とある男子生徒
ブクマ登録、評価、感想、おススメの曲、ありがとうございます!!
「三大美女の一人、愛羽カンナが失恋したらしい」
「まじで!?愛羽さんからの告白を断るなんてどんな野郎だよ」
「この学校の生徒らしいよ」
「誰なんだよ!」
「さぁ~?そこまでは知らね」
「カンナ様が振られたって!」
「振られたってことはカンナ様の方から告白したってこと!?」
「カンナ様が惚れる男って一体どんな人なのかなぁ?」
「絶対イケメンだよ~!!」
「いや、その反対かもよ?」
「振ったヤツまじ信じらんねぇ!」
「誰か気になるよな!」
「探してみようぜ!!」
11月中旬。桜宮高校に一つのビッグニュースが駆け巡る。それは桜宮高校が誇る三大美女の一人であり、人気声優の愛羽カンナがとある男子生徒に振られたというニュースであった。三大美女が振られたという事実、その美女を振った人物が身近にいるという衝撃が話題性を呼び、あっという間に学校中に広まったのだった。
「鈴木、ちょっと来てくれるか?」
昼休み。いつもどおり井村と昼食を摂ろうとしていた鈴木に声をかける。
「え、もしかして告白か?ごめん、俺むさい男よりも可愛い女の子が好きだから、」
「違う!」
鈴木の訳の分からない勘違いを即座に否定する。なんで俺が鈴木に振られたみたいになってんだ。
「えー面白そうだからついてっていい?」
鈴木の友人の井村が興味津々な顔をして聞いてくる。
「えっと鈴木を呼んでるのは俺じゃなくて・・・『やんごとなきお方』だから、その人にお伺いを立ててみないとなんとも・・・」
「「『やんごとなきお方』・・・?」」
パワーワードに息を飲む二人。チャットを送ってみると、すぐに「許可する」と来たので、二人にこのことを伝える。
「許可も頂いたことだし、行こうぜ鈴木」
「わくわくしてんなよ~俺はこれから処刑台に行く気分なんだけど」
『やんごとなきお方』からの直々のご使命と聞いて、鈴木は今にも死にそうな顔だ。どこに向かうかも、誰に呼ばれているのかも教室では言えないので、見ていて可哀そうになってきた鈴木にフォローを入れる。
「話を聞くだけだから・・・多分」
「多分!?余計怖ぇーよ!」
フォローのつもりだったが恐怖を煽るはめになってしまったらしい。ごめん。心の中で謝罪をしながら人目に付かない道を進み、ときには遠回りをし、辿り着いたのは屋上である。扉を開けた瞬間、冬の到来を感じさせるような、一瞬ブルっと震えるような冷たい風が頬を撫でる。
しかし、冬の風なんてまだ暖かいと感じるほどのブリザードが俺たち3人に降りかかる。
「寒い中、呼び出してごめんなさいね」
うふふとお上品に微笑みながら『やんごとなきお方』が謝罪するが、目が笑っていない。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど?す・ず・き?」
「ひょぇぇぇえええ」
ブリザードを振りまく『やんごとなきお方』こと愛羽カンナが鈴木と距離を詰めながら尋問・・・質問に入る。
脅威が振りかからないように、田中や香織がいる少し離れた所まで井村と共に移動する。鈴木から「裏切り者!」とでも言いたげな視線が送られるが、俺は元からこちら側である。
「カンナ様と鈴木って仲良かったんだな」
カンナが鈴木を呼び捨てで読んでいるのを聞いて、意外そうに井村が呟く。確かにカンナは本当に親しい人しか呼び捨てにしないので、鈴木とは仲が良いのだろう。修学旅行の時はそうでもなかった気がするが、いつ仲良くなったんだろ・・・?友人の意外な交友関係に驚いていると、カンナが鈴木を壁際に追い込み、顔の横にスッと手を伸ばす。
「「「「壁ドンだ」」」」
俺たちオーディエンスはリアル壁ドンに驚嘆するが、当事者の鈴木は顔を真っ青にして震えている。
「あの噂、流しているのはあなた?」
「へっ?噂?・・・あぁ!あの噂か!って違う違う俺じゃない!!」
「そう」
カンナは一言そう言うと、振りまいていたブリザードを霧散させる。すぐに疑いが晴れたことに拍子抜けした様子の鈴木と怖いくらいに無表情なカンナの下に向かう。
「何よその顔」
カンナが鈴木の呆けた顔に気付いて器用に片眉だけ上げて視線を投げる。
「あ、いや、あっさり信じてくれるんだな、と思って」
「まぁ最初から疑ってないわよ」
「じゃあなんで壁ドンされたんだよ俺」
「・・・ごめんなさい、八つ当たりしたわ」
「いいよ、気持ちもわかるしな」
本当にカンナと鈴木は仲が良いんだな。会話から互いの信頼関係を窺える。
「俺だけ置いてけぼり・・・」
井村が訳が分からない、といった様子で零していたので昼食がてら説明することにする。突然カンナが振られたらしい、という噂が学校中に広まったこと。その相手が同じ学校の生徒らしいということ。その相手探しに生徒たちが躍起になっていること。
「この流れでいくと、カンナ様が告白した相手って・・・」
と言って俺に視線を向ける井村。
「正解よ」
「やっぱりか」
「私ってそんなにわかりやすかったかしら?」
「まぁー、修学旅行の時に部屋で遊んだメンバーは全員察してるだろうな。御子柴以外」
「俺以外」
本当に鈍かったんだな・・・
「鈴木が噂の出どころじゃないとすると、いったい誰が・・・?」
告白されたのは放課後の空き教室。見える範囲に人はいなかったが、廊下に人がいたとしたら、聞かれていた可能性もある。
「確かに、廊下で立ち聞ぎされた可能性もあるわね。でも中庭で聞かれた可能性も・・・」
「中庭?」
香織が不思議そうにカンナに聞いている。
「振られてそのまま中庭に行って遭遇した鈴木に全部喋っちゃったのよ」
「遭遇て、俺は野生動物か」
「木から降ってきたんだから動物と一緒でしょ」
「あれは木の上で寝てたんだよ」
「どこの少女漫画のヒーローよ」
鈴木とカンナが話すと話が脱線していくので田中が軌道修正に入る。
「要するに、中庭で聞かれた可能性もあるってことだな」
「そう、」
「いや、それはない」
カンナが肯定しかけたところに鈴木が否定を被せる。
「あのとき木の上から見たときにいたのは俺とカンナさんの二人だけだった。その後も周りを見てたけど誰もいなかった」
「あのときやけにきょろきょろしてると思ったら」
「聞かれたらまずい内容だと思ってな」
「「「へぇ~?」」」
香織と田中と井村が異口同音にニヤニヤしながらカンナと鈴木を見ている。え、どうしよう。なんか流れに乗り遅れてしまった。今から言っとくか?
「へぇ~」
「鈍ちんは黙ってろい」
おぅふ。
~執筆中BGM紹介~
ダンベル何キロ持てる?より「おねがいマッスル」歌手:紗倉ひびき(ファイルーズあい)様&街雄鳴造(石川界人)様 作詞:サイドチェスト烏屋様 作曲:サイドチェスト烏屋様/シックスパック篠崎様
Y様とN様からのおススメ曲でした!前回のBGMにすればよかった・・・!けどいつ聞いてもテンション上がるぅ!