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脇腹



「ちょっとぐらいいいだろ?」

「嫌だって言ってんだろ!いい加減離せ!」


この部分だけを傍から聞くと、変態に絡まれているようだが……まぁ間違いではないな。変態は変態でも無類の女好きの変態というだけで。


俺がピアノの手入れをしている間、この男はライブ会場の女性スタッフさん達に声をかけまくって玉砕していたらしく、彩歌さんとの待ち合わせ場所に行く最中にバッタリ出会って絡まれてしまったのだ。


こういう変な人たちに絡まれすぎじゃないか?そろそろ厄払いに行った方がいい気がしてきた……。


彩歌さんとの約束の時間には多分もう遅れている。が、約束の時間に間に合うよりも、女遊び大好きなRYOを彩歌さんの元へ連れて行かないことが最優先事項になってしまった。こいつ、彩歌さんのことを”極上”とか呼んでいたし、少しでも引き剥がさねば、と思っていたのだが。


「私の智夏クンを返してくださいっス」


凛とした鋭い声が俺たちを止めた。


「さ、」

「極上ちゃんじゃ~ん!俺に会いに来てくれた感じ?これってもうデスティ」

「うるさいっス」


彩歌さんの指が俺の腕を掴んでいたRYOの脇腹に閃いた。こいつまさか、素でデスティニーとか言おうとしたのか。あまりの寒さに頭皮まで鳥肌が立ちそうだ。


「はぅッ」


情けない声をあげて横っ飛びしたRYOから離れ、彩歌さんの手を掴んでこちらに引き寄せる。


「彩歌さん、どうしてここに?」

「時間になっても来ないし、若い男の子が変なひげの男に絡まれてるって騒ぎになってたから」

「「騒ぎ?」」


ハッとなり周囲を見渡すと、小さくない道で小競り合いをしていたため、通行人たちが遠巻きに俺たちを囲んでいた。


「とりあえず場所を移そうぜ」


なぜお前が仕切るんだ。ここで解散でいいだろうが。……って言いたいところだが、これを言うとまた揉め合いになるのは想像に難くないため、黙ってついて行くことにした。


人だかりを抜けて、彩歌さんとの待ち合わせ場所だった広場に3人で向かった。


「で、極上ちゃんは俺に会いに来てくれたんだ?」


着いて早々、頭のおかしなことを笑顔で言い放つRYO。自然と俺の両手が彩歌さんの耳を塞いでいた。


彩歌さんが上を向いて、俺を上目遣いで不思議そうに見つめてきた。くっ、かわいい!


「あんな言葉を聞いたら耳が腐っちゃいますから」

「俺の言葉は毒か」


自覚がおありのようで。


「じゃあ智夏クンの耳も塞がなきゃいけないっス」


くるりと彩歌さんが後ろを向いて俺と向き合い、暖かい両手で俺の耳を塞いだ。


……あれ?


「あの男にひどいことされてないっスか?怪我は?」


RYOのせいで色々忘れてたけど、俺っていま彩歌さんから避けられてたはずでは……?


「あ、ちょっと腕が赤くなってる。ちょっとタオル冷やしてくるっス!」

「待って待って待って」


あの男に掴まれて赤くなった腕を見るや否や駆けだそうとした彩歌さんを腕の中に閉じ込める。


「俺は大丈夫だから」


ライブ前に抱いていた気まずさなんて吹き飛んだ。


今日フラれるかもしれないなんて不安も消し飛んだ。


だって彩歌さんがこんなにも俺を大切に思ってくれているのがわかったから。


俺と同じように、彩歌さんも不安がっていたことが見てとれたから。


「智夏クン、あの日から避けててごめんなさい……。気分悪かったよね」

「心配とか、不安はありましたけど、怒ってはいませんから。けど、理由は聞いてもいいですか?」

「うん。私もそれを今日話したくて、」


拳をギュッと握りしめて、意を決して話そうとしてくれたとき。


「俺の存在忘れてね?え?あんたら付き合ってんの?」


さっきからずっと思ってたけど……邪魔!

~執筆中BGM紹介~

家庭教師ヒットマンREBORN!より「Drawing days」歌手:SPLAY様 作詞・作曲:向井隆昭様

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