御子柴智夏が『春彦』だったって話だろ!!」
「『春彦』?誰それ?」
「『ツキクラ』のあのBGM作ってたヤツだよ!」
「なっ!?マジかよ、あいつそんなに凄いやつだったの!?」
教室で。
「『春彦』とクラスメイトだなんて信じられん!」
「そういえば前に御子柴君がピアノ弾いたときめっちゃうまかったよね」
「プロならそりゃうまいはずだわ」
「俺有名人と同クラって自慢しよ」
「一緒に写真撮ってくれないかなぁ?」
学校中で、突然知らされた『春彦』の正体で話題が持ちきりだった。
「そりゃあの天才の『春彦』だもん。告白したくもなるわ」
「私まえに御子柴君に落としたハンカチ拾ってもらったんだ~」
「えー!いいなぁ。御子柴君て優しいんだね」
「この前クラス全員分のノート運んでたら半分持ってもらったよ!」
「優しい才能マンとか最高かよ」
皆が皆、一人を傷つけるような真似がしたいわけではなかったのだ。ただ、大きな流れに逆らえなかっただけで。しかし、カンナの言葉に心揺さぶられたのだ。ただ見ているだけの自分たちも、相手を傷つけているのだと気付いた。
「この前の学校祭の『ヒストグラム』の演奏!あれ御子柴もやってたよな!」
「そうそう!キーボードやってたよね、超かっこよかった!」
「御子柴ってどんな顔してるんだろうな?」
「声低くてカッコいいし、顔も絶対カッコいいよ!」
「御子柴君足長いよね」
「眼鏡でわかりづらいけど鼻高いし」
「肌の色白いし、肌キレイだし」
秘密を一つ曝け出したことで、身近にいる者たち、特にクラスメイト達には隠せなくなっていた。智夏が桜宮高校で積み上げてきた二年間が、クラスメイト達に告げる。
「御子柴君は天才と話題のサウンドクリエイターで」
「優しくて」
「足長くて」
「お肌キレイで」
「「「絶対イケメンじゃん」」」
あの長い前髪とだっさい眼鏡の下には、輝かんばかりのイケメンが眠っているのではないか!?とクラスメイト(主に女子)が沸き立つ。
3限後の休み時間、一致団結した女子と面白がった男子により周囲を包囲された智夏。
「え、え?なになになにー!?井村も鈴木も何してんの!?」
井村が右腕、鈴木が左腕をがっちりと掴み、俺の動きを封じてきた。
「両腕に花だぞ良かったな」
「俺はともかく鈴木は花というか花にたかる虫だろ」
「はぁ?俺が虫なら井村はゴリラだな。この筋肉質め」
井村は鈴木を完ぺキ貶しているが、鈴木はどっちなんだ?褒めてるのか?貶してるのか?ってそれどころじゃない!
「で、虫とゴリラはなんで俺の腕をがっちりホールドしてるわけ?」
「「それは女子に聞いてください」」
「御子柴君安心して~大丈夫、痛くないよ~」
俺はこの2年間の高校生活で学んだのだ。女子の「大丈夫」を信用してはならないと。
「・・・離せ!井村、鈴木頼む離してくれ!」
「御子柴ごめんな」
「骨は拾ってやるからな」
こいつら他人事だと思って!脱出口はないかと視線を巡らせると、目の端にちらっと映った人物に助けを求める。
「田中!エマージェンシー!助けて!」
「あ?・・・あーがんば!」
きゅるるんっと効果音が付きそうな笑顔でエールを送ってくる田中。親友を見捨てやがってー!田中こんにゃろう!
「さぁ御子柴君、観念してね?」
「あの、ちょ、あー!」
同じクラスにイケメンがいるかもしれないのに、じっとしてなんかいられないじゃない。だって、うちの高校三大美女、なんて化け物クラスの美女はいるのに男子はからっきしなんだもん。ちょっと面が良い男子は入学前から彼女いたし。まぁその方が燃えるやら、むしろ男子同士の方が萌えるとか言う子もいるけど。
私だって女の子だもん。高校生になったら同じクラスの子と恋をして青春するんだー!とか思ってたよ?でも、うちのクラス進学コースだからかなり勉強難しいし。ガリ勉とか根暗とか変人とか陰キャとか非常識人とかしかいなかったし。だから半ば諦めていたのだ。自分に青い春は来ないのだと。でも、さっきただのピアノがうまい陰キャだと思っていた御子柴君が、あの謎の天才サウンドクリエイターの『春彦』だって知って!御子柴君のこと知れば知るほどイケメン疑惑高まって!
「3限目終わったら、御子柴君のお顔を暴こう」
「「「賛成」」」
女子の多数が私の意見に賛成し、周りに集まってきた。しかし、女子だけで囲んだら御子柴君のバックにいる三大美女が何を言うかわからない。同じクラスの三大美女の一人である香織ちゃんは笑ってごまかすだけで話には乗ってこない。しょうがない、男子の戦力を投入しますか。
「鈴木、井村、あんたら御子柴君と修学旅行の部屋同じだったよね?御子柴君の素顔、見たことある?」
「いきなりなんだよ笹倉?」
「知らないならちょっと力貸してよ」
「「えー」」
「みんなー!」
パンパンと手を叩くと複数の女子たちが井村と鈴木を取り囲む。男子2人の顔が強張るのがわかったが気にしな~い気にしな~い
「協力、してくれるよねー?」
「「「ねー?」」」
私、笹倉アゲハは入学当初はクラスカーストの位置は中の上だった。しかし、御子柴君が当時カースト上位だったグループの中心人物である村上をピアノでぎゃふんさせたことにより、カースト上位に私のグループが躍り出たのだ。おかげで私はカーストトップになったわけ。この頃から御子柴君とは浅からぬ縁がある。
ということで3限後の休み時間。女子と興味本位で集まった男子により囲まれた御子柴君のご尊顔をとうとう見るぞ、おー!
だっさい眼鏡を外すと、スッと高い鼻が見えた。それに肌がとってもきれい。これは期待大!あらかじめ用意しておいたクリップで一気に御子柴君の前髪をかき上げて留める。
「青い目・・・」
冬の空のように冴えわたるような青い瞳。御子柴君の顔を見た周りの人たちが感嘆のため息をもらすのがわかった。
「「「・・・」」」
息を呑むような美しさとはこのことだろうか。なんだろうかこの気持ち・・・そう、見てはいけないものを見てしまったかのような。
クリップを外して御子柴君の前髪を戻し、取り上げていた眼鏡も定位置に戻す。
「うん。こっちの方が心臓にいいかな!あはは!」
「そうだね!毎朝あのご尊顔は心臓がもたない!」
「あはは!あはは!」
ばっくんばっくんと心臓が鳴りやまない。これは、これは開けてはいけないパンドラの箱だぁっ!
この後、桜宮高校2年A組では「パンドラの箱は開けない、触れない、開けさせない」がモットーになったのであった・・・
クラスメイト達がそそくさと席に戻る中。
「なんでそっと戻したんだ・・・?そんなにダメな顔だったのか?」
思考が明後日の方向に飛ぶ智夏なのであった。
決戦の正午まで、あと少し。
~執筆中BGM紹介~
約束のネバーランドより「Touch off」歌手・作曲:UVERworld様 作詞:TAKUYA∞様
明日投稿するかどうかはお察しの通り未定でございます。えぇ。