宇宙人
前回の投稿ですが、またもやぽんこつ作者のうっかりにより予約投稿をミスり、気付いた昨日、慌てて投稿するという事態に。読者の皆様には毎度ご迷惑をおかけしております。スミマセンデシタァアアアアアアア!
「今日もよろしくなぁ、ガキ」
「……よろしくお願いします」
「なんで距離を取るんだよ!?」
「昨日さんざん絡まれたので。ハァぁぁあああああ」
彩歌さんと仲直りした翌日。
『熱風アニソン大ライブ!』も最終日の2日目。リハーサルがあるため、午前中からスタンバイしているのだが、朝一番でRYOに出くわしてしまった。控室が一緒なので出くわす確率は高かったが、まさか入った瞬間に会うとは。
「なんだよ~。人の顔を見てため息つくな。ところで……」
チラチラと周囲を確認し、少し身をかがめて耳打ちしてくる。くそ、こいつより身長が低いのが腹立たしいな。
「今日は朝帰りか?」
「……縮め、高身長!」
RYOの頭を両手で鷲掴みし、ギギギと力技で沈める。会って早々に「朝帰り?」なんて聞くか普通。そういうことが言える間柄でもないだろが。
「うぉ!?」
昨日の再演とでも言わんばかりに今日も今日とて取っ組み合う。
「リハ前になにやってるの君たち~?」
「ケンカ」
「あそび」
「ものの見事に正反対の回答だねぇ。仲が良いのか悪いのかわからないけど喧嘩するほど仲が良いって言うし、仲は良いのかしら」
間に割って弾丸トークを繰り広げ、一瞬で場を制したのが、昨日ピアノの手入れをしているときに話しかけてきた……。
「江戸川さん?」
「みんなのおばちゃんこと、江戸川さんだよ」
同い年の江戸川さんがおばちゃんなら俺おじちゃんなんだが。
「おっ。可愛い子から話しかけに来てくれて嬉しいな。たしかヴァイオリンを弾いていた子だよね?」
「え!私のことを知ってるんですか?」
「女の子の顔は一度見たら忘れないのさ」
早速江戸川さんを口説きにかかってるな。
「昨日、女遊びはやめるとか言っていたのはどこの誰でしたっけ」
「あぁ?これは女遊びじゃねぇ。運命の彼女選びだよ」
まぁ、一人の女性に絞る前段階ってことでは一理ある、か?
というか。
「運命?デスティニーじゃなくて?」
「あらやだ。デスティニーって。古いというかもはやエモいわ~」
君との出会いはデスティニー(笑)って昨日言いかけてたのに。ちょっと期待してたのに。
「エモ……」
女子にエモいと言われて若干落ち込むRYO。
「そんなことはいいのよ。御子柴君!私のパートナーになってほしいの!」
「そんなこと……」
言葉のナイフがグサグサと刺さっていく。オモシロ……気の毒だなぁ。
てか、この人はまだ諦めていなかったのか。
「俺の何がそんなにいいんですか?」
「(音に)色気があるところ!」
褒められて悪い気はしないが、それで絆されるわけにはいかない。
「他を当た、」
「他を当たってもらおうか!」
バァァァンとドアを蹴破る勢いでバックミュージシャンの控室に入って来たのは、ここにいるはずのない人物だった。
「宝城さん!?なぜここに!?」
破天荒、マイペース、宇宙人という言葉がぴったりの世界を旅するヴァイオリニストの宝城さんがそこにはいた。
「Hey、サニーボーイ!Wie geht’s?」
「え、何語?」
ヘイ、サニーボーイまではわかった。それ以降は英語と日本語以外の言語だったことはたしかだ。
「私がなぜここにいるかって?」
「時差がすごい」
宇宙ステーションと通信でもしてんのかな、俺。
「それはこのライブのスポンサーが父の会社だからさ!サニーボーイがここにいると聞いてね。こうして突撃したわけさ」
突撃っつーか、突進だな。
ここでようやくRYOと江戸川さんが置いてけぼりになっていることに気付いた。
「あ、この宇宙人は、」
「ででででで出たーッ!」
宝城さんを指さして、まるで化け物でも見たかのように後ずさる江戸川さん。
「久しぶりだな、エディ」
エディ?……あぁ、江戸川だからエディか。なんとなく宝城構文を理解してきた。
「なんで宝城がここにいるのよ!?」
「見ないうちにツンデレになったのかい?エディ」
「どこにデレがあったのかしら!」
ど、どうしよう。
「RYOさん、どうしま……」
判断を仰ごうと、隣の男に問いかけようとしたのだが。
「ふ、ふつくしい……」
どうやら宝城さんがRYOにとってのデスティニーだったらしい。
……本番前にドッと疲れた。




