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中二

誤字報告ありがとうございます!




9月といえどもまだまだ日差しが強い。こんな時期にわざわざ昼休みに日当たり抜群の中庭に行くのは、せいぜい告白するために呼び出した生徒と、それに呼び出された生徒くらいのものである。こんなことを思っている今もまさに中庭では愛の告白がなされていた。


「学校祭で演奏してる姿を見て、一目惚れしました!私と付き合ってください!」


学校祭準備期間から学校祭終了直後のこの時期はカップル乱立シーズンである。普段関わらないようなクラスメイトと学校祭の準備で交流を深め、共同作業を行ううにいつの間にか恋に落ちてしまったり、今の告白のように学校祭で注目を集めていた人物にフォーリンラブしちゃったり。


「あー、えっと」


だが、この時期に勢いで付き合うカップルは長続きはしないという噂がまことしやかに囁かれているのもまた事実。学校祭という分厚いフィルターは異性を100倍素敵に見せてくれる、この現象を学祭マジック現象とでも名付けようか。


「わりぃな。その気持ちには応えられねぇ」

「そ、そうです、か、ぐすっうわーん!」


また、このように玉砕する場合もある。恐るべし、学校祭。畏るべし、リア充。


『行ったわね』

『行きましたね』

「おい、覗き魔ども。バレてんだよ、さっさと出て来い」


ギクリと体が強張る。ここは素直に出て謝るべきだろうか。告白現場覗き魔仲間の陽菜乃先輩に小声で意見を訊ねる。


『あの、西原先輩がバレてるって言ってるんですけど』

『後輩君、それは中二病というものよ。何もない虚空に向かって「俺には見えているぞ」的な痛い発言をしてしまうそれはそれは恐ろしい病気なの』

『中二病、怖っ』

「誰が中二病だ!俺はもう高三だし、とっくの昔に中二病なんて治ってるわ!!」


告白で呼び出されていた西原先輩がツッコミと共に元中二病患者だったこともカミングアウトしてきた。羞恥で西原先輩の顔が真っ赤に染まっている。


「あらごきげんよう、モテ男くん。こんな所で偶然ね」


OK、西原先輩の黒歴史カミングアウトはスルーの方向ですね。西原先輩も気を取り直しているし。よし。


「奇遇ですね、西原先輩」

「お、おう。……じゃねぇだろ!偶然?奇遇?んなわけあるか!」

「いやだって、廊下歩いてた後輩君見つけて、声かけたらその向こうにモテ男くんが見えたから一緒に話そうと思って」

「正確に言うと西原先輩を見つけた陽菜乃先輩が「絶対告白だ!見よう後輩君!」って言って無理やりベンチ裏まで引きずられたという顛末ですけど」

「何やってんだよ」

「「覗き」です」


ですです。


「で?なんか用事があって来たんじゃねーの?」


大きくため息を吐きながら西原先輩が陽菜乃先輩に問いかける。


「そうだった!来週の日曜に打ち上げやろうと思うんだけど、どうかな?」

「俺は別に構わないぜ」

「俺も大丈夫です」


作曲活動の方も半ば強制的にお休み中なのでかなり暇である。


「それじゃあ後輩君、お友達(ライバル)の皆にもそう伝えといてね」

「わかりました」


今、なんか変な副音声が聞こえたんだけど、気のせいだろうか。お友達じゃなくてライバルに聞こえたのは気のせいだろうか……。



そのまま教室に戻って打ち上げの話をすると、田中、香織、カンナの三人とも快諾。このとき田中が何か企んでる顔をしていたがツッコむのはもう疲れたので放置した。まぁ、さっきまでツッコんでたのは西原先輩だけど。





LHR(ロングホームルーム)の時間になり、教室に一段と気怠そうなヨシムーが入ってきた。


「あーやっとめんどうな学校祭が終わったと思ったら次は、」

「「「修学旅行!!!」」」


学生生活のメインイベントと言っても過言ではないイベントがやってきた。修学旅行と聞いて生徒たちの目がキラキラと輝きだした。ちょうど学校祭の熱が冷め始めて燃え尽きていたところに、投入された火薬に生徒たちは燃え上がる。


「ま、その前に中間考査あるけどな」

「上げて落とすのやめてくれー!」

「テストなんて消えてくれー!」


ヨシムーは火が付きそうな導火線を前にした小便小僧の如く、中間考査という名の火消しに入った。


「お前らうるせー。とりあえず今は修学旅行の話だ。とりあえず男女混合の4人班作れ」

「混合っすか!?それなら女子3人入れてハーレム状態に…!」

「おい、鈴木!女子がめっさ睨んでるからそれ以上は止めておけ!闇に葬られるぞ!」

「ひょわっ!」

「当たり前だが、女子2人、男子2人だからな」


小学校は途中退場、中学校はまるまる通っていなかったため、人生初の修学旅行に心が躍る。数々の高校アニメで修学旅行はばっちり予習済みだが、やはり実際とは違う部分もあるだろう。確か先輩から聞いた話では沖縄県に行くって、


「言い忘れていたが、今年は沖縄には行かないことになった」

「「「はぁぁぁああ!?!?!?」」」

「どういうことだよヨシムー!」


そういえば先輩から修学旅行で沖縄に行ったという話を聞いたとき、先輩の同級生が何かとんでもないことをやらかしたとか言っていたような。


「お前らの一個上の先輩の2人がやらかしてなぁ。まぁそいつら退学処分になったけど」


やはり、その先輩が原因だったのか。しかも退学処分って一体何をしたんだ。教室中に不満の声があふれる。ちょうど他の教室でも同じような説明がされたようで、同じく不満の声が聞こえる。


「沖縄じゃないならどこ行くんっすか?」

「自然豊かな、」

「「「豊かな?」」」

「福井県だ」


ザバーン!!と断崖絶壁の東尋坊が頭をよぎったのだった。


「「「福井県ってどこだっけ…?」」」

「あ、福井ってあれだよな。確か、でっかい寺がある……」

「え、修行?」

「修学旅行、略して修行だろうが」


というヨシムーの発言に教室に怒号が飛び交ったのは言うまでもない。俺は田中たちと行ければどこでも満足なので特に不満はない。行ったことないし、普通に楽しみである。


「なぁしばちゃん」

「なに?」


非常にやかましい教室の中で田中が話しかけてくる。


「福井ってたしか、カニが有名だよな?」

「そうだっけ?」

「そうだよ。で、俺カニが大好物なんだよ。超楽しみなんだけど」

「俺もだよ。カニは食べたことないけど」


カニはカニカマしか食べたことが無いので好きかどうかはわからない。ていうか、この歳でカニ食べたことある人の方が少ないのでは?


「はぁ!?カニ食べたことないとか人生半分損してるぞ!」

「いや、いくらなんでも言いすぎじゃない?」

「いーや!絶対損してるね!」


と教室の隅でカニ論争がひっそりと勃発していたのであった。ちなみにこの論争、香織の発言で片が付いた。


「私もカニ食べたことないなー」


だよね、食べたことないよね。



~第17回執筆中BGM紹介~

銀魂より「てめーらァァァ!!それでも銀魂ついてんのかァァァ!」作曲:Audio Highs様

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