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踏ん切り



ずっと……というか3日前ほどから気になっていたことがある。


「学校祭の前にカンナに告白する」


鈴木はカンナに既に想いを告げたのだろうか。学校祭の前って言っていたし、もう告白は済んでいるはず……いや、もしかして今日の劇の前にって意味か?


カンナには学校祭が始まってから会ってないし、鈴木はいつもと何も変わらないし。


俺から「告白ってどうなった?」って聞くのも、もし万が一にフラれていたら申し訳ない。


しかし、どうなったかは聞きたいし、知りたい。


だってわざわざ予告までしてきたんだ。結果は友人として知りたいと思うのは当然だ。


「、、の?」

「うーん。……わ」

「もう!聞いてなかったでしょ!」


聞くとしても学校祭が終わってからの方がいいかな、と考えていたら香織が視界に入ってきて驚いた。そうだった。今は香織と話していたんだった。朝だからかボケっとしてしまうな。


俺から提案したことなのにボーっとしてしまうとは。


「本当に、いいのね?」

「うん」

「本当の本当に?」


俺より未練がましそうに、何度も聞いてくる香織に苦笑する。


「大丈夫だよ」


もう隠す必要も、隠れる必要もないから。


本当はもっと前にやっても良かったのだけど、なんとなく踏ん切りがつかずにここまで来てしまった。


「……わかった。じゃあ、やるよ」

「お願い」


俺が少しも躊躇う素振りを見せないので、香織も覚悟を決めてくれたらしい。


朝の教室の隅っこで、椅子に座る俺の正面から香織が近づいてきて、鼻と鼻がくっついてしまいそうなほどに近づき……。


――ジャキン


長かった前髪を切った。







姫役:花村香織

旅人(実は王子)役:エレナ・トルストイ

魔法使い役:御子柴智夏


とまぁ、キャスト表の上から3番目に名前が書かれるくらいには重要な役を任されている。


「姫役の着替えまだー!?」

「あと髪をセットするだけ!」

「旅人どこいったー?」

「B組に遊びに行きましたー!」

「あの自由人を誰か連れ戻せッ!」

「ラジャー!」


公演まであと少し。複雑な衣装の役の人たち数名が着替えに手間取ったり、衣装係がこだわりすぎて解放されなかったり(これは香織)で、衣装が簡単な役の人たちはさっさと着替えて、大道具を体育館のステージ脇に移動させている。


ちなみに魔法使いの衣装はフード付きの大きなマントを身に纏っているような、THE魔法使いのような衣装であり、制服の上から羽織るだけのお手軽衣装だ。


フラれる騎士役の田中や、旅人(実は王子)役のエレナなどの衣装はレンタルしたものなので手は加えていないし、比較的着やすいものが多い。


逆に姫役の香織などの衣装は、安い服を買ってその上から手を加えて大掛かりなアレンジを加えているため、着るのが大変だったり本番直前まで手直しが入ったりする。


だから暇を持て余したエレナがB組に乱入したわけである。


俺、田中、そして井村(兵士A役)の3人でB組にエレナの回収に向かう。





「おーい、エレナさんやーい」


井村が廊下に面した教室の窓から頭だけをB組の教室に突っ込んで、王子を呼んだ。俺と田中も井村の横から教室内を覗く。


「お迎えがきたみたいよ、エレナ」

「ふぉうふぁっとふぁってー」


エレナが口の中いっぱいに何かを入れてもぐもぐと口を動かしている。その姿はまるで頬袋にパンパンに食料を詰めるリスのよう。エレナがもごもごと喋ったが、田中と井村には何を言っているのか理解できなかったらしい。


「「なんて?」」

「もうちょっと待ってーって言ってる」


聞き取れた俺が代わりに通訳をすると、2人から尊敬のまなざしで見られた。


「しばちゃんすげーな」

「なんであんなのがわかるんだ」


なんでって、そりゃあ。


「魔法使いだから」

「「なるほど」」

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