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卒業おめでとう

新年明けましておめでとうございます!



出し切った。


今の俺に発揮できる力をすべて出せたと思う。


大学を出て、空港に到着して、飛行機が離陸して……。


受験が終わったんだなぁ、と思ったらドッと疲れが押し寄せてきた。日本に着くまでちょっとひと眠り、と思って瞼を閉じたらなんと。


気が付いたら日本に着いていた。


予想外の爆睡&快眠で目も頭もスッキリしている。香苗ちゃんとの待ち合わせ場所に向かって歩いていると。


「智夏クン」


足が止まった。


まだ寝惚けているんだろうか。いや、でもこの声を聞き間違えるはずは――。


「さ、」


彩歌さん、と呼ぶ前に。


やわらかな日なたの温もりが腕に飛び込んできた。誰がとか、どうしてとか、考えるより先に。


抱きしめた。


「彩歌さん」

「おかえりなさい。智夏クン」


どうやら自分が思っていた以上に、異国の地での受験は心細かったらしい。


「ただいま」


落ち着く~。安心する~。離したくない~。


本音を言えば離したくないけど、空港でいつまでの抱き合っているわけにはいかない。それに聞きたいことが……。


口を開く前に指でシーっ、と塞がれた。


「智夏クンは今、どうして私がここにいるのかって思っていますね?」


ここで「エスパーか!?」と思うほどピュアではない。というか、俺と同じ立場だったら誰もが同じことを思うだろう。けれど、エスパーごっこ(?)をする彩歌さんが可愛いのでこのまま話を続ける。


「思ってます」

「そして香苗ちゃんがどこに行ったのかとも思っていますね?」

「おっしゃる通りです」

「香苗ちゃんは今、あなたの真後ろにいます」

「夏くーん!」

「わっ!?」


背後から肩をバシバシと叩かれて驚いた。叩いたのはもちろん、香苗ちゃんだ。


「ちょっと痩せちゃったんじゃない?」

「そんな数日で変わらないよ」

「そーお?」


肩から腕、背中をぺたぺたと触り「夏くんが減った気がする」とよくわからないことを言っていた。


「香苗ちゃんと一緒に来たの?」

「そっス。智夏クンに一番に言いたい言葉があって」

「おかえりって?」

「それもあるけど、違うっス」


彩歌さんが姿勢を正したので、俺も倣った。


「御子柴智夏クン」

「はい」





「卒業おめでとう」





―――――――――――――――――




「卒業証書授与」

「3年A組、井村永新」

「はい!」


A組のトップバッターは井村。生徒の名前を一人ずつ呼ぶのは担任の吉村先生だ。


修学旅行をきっかけに仲良くなり、それ以降よく絡むようになった。とても聞き上手で兄貴肌。高校卒業後は弁護士になるため、大学で法律の勉強をするらしい。


井村なら他人の心に寄り添える、立派な弁護士になるに違いない。


「鈴木博也」

「はい!」


第一印象は女子が好きすぎて女子に嫌われてる残念な奴だった。それなのに勉強はできるし、話してみれば面白いしでいつの間にか友達になっていた。将来は医者になるために医学部のある大学に入学するらしい。


鈴木が白衣を着ている姿は想像できないが、どうか頑張ってほしい。


「田中悠葵(ひさぎ)

「はい」


親友。本人が何と言おうと俺はそう思ってる。入学してから本当に色々あって、その度に助けてくれたし、俺も少しばかり力を貸すことができたと思う。高校生活で最も長く共に過ごした友。


田中は会社を立ち上げることを考えているらしく、卒業後は経営の勉強をしに大学に行くらしい。しかもその話に秋人もどうやら関わっているらしいが、俺はまだ教えてもらっていない。


「花村香織」

「はい!」


明るくて、優しくて、アニメが大好きで、ちょっぴり天然な女の子。五大美人の1人だが、気取らず、友人も多い。彼女にもたくさん助けられてきた。


香織は日本の文化を海外に伝える仕事がしたいと、学内の公用語が英語の大学に進学するとか。


きっと香織ならいろんな国を繋ぐかけがえのない存在になるに違いない。


「御子柴智夏」

「はい!」


昨日のリハーサルには参加できなかったので、ぶっつけ本番で他の人たちに倣って壇上に上がり、校長先生から卒業証書を受け取る。


「卒業しても応援しているよ」

「ありがとうございます」


校長先生からの激励に胸が熱くなった。


席に戻るときに在校生の席が見えた。2年生の席では虎子が小さく手を振り、1年生の席では田中妹がぺこりと頭を下げ、姫と穂希に至っては号泣していた。少し怖い。


「元山蒼穹」

「はい」


2年生のときからなにかと関わっていたが、3年生から同じクラスになって友人としてつるむようになった。ドジっ子なのは相変わらずだが、それがチャームポイントでもある。


もとやんは一度髪を金髪にしたことをきっかけに、美容師の仕事に興味が湧いたらしく、専門学校に進学するようだ。


プロになったらもとやんに髪を切ってもらお。


「みんな、卒業おめでとう」


俺たちは今日、青春の日々を過ごした桜宮高校を卒業した。

~執筆中BGM紹介~

BORUTO-ボルト-NARUTO NEXT GENERATIONSより「ビボウロク」歌手:Lenny code fiction様 作詞・作曲:片桐航様 編曲:Lenny code fiction様 / 江口亮様

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