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肩車

ブクマ登録、評価、誤字報告、感想、おススメの曲ありがとうございます!感想が100件を突破しました!ありがとう!ありがとう!特にいつもお世話になってるY様とT様とL様ありがとう~!




「本当に、申し訳ございませんでした。きちんと罪を償って、人生やり直します」


深々と頭を下げた男は、こう言い残して近くの交番に自首しに行ったのだった。





公園が夕日に照らされて、遊んでいた子供たちはそれぞれ家路についていく。砂場にめり込んでいた小鳥遊さんも冬瑚と津麦ちゃんのお許しが出たので家に帰った。


「夏兄、今日お仕事の日だったんでしょ?ごめんね、冬瑚のせいで」


しゅん、としょぼくれた様子の冬瑚が謝罪の言葉を口にする。俺は謝ってほしくてドリボをすっぽかして冬瑚を探していたわけじゃない。下を向く冬瑚を抱き上げて、いわゆるたかいたかーいをする。


「わわっ」


いきなりの行動に驚いている驚いている冬瑚をそのまま肩に乗せて、肩車をする。たかいたかーいも肩車も、幼いころに憧れていたものだった。兄が亡くなる前の両親は、そういう家族的なことをしない人たちだったので、自分には無理だと諦めていた。


「俺、冬瑚ぐらいのときに肩車に憧れてたんだよ。冬瑚は誰かに肩車してもらったことあるか?」

「ないよ?」


突飛な話題転換と行動に戸惑いながらも俺の質問に答える冬瑚。隣では津麦ちゃんが冬瑚を羨ましがって肩車をせがんでいる。


「そっか、俺もない。俺はさ、俺自身がしてほしかったことを冬瑚にやってるんだと思う。冬瑚を通して昔の自分を慰めているのかもしれない。兄として、そして父の代わりとして」


兄にしてほしかったこと、父にしてほしかったこと。それらすべてを冬瑚を通してかなえているのかもしれない。


「えっと、つまり何が言いたいかといいますと、家族だから心配させてください」

「っ!」

「いや、違うかな?迷惑かけたっていいよ、みたいな?」


やばい、自分でも何が言いたいのかわからなくなってきた。


「しばちゃん、そこはビシッと決めるところだろ」


呆れた表情でツッコミを入れる田中。その肩にはこっくりこっくりと舟を漕ぐ津麦ちゃんが乗っていた。


ビシッと決めろと言われてもな。そういうのは得意じゃないし。


「お仕事はもちろん大事だけど、俺は家族の方が大事だから。仕事と家族どっち取る?って聞かれたら俺は迷わず家族を取るよ」

「・・・前の家ではね、心配してもらえなかった。迷惑かけると怒られたの。「手間とらせるな」って」


人が生きていくうえで、迷惑をかけるなんて当たり前。心配するのもされるのも当然のこと。俺も最近知ったことだが。


「でも、さっき夏兄「心配させて」って「迷惑かけたっていいよ」って言ってくれた」

「うん」


震える声で冬瑚が言葉を紡ぐ。肩車をしているのでその表情は見えないが、きっと涙をこぼさないように歯を食いしばっているのだろう。


「しっ、心配、してくれて、ありがとうっ」


堪えきれなくなった涙が雨のように頭に降ってくる。


「冬瑚の家族にっ、なってくれて、ありがとうっ」

「こちらこそ、俺の家族になってくれてありがとう」


止まない雨はない。雨はいつか虹となり、やがて太陽が顔出す。





「夏兄、なに帰ろうとしてるの?病院行くの!」

「・・・あ」

「忘れてたでしょ!もう!降りるから地面に下ろして!」

「やーだー」

「夏兄!」


この後冬瑚に怒られながら病院に行き、全治2週間と言われた。家に帰って香苗ちゃんと秋人にしこたま注意された。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おーい津麦!肩車しながら寝ると危ないぞ!おーりーろー」

「いにゃ~だ~」

「あ!おい!手で目隠しすんな!足で首絞めんな!・・・うぐっ」

「むにゃむにゃ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「えぇ!?右の鼓膜が破れたーー!?」


翌日のドリボにて、鼓膜が破れたことを告げるとかなり驚かれ、そして心配された。


「聴力は大丈夫かい?」

「キーンと耳鳴りがしますね」

「それってかなりまずいんじゃ・・・」


俺と犬さんの会話を聞いていた瀬川さんが零すように言った。


「お医者さんが言うには全治2週間ほどらしいんですけど。たしかここ2週間は仕事の予定入ってませんでしたよね?」


満開アニメーションで制作中のアニメ『最後の恋を、君と。』で使う曲はだいたい作り終えたので、心おきなく療養できる、と思っていたのだが。フラグを建ててしまただろうか?


気まずそうに瀬川さんが口を開く。


「いや、えっと、さっき満開アニメーションから連絡が来て」


おや?


「急ぎで曲を作ってほしい、と」


おやおや?


「これはもしかしてかなりまずい状況なのでは?」

「もしかしなくてもまずいねぇ」


ま、まぁ、片耳は聞こえるわけだし。頑張ればなんとかなるなる。




なるな、る・・・な・・・らないかも。


いざピアノに向き合ってみると、耳鳴りがひどく邪魔になり、作曲に集中できない。それに、普段聞いている音とどうにも違う気がするので、このまま作っていいものかどうかがわからない。


ぶわぁっと冷や汗が噴き出してきた。どうする?どうすれば乗り切れる?


今回依頼された曲はヒロインのライバルが登場する時のBGM。ライバルのテーマソングといってもいい。満開アニメーションから送られてきた曲の概要をもう一度さらっていると、キャストの名前にふと目が行く。そこには『鳴海彩歌(なるみさいか)』の名前があった。


その名前を見つけた瞬間に、視界が一気にクリアになり、呼吸が楽になる。この状況を乗り切るには、彼女の力が必要だ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




翌日。鳴海さんをドリボに招き、二人で向かい合っていた。


「つまり、私が智夏クンの耳になる、ということっスね?」

「はい。よろしくお願いします」

「了解!お姉さんにどんとお任せっス!」


た、頼もしい・・・!




~執筆中BGM紹介~

歴史秘話ヒストリアより「storia」歌手:Kalafina様 作詞・作曲:梶浦由記様

読者様からのおススメの曲でした!

kalafina様と梶浦由記様のタッグは神!どっちも神!

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― 新着の感想 ―
[一言] なっ、自首するだとぉ!これは私に通報させない為の陰謀に違いない! 幼女を肩車して太股の感触を楽しむ男子高校生。これは通報しても問題ない案件ですね。流石は夏君。期待にそぐわぬ行動をしてくれる…
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