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天使と悪魔

ここ数日、ありがとうコーナーが続いているのも読者の皆様と、おススメの曲を教えてくださった方々のおかげです。ありがとうございます!




「罰ゲーム?」


ほら、田中が余計なことを言い出すからカンナが怒っちゃったじゃないか。


「楽しそうね。何がいいかしら?」


乗り気かよ!あの顔、自分が罰ゲームに当たるとは一ミリも思っていないな。一体どこから来るんだ、あの根拠のない自信は。


「5分間語尾に、にゃを付ける!」

「10分間重しを乗せて正座する」

「スクワット5回!」

「油を入れて沸騰したお風呂に入る」


天使と悪魔が交互に囁いている・・・!誰だ昔の拷問を罰ゲームにしようとしてる奴は!


「市中引き回し」

「カンナちゃん、それ罰ゲームじゃないよ、拷問だよ」

「冗談よ」


お前かい!冗談は冗談っぽい顔で言うから冗談なのであって冗談っぽい顔してなかったらそれはもう冗談ではない。・・・なんか冗談がゲシュタルト崩壊してきた。あれ、冗談って、なんだっけ?


「じゃあ一位だった人が最下位の人になんでも一つ命令できるっていうのは?」


無難な罰ゲームを提案してみる。そう、これが自分の首を絞める発言だと気付かずに・・・




8人でダウトを始めて、俺に順番が回ってきたのは3回目。持っているカードの数字は12だが、


「9」


と何食わぬ顔でカードを伏せて出す。そろそろ場のカードが溜まってきたので誰が「ダウト」と言ってもおかしくない。俺の番では誰も発言する気はないらしい。ピンと張りつめた空気の中、次のカンナに順番が回る。


「10」

「ダウト」


間髪入れずにダウトを宣言する。そのままカンナが出したカードをめくり、数字を見る。カードには『3』の数字が。悔しげな表情でカンナがその場に出されていたカードを全て回収する。


「よくわかったねーカンナちゃんの表情全然変わらなかったのに」

「そうよ!表情には一切出ていなかったはずよ!なんでわかったのよ!」


おーいクールカンナどこ行った?表情には出ていないって言われても、そもそも見てないしな。まぁ理由を挙げるなら、


「声がいつもより緊張気味だったから」

「「声?」」


声がいつもとは違ったのだ。


「俺には違いなんてわからなかったぞ?」

「あたしもー」


俺以外の全員が不思議そうな顔をしている。逆になんで違いがわからないのか疑問である。


「んーなんていうか、いつも聞いてる声とは違ったから、としか。俺、カンナの声大好きだし」


それで違いがわかったのかもなーと笑っていたら、みんなの様子がおかしいことに気付く。右横の香織を見る。赤面している。右横のカンナを見る。赤面している。周囲を見渡す。なんだか恥ずかしそうにしている。・・・なぜ?


「あ、ありがと」


ぽつりと礼を述べたカンナ。


「ありがと、ってカンナの持ち札俺のせいで増えたのに?」

「そういうとこだぞ、しばちゃん」

「え?何が?」


田中が呆れたように言ってきたが、なんのことやらさっぱりである。工藤さんと松田さんはニヤニヤしているし、鈴木と井村は赤面したままだし。めっっちゃ居心地が悪い。


「ほら、カンナの番だぞ」

「え、えぇ」


話題転換のためにゲームを再開させた俺は、右横で俯いていた香織の様子に気付くことはなかった。





「一位は松田さん、ビリは井村だね」


ゲームを再開させた後、なかなかに白熱した騙し合いが続き、僅差でカンナは井村に勝利しビリを免れた。・・・井村が気を遣って負けた可能性も否定はできないが。


「じゃあ井村君、御子柴君に壁ドンしてからのあごクイで最後に『逃がさねぇから』というセリフをお願いしゃっす!」

「「待て待て待て!!」」

「なんか俺巻き込まれてない!?井村の罰ゲームだよね!?」


なんで3位抜けして罰ゲームに巻き込まれるんだ!松田さんに猛抗議する。


「だって、他の人巻き込んじゃいけないなんて言わなかったよね?うふふ」

「・・・」


優雅な笑みを浮かべながらスマホを構える松田さん。助けを求めようと田中と鈴木を見るが、目を逸らされた。う、裏切り者が~!!誰だこんな罰ゲーム提案した奴!俺だよ!バカ野郎!チラッと見えたがカンナと香織もスマホを構えていた。どうやらここには神も仏もいなかったらしい。咄嗟に逃げようと立ち上がった瞬間、


ダァァン!


と目の前に井村の手が。か、壁ドンされたぁぁぁああ!!なんでこいつこんなに本気なんだ!?あ、そういえば演劇部だったな!罰ゲームでも全力かよ!そりゃモテるはずだぜ!?(乱心)


恨みがましく井村を睨むと、壁ドンしていない右手であごクイされたぁぁぁあああ!そして横からカメラのシャッターのバースト音が響いてくる。なにこれ。俺に逃げ場はないのか。


「逃がさねぇから」


キリッ


いや、キリッじゃねぇし。意図せず俺の行動がシナリオに沿ってたし。というか、松田さん預言者なんじゃ・・・


「ハァーイ、カッッッットォ!!」


松田監督のカットにより、地獄の罰ゲームが終わる。ふぅ、と一息ついたとき、香織が焦ったように言った。


「今友達から連絡きたんだけど、うるさくしすぎて先生がこっち来るみたい!」

「今からがいいところなのに~」

「言ってる場合かよ!」


おぉ鈴木がツッコんでるよ。珍し。って言ってる場合じゃないな。


「とりあえず女子は部屋に戻る?」

「教員部屋の向こうが女子部屋だから出たら鉢合わせしちゃうよ!」

「やっぱ隠れるしかないかー」


田中がのんびりと言ったが、この部屋で隠れるところなんて、ここには布団くらいしかない・・・いや、布団があるな。


「ほら、来るぞ!各々布団に潜り込め!!」


叫ぶや否や部屋の電気を一瞬で消して布団に潜り込む田中。慌てて俺たちも布団に潜り込む。普通に考えて、男子4人分の4つの布団があるため、女子がひとりずつ一つの布団に潜り込めばいいのだが・・・なぜか両脇に温もりを感じる。二人のシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。あ、なんかやわらか、


「お前らうるさいわ!ってあれ?真っ暗じゃねぇか。ったく、他の部屋か?」


思考が危ない方向にいったとき、ヨシムーが部屋に乗り込んでくれたおかげで正気に戻った。


ヨシムーが去って十分な時間が過ぎた頃、布団をはがして起き上がる。少し開いているカーテンの隙間から差し込む月明かりが部屋をほのかに照らす。


誰も何も言うことなく、女子たちが部屋を去っていく。・・・・・・はー。部屋が暗くて良かった。おかげでこんな顔、見られずに済んだ。鏡なんてなくたってわかるくらいに顔が熱い。火が出そうだ。


布団を被ると、まだ彼女らのシャンプーの香りが残っていて。福井の最後の夜はなかなか寝付けなかった。


「なんで俺の布団に誰も来てくれなかったんだ?鈴木の所ですら行ったというのに」

「彼女持ちの男の布団なんざ入るわけねぇだろうが」


なるほど、だからカンナも香織も俺の所に来たのか。あっぶね、とんでもない勘違いするとこだった。


「うぅ鈴木にツッコまれるなんて、一生の不覚」

「なんでだよ!」


いや、寝れなかったのはこいつらが原因か。



~第24回執筆中BGM紹介~

FINAL FANTASY ⅩⅢ-2より「ヒストリアクロス」歌手:ORIGA様 作曲:鈴木光人様

今回も読者様からのおススメ曲でした!皆さんが勧めてくださる曲がどれも最高すぎて耳が幸せです。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめましてSeaです。 友達から『この小説面白いよ』って言われて読んでみました。 雪ノ音リンリン先生の小説 正直とても面白かったです。特に今回の話などは誰もが憧れたことのあるような感じの…
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