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女子力=戦闘力

突然の糖度。糖度?




右の鼓膜が破れ、耳鳴りが止まない状態の中での作曲活動。自分で思っていた以上に困難なものだった。


そんな状況の中で見つけた一筋の光は『鳴海彩歌』の名前だった。10月から放送中のアニメ『最後の恋を、君と。』のヒロインのライバル役の声優であった鳴海さんに協力を仰ぎ、こうしてドリボ(ここ)に忙しいなか足を運んでもらったのだ。


「今作っている曲は、ライバルの子が登場する時の曲なんですけど」

「ふむふむ」


真剣な顔をしながら、ふむふむって可愛いなちきしょー。


「この状態で何曲か作ってみて、気づいたんです」

「何にっスか?」

「鳴海さんの声と合わない、と」


キャラクターのテーマソングのような、今回のような特定のキャラにしか使わない曲は、そのキャラの性格や雰囲気に合わせるのはもちろんだが、声にも合うように作っているのだ。


ライバルの登場シーン、つまりライバルのテーマソングともいえる曲である。いつものようにキャラの個性、性格、雰囲気、世界観を自分なりに噛み砕いて作っていたのだが、ライバルの声に、つまり鳴海さんの声に合っていないと感じるのだ。


普段ならその声優さんの声を録ったものや、他のアニメで聞いて参考にしたり、オーディションのときの映像などを参考にしていたのだが。鼓膜が破れた状態で電子機器越しに音を聞くと違和感があってイメージしづらいのだ。


「なので、ライバルの子の声を、直接聞かせていただけないでしょうか!」

「いいっスよ」

「商売道具をこんなところで要求するのはよくないとわかってはいるんです!・・・ん?」


あれ?なんかあっさり許可がおりた気がする。まじまじと鳴海さんを見ていると、ふふっと俺の呆けた顔を見て笑い、もう一度言い直す。


「だから、いいっスよって」

「あなたが神か」

「実は、私は神なのです」


すんっと真剣な表情になり衝撃のカミングアウトをする鳴海さん。


「お~神よ~」

「うむ、苦しゅうない」


ははぁ~と鳴海・GOD・彩歌を崇め奉る。


「憐れな子羊にどうかお慈悲を~」

「うむうむ」

「お~神よ~女神よ~」

「う、、むぅ。もう、やめ」


徐々に顔が赤くなっていく鳴海さんに気付きながらも崇め奉り続ける。


「神よ~女神よ~」

「もう!や・め・るっス!」

「もごっ」


なおも続けて言おうとしたときに、鳴海さんの両手が俺の口を塞ぐ。


「ふみまふぇん」


すみません、と手で塞がれながらもごもごと話す。俺の口を塞いでいた両手がそのまま頬をつまんで軽く引っ張られた。


「ぷふっ変な顔っス」


みょいーんみょいーんと鳴海さんが俺の頬を伸ばしているが、からかいすぎた自覚はあるのでされるがままになる。


10みょーんくらいされた後に、楽しそうな顔をしながら頬をいじる鳴海さんの手を上からそっと包み込む。


「男にこんな風に触れたらいけませんよ、鳴海さん」

「なっ」


驚いて後ろに下がろうとした鳴海さんの手を軽く引いてさらに距離を詰める。


「誰にでも、こんな距離感なんですか?」

「そ、んなこと」

「鳴海さんは、自分が綺麗な女性だってこと、もっと自覚した方がいいです」

「わ、わかった!わかったっスから!近いっスーーー!!」


耳の先まで真っ赤に染まった鳴海さんの叫びではっとする。


あ、れ?なんでこんなに距離が近いんだ?


「~っ!すみませんっ!」


急いで鳴海さんの手を離して距離を取る。手を離したときに鳴海さんが一瞬寂しそうな表情をしたのは気のせいだろうか。


というか、俺はいま、なにを・・・!心臓が全力疾走している。自分の行動が信じられない。


「と、とりあえず、仕事するっス・・・」

「はい・・・」


わざわざ来てくれた鳴海さんに俺は一体、なにを。いや、今は仕事しなきゃな・・・






「『あたしの名前は四月一日(わたぬき)愛美(あみ)風馬(ふうま)の婚約者よ!!』」


やっぱりすごい人なんだな、鳴海さんは。何度も何度も他のアニメで、『月を喰らう』で声を聞いてきたが、どれも違うのだ。キャラの一人一人が鳴海さんの中に息づいているような、こういう人をカメレオン声優というのだろうか。この域に至るまでに相当努力したのだろう。


こんなに真摯にアニメと向き合う彼女と共に仕事をするのだ。半端は許されない。


「~~♪」


違う。これじゃない。もっと、もっと、


「~~♪♪」


これ、だ。


「!」


確かな手ごたえを感じた。それは、鳴海さんも同じだったようで、目をまん丸にして驚いている。


「強そうっスね」


ライバルの四月一日愛美は女子力が非常に高い女子である。つまり、強いのだ。


「女子力=戦闘力ですから、ね」


互いにニヤリと笑って曲の仕上がりに満足するのだった。




別れ際、鳴海さんにずっと言おうと思っていたことを話す。


「12月1日、俺に時間をくれませんか?鳴海さん」

「その日って・・・うん、わかったっス」


鳴海さんは何も聞かず、全てを察したように返事をした。







その後、満開アニメーションの加賀さんに曲を送ると、


「強そう!」


とマッチョの絵文字付きで送られてきた。いや、マッチョじゃないけどね。



数年後にプロレスラーの入場曲に使われるようになるのは、また別のお話。




だから、マッチョじゃないって・・・!




~執筆中BGM紹介~

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンより「天鏡のアルデラミン」歌手:岸田教団&THE明星ロケッツ様 作詞・作曲:岸田様


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― 新着の感想 ―
[一言] 岸田教団は良いぞ! 「Colorful」オススメです!!
[良い点] Saika is GOD ヒロインレースはさいかちゃん大勝利? [一言] コレはアレ?「お願いマッスル」オススメしろと? バンドリとかの楽曲聴いてるとちゃんとキャラが歌ってるという…
[一言] くっ、普通にストロベリーな空間を創っているだけだから通報出来ないっ! 今回は通報出来ずか・・・では通報の代わりに一言。 リア充爆発しろっ!
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