(CV.秋人)
作者、名前を間違えすぎ問題。本当に、読者の皆様にはご迷惑おかけします。。。
冬瑚が庭になにを隠しているのかこっそりと覗こうとしたところ、見張り番の白猫ハルに阻止されてしまった。カーテンに前足をかけ、器用に体重を乗せてカーテンが開くのを阻止している。
主人(冬瑚)がいない間、しっかりと見張っているハル……。
「忠犬か!」
「それを言うなら忠猫よ、夏くん」
「忠猫か!」
みよ~ん、とカーテンに前足をかけて伸びをしている白猫は忠猫に違いない。……見た目はただの猫だけど。
「「出直せ小僧」ってよ」
「小僧」
風呂上がりの秋人がハルの声を代弁したが、なぜ渋い声でアテレコしたのか。おかげで可愛い白猫が、ダンディなイケ猫に見えてきた。
しかも小僧って。俺限定じゃないか。香苗ちゃんも一緒だったのに不公平だ。
「ハルさんハルさん。注意するのは俺だけですか?香苗ちゃんはいいんですか?」
カーテンにかけていた前足を下ろして、香箱座りをしている白いもふもふに話しかける。すると後ろからハルさん(CV.秋人)の渋い声が。
「出直しな、お嬢ちゃん」
「キャッ。お嬢ちゃんだって!ハルさんったら~、もう!」
人差し指でちょんちょんと、ハルの背中をつつく。3人におもちゃにされているハルは、興味が無いとでも言うかのように、一心不乱に毛づくろいをしていた。
翌朝。
くすぐったいような、けれど心地良い温もりを感じて、沈んでいた意識が浮上してきた。
「智夏クン、起きてくださいっス」
「んー……」
何かが俺の前髪をサラサラと梳かしている。瞼は重く、開かないが、聴覚はだんだんとクリアになってきた。
耳に心地よい声が、柔らかく、けれどどこか困ったように囁く。
「起きてくれないっスか?」
「うぃ……」
柔らかい声の人が、何か困っているようで咄嗟に返事をしたが、寝惚けてろくな返事にならなかった。
もそもそと柔らかい声の主が近づいてくる気配がした。そして左耳に吐息がかかる距離で一言。
「イタズラしちゃうゾ」
「ふぁ!」
腹筋だけでガバッと跳ね起きた。
いくら最近、彼女に会えてないとしても、これは無い!こんな素晴らし、けしからん夢を見るなんて。疲れてんのかな。
彩歌さんが部屋にいるわけない。
「……びっくりしたっス」
「あれ、いま彩歌さんの声が」
「ここにいるよ?」
あ、まだ夢の中か。……夢の中なら、いいよな。
手を伸ばしてぎゅっと抱きしめる。
「ち、ちにゃ、なななな、智夏クン!?」
この温もり、この香り、この恥ずかしがり方。うん、間違いない。
「………………本物だ」
さてここで問題です。夢だと思って彩歌さんを思う存分抱きしめてしまったわけですが、この後はどうすべきでしょうか?
①何事も無かったかのようにふるまう
②可及的速やかに謝罪&土下座
③この流れのままキスしてしまう
願望をさらけ出してもいいのなら迷わず③です。けれどもですね、それを理性が必死に制止しているんですね。なぜかって?それはドアの隙間から香苗ちゃんと冬瑚が覗いているからですね、はい。ここで③を選択したら、社会的に死にます。
俺が気づいたことに香苗ちゃん達も気づいたようだ。ニヤリと香苗ちゃんが悪い笑みを浮かべた。
「ごゆっくり~」
「ゆっくり~」
キィー、ぱたん。
ここで走って追いかけることもできるが、彩歌さんはいまだ俺の腕の中。身じろぎひとつせずに、というか頬をすりつけてくるので、腕を解く気にはどうしてもなれない。
「彩歌さん、今日は仕事が入ってませんでしたっけ?」
結局選んだのは①の何事もなかったようにふるまう、だ。
「キャンセルになっちゃった」
「それは残念ですね」
「うん。……でも久しぶりに智夏クンに会えた~」
社会人と学生。時間が合わないときの方が多いかもしれない。でも、それが嫌になるとかでは全然なくて。
「会いに来てくれてありがとうございます」
会えない間、お互いを想いあっている間に、愛しさが降り積もっていく。
「智夏クン、ぷぷ、寝癖凄いね」
「それを先に言ってくださいよ」
「ごめんごめーん」
寝癖を手櫛で直そうとしてくれたが、形状記憶合金のごとく元の奇形に戻る俺の寝癖。
「強いっスね」
「強いですね」
~執筆中BGM紹介~
転生したらスライムだった件 転スラ日記より「Brand new diary」歌手:熊田茜音様 作詞:寺島拓篤様 作曲:R・O・N様




