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手を繋いでゴール



「ま、学校で一番初めに知れたことに変わりはないんだろ?」

「………………ゑ?」


俺が付き合ってることを学校で一番初めに知ったのは田中……じゃなくてエレナだ。っていうのを馬鹿正直に言ったら、ぶん殴られるカナ?よし、ここは話を逸らす作戦でいこう。


「なんでもかんでも順位を付けるのは、精神の発育に良くないと思うんだ。誰が一番だとか、誰が最下位だとかそんなのは関係ない。大事なのは気持ちだよ!みんなで手を繋いでゴールして何が悪いんだ!結果じゃなくてその過程が重要な、」

「うるせぇわ!なんだいきなり!」


ここから話を絶妙に逸らしていこうと思っていたのに、止めないでくれよ。


「要するに、誰が一番だろうがお前は輝いてるよってことだ」

「ひっっっとつも、しばちゃんの言ってる意味がわからん」


大丈夫、俺にもわからないから。さて、これからどう誤魔化すか……。


「智夏クン、ちゃんと正直に田中クンに話した方がいいっスよ」

「田中、お前は4番目か5番目くらいだ。スマン」


やっぱ、誤魔化さずに正直に話すことが大事だよな。


「なんつー変わり身の早さ」

「いっそ清々しいわね~」


秋人と香苗ちゃんが何やら言っているが、そんなの気にしない。気にしないったら気にしない。


「4番目か5番目って……。結構知られてるじゃん」

「まずエレナにバレて、井村にバレて、この前は松田さんにバレた」


松田さんには彼女がいることだけがバレたわけだけど。いや~、あれは驚いたな。女性の勘、恐るべし。


「誰にバレてて誰にバレていないのか、あやふやなんだよな」


いろんな人にバレすぎて。学校以外だったらもっと知ってる人がいるし。


「そんなんで今までよく隠せてきたな」

「まぁな」

「褒めてねぇから」


すぅん。


「そんな危機管理能力でこれから先、彼女を守っていけるのか?付き合ってることを内緒にしているのだって、鳴海さんを守るためなんだろう?それなのに何人にもうっかりバレちゃって」

「面目ないです……」


何のために付き合っていることを隠していたのか、それを今ハッキリと思い出した。忘れていたわけじゃなかったが、付き合ったばかりのときに抱いていた緊張感を持ち直した。


「彩歌さん、ごめん。これからは誰にもバレないように気を付けるから」

「いや、いやいや!いやいやいやいや!」


俺の彼女がイヤイヤ期な件。


彩歌さんが首を振って、さらに手もぶんぶんと左右に振って否定した。


「最初にエレナちゃんにバレたのだって私の勘違いが原因だったわけだし!」

「あれは俺がうっかり口を滑らせたからなので!」

「違うよ!その前から私の行動でもうバレてたっス!」

「はいストップストーーップ」


俺が悪い、いや私が悪い、という言い合いがヒートアップしそうになったとき、田中が俺たちの間に入った。


「”俺のために争わないで”発動!」

「技名みたく言うな」


秋人と香苗ちゃんは2人で台所に入って昼食の準備をしている。その隣のリビングでは、こうして田中がバカなことを中二くさいポーズを決めて言っているわけだ。


「つまり、しばちゃんも鳴海さんもうっかりしてる似た者同士ってことだな」

「「似た者同士……」」

「見つめ合ってニコニコすんな!間に俺がいることを完全に忘れてるだろバカップル!」

「「へへへ」」


似た者同士と言われて喜ばないカップルはいるだろうか。少なくとも俺たちにとっては嬉しい言葉だった。俺と彩歌さんの間に立っている田中など、もはや目に入らないほどには。


「はいはい、ごちそうさまです。ま、俺が一番じゃなかったのはちょっと悔しいけど、それは置いといて」


うん?てっきり「歯ァ食いしばれ」くらい言われるかと思ったのだが。


ぶん殴られるかと思ったが、田中からパンチが放たれる気配はない。びくびくしながら、田中の言葉を待っていると、思いがけない言葉が耳に飛び込んだ。


「おめでと」


あ、これヤバいやつ。クルッと後ろを向いて顔を隠す。


「あれあれ?もしかしてしばちゃん、泣きそうになってる~?」

「だっ、、て!田中が、「おめでと」なんて、言うから!」


うっかりこみあげてきちゃっただろうが!

~執筆中BGM紹介~

ゴールデンカムイより「レイメイ」歌手:さユり様 / MY FIRST STORY様 作詞:さユり様 / Hiro様 作曲:さユり様 / Sho様

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