表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/467

番外編 電話

51話の後から智夏と冬瑚の間で行われていた電話のやり取りです。


冬瑚視点でお届けします。




どきどきしながら電話帳に新しく入った連絡先をタップする。えいや!って電話かけちゃったけど、最初に何を言えばいいのかな?あ、出た!えっとえっと、まずは挨拶だよね!


「夏お兄さん!こんばんは!」

『こんばんは、冬瑚ちゃん』

「冬瑚ね、夏お兄さんに聞いてほしいことがいっぱいあってね」

『うん、ゆっくりでいいよ』


夏お兄さんの声はとっても優しい。聞いているだけで心がぽかぽかするのはなんでかなぁ?


「あのね!今日学校でね、体育の授業があったの。それで、50メートル走がクラスで1位だったんだよ!」


言ってから気づいてしまった。お母さんやお父さんにこういう話をしたら、「そんなもの何の役にも立たない。歌の練習をしろ」とつまらなさそうな顔をして言われたのを思い出す。こんなつまらない話したら、夏お兄さんに嫌われちゃう。どうしよう。


『冬瑚はすごいなぁ。クラスで1番か~。走るのが好きなのかな?』

「!」


すごいすごいと褒めてくれる夏お兄さん。いいのかな?こんな話でいいのかな?


「・・・夏お兄さんは、冬瑚にお歌の練習をしろって言わないの?」

『言わないよ。俺は冬瑚ちゃんがしたいことを心のままにしてほしいと思ってる。だから、あれをしろとか、これはするなとかは絶対に言わないよ』

「そっかぁ・・・」


知らないうちに足をパタパタと動かし、体も左右に揺れる。話を聞いてもらえるのってこんなに嬉しいんだね。


「夏お兄さん聞いて聞いて!あのね、」


それからいっぱいいーっぱいお話しして、夏お兄さんから「もう遅いから電話切るね」と言われるまでずっと楽しかった!


通話画面を閉じて、スマホをぎゅっと胸元で握る。こうすれば、寂しい心も温まるかなぁ。




☃☃☃




翌日。小学校に登校していの一番に親友のりょうちゃんにお話しする。


「りょうちゃん、おはよ!あのね昨日ね」

「おはよ、冬瑚。朝から元気ね」


りょうちゃんはとってもクールな女の子。泣いている姿どころか焦っている姿すら見たことがない。大人の人みたいに落ち着いてる頼れる親友なのだ。


「冬瑚の話は長いから簡潔にまとめて」

「わかった!えっとね~」


こんなクールなところもまたりょうちゃんの魅力の一つ。言いたいことを頭の中でまとめていく。簡潔に短く昨日のことをまとめると・・・


「ぎゅってしてくれたお兄さんと電話したの!」

「???」


あれ?りょうちゃんが宇宙人を見るような目で冬瑚を見てる。おかしなこと言ったかなぁ?


「・・・一つ質問があるんだけど」

「どーぞ」


珍しく困り顔のりょうちゃんの先を促す。困り顔って言っても眉間にほんの少し皺が寄っているだけだけどね。この変化に気付くのは親友の冬瑚だけだね!へへ。


「ぎゅってしてくれたお兄さんは知ってる人?」

「昨日初めて会った人だよー」

「・・・そう。私、いつか冬瑚が誰かに攫われたりしないか心配だわ」

「りょうちゃん・・・!心配してくれるの?ありがと!」


ぎゅぎゅ~っとりょうちゃんに抱き着く。こういうのをツンデレっていうのかな?可愛いなぁ。







「だからね、りょうちゃんはツンデレだと思うの!」

『りょうちゃんって女の子だったのか、良かった~』

「?」


声が小さくてよく聞こえなかった。なんて言ったんだろう?


『なんでもないよ。りょうちゃんはツンデレっていうか、ただ心配してくれてるだけだと思うよ?』

「そっかぁ・・・あ!そういえば冬瑚ばっかり今まで喋ってたね。今度は夏お兄さんのお話を冬瑚が聞く番だよ」

『そうだな~・・・あ、この前冬瑚と同じ年の子たちとかくれんぼをしたよ』

「かくれんぼ!?それに冬瑚と同じ年の子か~会ってみたいな」

『冬瑚ならすぐに2人と仲良くなれるよ』


夏お兄さんと話すと、楽しいがいっぱい増えていく。早く会いたいなぁ、2人にも、夏お兄さんにも。


会いたいといえば、スパイごっこで潜入してるお城の庭に住んでる白いにゃんこ、元気かなぁ?






☃☃☃





「冬瑚ってお姉さんいる?」


クールビューティーりょうちゃんがそう言って見せてきたのはスマホで取った一枚の写真。


「駅を歩いてた時に見かけて思わず写真撮っちゃったんだけど、この人、冬瑚にそっくりじゃない?」

「ほんとだー」

「ほんとだー、って」


冬瑚と同じ金色の髪に青い目。顔もとっても似ている写真の中のその人は、どこか不機嫌そうな顔をしていた。


「お姉さんもお兄さんもいないよ」

「他人の空似ってやつかな?」

「そらに?りょうちゃんは物知りだねぇ」






「ってことがあってね。メイドのお姉さん、ほんとに冬瑚にそっくりだったんだよ・・・夏お兄さん?聞いてる?おーい」

『・・・聞いてるよ。ごめんね、ちょっとダメージが大きくてね。まさか冬瑚にあのときの姿を見られるなんて!兄としての尊厳がぁぁぁ』


後半が良く聞こえなかったけど、なにか後悔している様子だった。



毎晩のように続いた冬瑚と智夏のやり取りは、冷え切った家庭で傷ついていた冬瑚の心を確実に守っていたのだった。





~執筆中BGM紹介~

輪るピングドラムより「ノルニル」歌手:やくしまるえつこメトロオーケストラ様 作詞・作曲ティカ・a様


メイド夏くんの写真を見せてもらった冬瑚はこの後りょうちゃんから写真をもらっています。ドン( ゜д゜)マイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] りょうちゃん、女の子で良かったね。もしも男の子だったら、命の危機に曝されていたかも・・・ まさかクラスメート経由でメイド姿の写真が冬瑚ちゃんに渡るとは。秋君にも渡りそう。正体、バレるのかな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ