シン・竹取物語
作中時間が現実に追いついた!と思っていたのに、もう現実は10月ですねぇ。
「あぁ、かぐや姫よ!なぜ月に帰ってしまわれるのか!」
3年生は文化祭で毎年、クラス対抗で劇を披露することになっており、その順番は抽選で決まる。カンナ達のB組は文化祭初日の今日。俺たちは明日お披露目予定である。
B組はカンナが御門役でかぐや姫に求婚する男性役。女子で男役をやっているのはB組ではカンナだけだが、男の俺から見てもカッコいい。
B組の劇のベースは竹取物語であるが、本来のかぐや姫に5人の男性たちや御門が求婚する物語ではない。
「また会いに来るわ!」
「あぁ!かぐや姫だけずるいわ!」
「私も御門様に惜しまれた~い!」
御門役のカンナがあらゆる女性からモテてモテてモテまくる、半オリジナルハーレム物語である。
「君は僕の婚約者だろう!なぜ他の男の元に通っているのだ!」
「あなたには詩のセンスがないからですわ!」
女性が愛想をつかした理由がなんとも平安チック……。
御門のハーレム要員たちには婚約者の男性たちがいて、ドロドロ展開が繰り広げられている。
一応、劇も体育祭と同じで対決なので、順位や点数がつく。このままの昼ドラ展開が続けば、審査員からの評価は低くなってしまう。さて、ここからどうするのか……。
「「お手並み拝見といこうか」」
A組の脚本家の松田さんと、演劇部の井村がB組の生徒たちの一挙手一投足に注目している。
あ、いまカンナが転びかけた。裾が長い服を着ているので、自分で踏んで転びかけたようだ。一瞬体が前のめりになったが、気合で立て直した。怪我しなくてよかったなぁ。
「あそこで裾を踏んで転びかけたのはフェイク?」
「伏線かもな」
そんなわけあるかーい。
あれが計算された動きだったら、とんでもないレベルの女優だよ。アカ〇ミー賞ものだよ。サイン貰いにいくよ。
「御門様!なぜ私だけを愛してくださらないのですか!」
「あたしと駆け落ちしてくださいませ!」
「ひどい!遊びだったの!?」
「私にはあなただけなのに!」
――うぉおおおおお
ド修羅場展開に、観客たちの期待の声が聞こえてきた。観客は7割が生徒で3割が保護者やOGなどだが、みんなこういうドキドキハラハラ展開に飢えていたらしい。観客たちの目がステージに釘付けになっている。そしてステージ上の御門も女性たちから釘付け(物理)にされそうなほどにピンチである。
「かぐや姫、あなたは愛を求めるばかりだ。だから簡単に愛を囁く私の元に来た。そうだろう?もっと周りを見るんだ。あなただけを愛してくれる素敵な人がいるよ」
「私だけを、愛してくれる人……」
プレーボーイ御門に諭されたかぐや姫が後ろを振り返り、心配そうに自分を見つめる婚約者に目を向ける。
「うさぎ姫、駆け落ちなんてしても現実からは逃げられない。きちんとご両親と話し合うんだ――」
こういう流れで御門は自分のハーレム要員だった女性たちを1人ずつ諭していき、親や婚約者の元へ返していった。
そうして最後に1人、御門だけがステージに残された。女性たちに囲まれていたあの頃と比べると何とも言えない寂しさが。
「これでいい。これでいいんだ。悲しい思いをする女性が一人でも減ったのなら。幸せな女性が増えたのなら」
お前の幸せはどうなるんだよ御門!そんなに自分を犠牲にして!いったい今までどれだけの女性を救って来たんだ!?
すっかりB組の劇に見入ってしまった。
「その幸せにあなたは入っていないのですね」
「!……なんだ護衛か」
ずっと御門の一歩後ろで護衛をしていた男子。彼が今は横に立っている。
「そうやって無理やり自分の性別を隠して男のフリをして、女性たちを救済し続ける貴女を見るのはとても辛い」
な、なんだってー!?!?!?
てっきり話題性のためだけのカンナの男装だと思っていたのに、まさか御門が女性だったなんて!いや、カンナは女だけど御門は男……いやでも実は女だったわけで!
物語終盤での衝撃事実に驚きを隠せない。
「共に生きよう、姫」
「私は――、」
暗転。
「これにて、B組の劇『シン・竹取物語』を終了します」
「「「ありがとうございました!!!」」」
この後のストーリーは視聴者にお任せしますタイプの終わり方かッ!!!
~執筆中BGM紹介~
かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-より「My Nonfiction」歌手:白銀御行(古川慎)様 / 藤原千花(小原好美)様 作曲:あっこゴリラ様 作曲:あっこゴリラ様 / PARKGOLF様




