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二股



高校に入ってから一番初めに出来た友達であり、俺の仕事にも理解があり、よく相談に乗ってくれる親友、田中。


「田中に言っ………………てなかった」


いくら記憶をほじくり返しても、言った記憶はない。


「待ってくれ!言い訳をさせてくれ!」


決して田中を(ないがし)ろにしたわけではないんだ!


咄嗟に出た言葉に家族から総ツッコミが。


「兄貴、それ二股してたやつのセリフ」

「今の時代、男の子同士ってのも良いと思うけど、二股はダメよ~」


た、たしかに。言われてみればもうそれにしか聞こえない。


でも、秋人はともかく香苗ちゃんは何を言ってんだ。


「ふたまたってなに~?」

「ふたたまふたたまー!」


冬瑚と、田中と遊びに来た妹の津麦ちゃんが、好奇心を疼かせた。


「二股っていうのはね、」

「香苗ちゃんなに教えようとしてるのさ!?」


なんで馬鹿正直に教えようとするんだ香苗ちゃんは!?


冬瑚の耳を塞いで、汚い言葉が聞こえないようにする。いずれはこういうことを知らなければいけない時が来るかもしれないが、今はまだ小学3年生だし。二股なんて言葉とは無縁の生活を送ってほしいとお兄ちゃんは願ってる、うん。それはそれ、これはこれ。現実に戻ろう。


「田中あのな、」

「しばちゃん、わかってる」

「田中……」

「つまり俺は遊びだったってことか!うおぉーーん!!ひどいぜ!弄ぶなんてよ!」

「たな、」

「智夏クン、遊びとはどういうことだい?怒らないから、この彩歌さんに言ってごらん?」

「へ?」


右に男泣きする田中、左におたまをムチのようにペシぺシする彩歌さん。……うん、どゆこと?


香苗ちゃんが言った冗談に、田中が便乗し、さらに彩歌さんが空気を読んで乗ってきた……ってことか。ふむ、理解しましたぞ。それなら俺も乗ってみようじゃないか。


「違うって!俺は田中も彩歌さんも太郎も花子も武志も藤子も誰も彼もを平等に愛しているんだよ……!」

「俺以外にも男がいるってのか!?」

「私以外にも女がいるっスか!?」

「誰かひとりなんて、そんなの悲しすぎるよ。だって、生きてるだけでみんな魅力的だからさ☆」


決め台詞を吐いて、ついでにバチンとウィンクも決める。両目をつぶった気がしなくもないが、まぁいいだろう。


イメージとしては、人間なら誰でも大好き系宇宙人。


「しばちゃん?」

「智夏クン?」

「兄貴?」

「夏くん?」


田中も彩歌さんも秋人も香苗ちゃんも、俺が便乗してくるとは思わなかったらしく、心配そうな顔で見てきた。これはこれで、楽しいな。また今度やってみよう。


ちなみに小学生組は大人たちの茶番に飽きたようで、2人で冬瑚の部屋に行った。


「なんてね。冗談だよ」

「「「よ、よかったー」」」


いえーい。ドッキリ?大成功~。


「ということで、こちらは俺の彼女の鳴海彩歌さん」

「はじめまして。声優やってます。鳴海彩歌っス」

「こっちが田中です」

「はじめまして。田中です」


ぺこり、ぺこりと挨拶を交わす。


「田中くんの紹介が苗字だけだったね」

「友達です、も無かったな」


うーん。田中を定義しようとすると一言では言い表せないんだよなー。一番近しいものを当てはめるとするならば。


「親友、かな」

「へへ。照れるわ」

「その顔やめい」


デレデレすんな。田中のそのデレ顔を間近で見てしまった俺の複雑な心境よ……。


「智夏クンの話に、田中クンがよく出てくるから、勝手に親近感が沸いちゃって。さっきも一緒にふざけちゃった」


へへ、と笑う彩歌さん、かわちい。


俺の話はだいたいが学校か仕事の話で、学校のこととなると大半は田中がセットだからな。そんな田中には「彼女ができた」と普通なら真っ先に伝えるべきだったんだろうけど。


「なんで教えてくれなかったんだ、とは言わない。しばちゃんにも鳴海さんにも事情ってのがあるだろうし。ガキじゃないから、なんでもかんでも共有したいとも思わないしな」


田中ならそう言うだろうとも思っていた。結構そこら辺はドライというか。俺たちにとっての普通だ。


「ま、学校で一番初めに知れたことに変わりはないんだろ?」

「………………ゑ?」


エレナに井村に松田さんに……。


はは、もうどうにでもなーれ!

~執筆中BGM紹介~

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~より「センチメンタルクライシス」歌手:halca様 作詞:宮崎淳子様 作曲:山田竜平様

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