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遅すぎ

あ、あれ?世の中もしかしてクリスマs…



前回までのあらすじ。


冬瑚(真冬に虫取り網装備)と秋人が遊びに行っている間に、俺と香苗ちゃんでマリヤを病院まで迎えに行き、家でまったりしていたところ、弟妹達が祖父をGETして無事帰宅。なお、祖父は無理やり連行された模様。これってつまり誘拐……。


「えーーーーーっと、冬瑚。元居た場所に返してきなさい」


大丈夫、俺たちは何も見なかった。


「落ち着け兄貴。執事さんの了解は得てるから、多分大丈夫だ」

「一番大事な本人の了承を得てないね、それ」


全然大丈夫じゃないね。


「まぁまぁまぁ。みんなとりあえず座って、お茶しない?」


とぽぽぽぽぽぽ


「そちゃですが。どーぞ!」


粗茶の意味を理解はしていないようだが使い時はわかっているらしい冬瑚が、たどたどしく熱いお茶を急須から注いでくれた。


その間おじいちゃんはというと。


「こんな小さな子に熱いお湯を持たせてはならん!」

「わしが代わりにやるから座っとりなさい!」

「うん?これはなんだ?あっっちぃ!」


最後の方は外国語で話していたから予測だが、他人の話を聞かないそそっかしい系おじいちゃんなのはこの5分間でわかった。


結局は冬瑚に「おじいちゃん邪魔!座ってて!」と言われすごすごと引き下がっていた。


6人でコタツを囲むには狭いため、普段ご飯を食べているテーブル席に俺、その横におじいちゃん、向かいにマリヤ、その横に香苗ちゃん。


地獄のテーブルを囲む俺たちを横目に、おじいちゃんを捕獲してきた秋人と冬瑚はコタツでぬくぬく中。いいなぁ。俺もあっち行きたい。


「はい、おじいさんに質問!」


地獄の空気の中、元気よく手を挙げたのは香苗ちゃん。


「なんで今さら会いに来たの?」


おーっと!?


香苗ちゃんがにこにこしながらおじいちゃんを刺しに来たぞ~?これは俺でもちょっとビビるくらい怖い。


おじいちゃんは冬瑚が淹れてくれた茶を見つめながらどこか言い訳のようなことを口にした。


「……会うつもりは、なかった」

「え、この前すっごく親身に相談に乗ってくれたのに?」

「へぇ。会うつもりないとか言って、夏くんにも会ってたんですね」


なんか、すんません。自分、いらんこと言っちゃったみたいで……。


「貴女の怒りはもっともだ。ミス香苗」


ミス香苗て。


実際に使う人初めて見たな。香苗ちゃんもびっくりしてるし。香苗ちゃんは名前を知っていたことに驚いたのかも。


「妻に、マリヤと仲直りをしてほしいと言われ、ようやく探し始めたんだ。なにもかも遅すぎたがな」


この含みのある言い方はつまり、マリヤに何があったのかを調べ、芋づる式に俺たちに何があったのかも知っているということかな。


なにもかも、ぜーんぶ終わった後に知ったのか。なるほどね。


「たしかに遅いな」

「遅すぎだろ」

「カメさんより遅いね」


孫3人からの素直な言葉に、心なしかおじいちゃんが縮んだように見えた。


「一目顔を見たら帰るつもりじゃったんだが……」


ちらりとマリヤの顔を見た。


「なかなか顔が見えなくてのぉ。滞在期間を延ばして機をうかがっておったら、虫取り網に捕まって……」


え、虫取り網で捕まったの?嘘だろ……。


「冬ちゃん。人間を捕まえたらダメじゃない」

「だって、秋兄が「あのじいさん絶対僕らのじいちゃんだろ」って言うし、「冬瑚のおじいちゃんですか?」って聞いたら逃げようとするからつい」

「すごい。秋人なんでわかったんだ?」

「あの顔はどう見たって兄貴を50歳くらい老けさせた顔だろ」


まじかぁ。歳取ったらあんなイケオジになれるのか嬉しい。


「お父さんは……」


ずっと黙っていたマリヤが、俯きながらぽつりと言った。


「私のこと、覚えてたんだね」

「忘れたことなど一度もない!」


ダン!とテーブルを叩いて立ち上がったおじいちゃんの肩にぽんと手を置く。


「おじいちゃんに怒鳴る権利ないですからね。落ち着いてください」


そんなシュンと捨てられた子犬みたいに小さくなるのやめてくれますかね。あと、「兄貴もこえーな」って言ってるの、聞こえてるぞ秋人!

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