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冷静に、理性的に



言いたいことは山ほどある。


けど、ここで俺が言いたいだけ言ったところで、何も変わらない。むしろ今よりも冬瑚にとって悪い状況になってしまうかもしれない。


兄としての本音を言わせてもらえば、ボロカスに泣かせてやりたいところだけど。


ここは冷静に、理性的に……。


秋人が捕まえていたリーダー格の少年の前にしゃがむ。少年の表情をここに来て初めて見たが、顔色が悪かった。それに、心なしか震えているような。


「兄貴に怯えてんだろ」

「いや、そうじゃなくて……」


抑えている必要はないと判断したのか、秋人が首根っこを掴んでいた手を離したが、その少年は逃げもせず、動揺に揺れる瞳である人物を見ていた。


この子、しゃくりあげる冬瑚を見て動揺……いや、後悔している、のか?


「「お前の兄ちゃんたち、父ちゃんを殺したんだろ?」だっけ」


ビクッとリーダー格の少年の肩が震えて、そろそろと彼の両目が俺を写した。


「泣くなんて、お、思わなかったんだ」

「そっか。君は冬瑚を泣かせたことに罪悪感を抱いているんだね」


罪悪感を抱ける子だっただけ、まだマシか。他の2人の子どもは、年上に怒られる、という嫌な体験からどう逃げ出そうかと必死に考えているからな。


「だって、いつもは泣いたことなんて、なかったのに」


いつも?こいつ、いつも冬瑚に心無い言葉をかけてたのか?


「いつもは、3人でやり返してきてたから今日も……」


どうやら香苗ちゃんと秋人の悪い影響が冬瑚にいっちゃったようだ。視線だけを動かして秋人を見ると、目を逸らされた。悪い影響を与えた自覚はあるって顔だな。


3人で、ということは冬瑚と津麦ちゃんとりょうちゃんだな。津麦ちゃんの兄の麻黄君が、あちゃ~とおでこに手を当てていた。どうやら自分の妹の暴れっぷりを麻黄君も初めて聞いたようだな。


「しばちゃんお兄ちゃん!大串はいっつも冬瑚にちょっかいかけてるんだ!「変な髪の色」とか「目の色がおかしい」とか!だから私らでやり返してたんだ!」


大串、は多分このリーダー格の少年の苗字だろうな。津麦ちゃんまで涙目になりながら、必死に教えてくれた。


なるほどつまりこのガキ、まじのまじでクソガキってわけだな!どうやってけちょんけちょんにしてやろ、……じゃなくて。冷静に、理性的に。


「冬瑚の髪が金色で、瞳が青いのは、俺たちのお母さんが金髪青目だからだよ。君がお母さんやお父さんと髪や瞳の色が同じように、ね」


眼鏡を外して、前髪をかき上げる。露わになった冬瑚と同じ青色の目で、少年を見据える。


「髪の色や目の色が違っても、傷つけられたら悲しいし痛いんだよ。君と同じように」


俺が小学生のときも、こういうことを言われた。そのたびに兄やエレナが庇ってくれてたっけ。


「同じ……」


大串少年が、この先他人を軽んじるような人間にならないように、この言葉が彼の心に深く刻まれることを願う。


俯いたまま動かなくなってしまった大串少年。今はこうして考える時間が必要だろう。残る2人は――。





――――――――――――――――――――





兄貴が意外と冷静にクソガキを諭していた。


あのリーダー格の奴はまだ見込みがあるな。反省の兆しが見えるし。


けれど、この取り巻き2人は救いようがねぇな。どうやったら自分たちに火の粉が降りかからないか、そればかり考えている。


こういう損得勘定で動くような人間に感情論は逆効果だ。それなら。


「これから、週刊誌で出た記事が全くの嘘だったって真実が明るみになる。今のままだと、これから先、嘘の情報に騙されて女の子をいじめたクソ野郎っていうレッテルが貼られることになるけど、それでいいのかお前ら」


どちらの側に着いた方が将来有益か。


「どちらでも、好きな方を選ぶと良い」

「「…」」




――――――――――――――――――――




「どちらでも、好きな方を選ぶと良い」

「「…」」


小学3年生に向かってなんてことを……。


秋人だからこそ言える言葉だろう。俺には到底言えそうにない言葉だ。だけど2人には響いているみたいだ。


さて、注目をかなり集めているこの状況、どうしよっかな~。

~執筆中BGM紹介~

「ともに」歌手・作曲:WANIMA様 作詞:KENTA様

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