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火花

感謝と謝罪コーナーと化したこの前書きですが、本日は勿論後者のほうですね。投稿遅れて、すみませんでしたぁぁ!!


目覚めたら自分の現在地がわからないってこと、本当にあるんだな。それでも、部屋の雰囲気や俺の腕に刺さっている点滴らしきものを見れば、場所の見当は付く。


「ここ病院?」

「そうだけど、兄貴学校で倒れたこと覚えてる?」

「倒れた?」


こめかみを指先で押しながら、倒れる前の記憶を辿っていく。えーっと、今日は学校祭でバンド演奏をして、時間稼ぎのために予定に無かったパルヒの曲をほぼぶっつけでやって、それで、えっと…?ここから先の記憶がない。俺はステージの上で倒れたのだろうか?


「秋人、俺が倒れたのって、」


ステージの上?と聞こうとしたときだった。


「おいっ!押すなって!」

「だって見えないんだもーん」

「あれ?後輩君こっち見てない?」

「え?なになに起きたの?」

「「「うわぁ!」」」


病室の扉の隙間からこそこそと覗いていた、西原先輩、為澤、陽菜乃先輩、高比良先輩がどしゃぁと倒れこんできた。それに軽く目を見張っていると、秋人がつかつかと4人に歩み寄る。


「兄がご迷惑をおかけしました」


と言って頭を下げる。弟に頭を下げさせるなんて、兄失格過ぎる。自己嫌悪で頭がいっぱいになりそうになるが、その前にすべきことがある。点滴があって頭をうまく下げることができないのがもどかしい。


「迷惑をかけてしまって、すみませんでした」


……沈黙が辛い。演奏が終わってぶっ倒れるとか迷惑以外の何だっていうんだ。


「迷惑は掛かってないぞ。倒れたのはステージ裏だったからな」


最初に沈黙を破ったのは西原先輩だった。みんなに潰されながらもサムズアップをしている。


「心配なら死ぬほどしたけど~」


為澤がぷっくりと頬を膨らませながら後に続いた。


「つーかお前らいつまで俺の上に乗ってんだ」

「ほんとすぐ目覚めて良かったよ」

「おい、はやくどけ重いん、痛てててっ!」


下敷きにされたままの西原先輩が文句を言うと、幼馴染である高比良先輩に頬をつねられていた。


「誰が重いですって?そんな心にもないことを言うのはこの口かな?うん?」

「しゅみましぇん、軽いです。羽根のように軽いです」


あ、あれ?てっきり怒られるかと思ったら、いつも通りの光景だ。そのことに心からほっとする。親しくなった人たちに嫌われてしまうのは、考えただけで辛い。


「兄貴、良かったな。それじゃあ僕、飲み物買ってくるから」


弟が気遣いの匠だった件について。世界中にうちの弟まじ神だと叫びたい。後で謝罪とお礼をたくさんしないとな。弟を守るどころか、守られてばかりである。





「聞いたけど、寝不足でぶっ倒れたんだって?」

「なんで寝不足?遠足前の幼稚園児でもぶっ倒れるまで寝不足にはならないだろ」

「何かしてたの?」


あ、寝不足で倒れたんだ。っていうか、やっぱりその質問来るよな。素直に「贅肉野郎に無茶ぶりされて作曲活動してました」なんて言えないし、どうしたものか。


「夏休みの課題が、終わらなくて」

「意外だな」

「パイセンは夏休みの最初の方に課題は終わらせておくタイプだと思ってたー」


合ってる。夏休みの最初の方に終わらせるタイプで合ってる。なかなかに鋭いな、為澤。


「ふ~ん、課題が終わらなくて、ねぇ?」


どうやら陽菜乃先輩は簡単には騙されてくれないらしい。泳ぎそうになる目を必死に動かないように固定し、動揺を悟られないように全身全霊を掛ける。


「そういうことにしといてあげる」


耳元でいきなり陽菜乃先輩の声が聞こえて驚いたが、それよりも今、耳に何か当たったような…。そろりと先輩を見ると、そこには満足気に自分の唇に手を当てる姿が。あ、やっぱりさっきの左耳に当たったしっとりと柔らかい感触って先輩のく、くちびる!?


ボフッ


「御子柴?顔が急に赤くなったぞ。どうした?一条に変なことでもされたのか?セクハラで訴えるか?」

「喜びこそすれ、なんで訴えるの!?」

「お前がモテない原因は、そういうとこだぞ、一条」

「はははっ」


『ヒストグラマー』が結成された目的である学校祭が終わっても、こうしていつも通りの会話がなされていることが妙に嬉しい。


「パイセンようやく笑ったね」

「おうおう先輩を見て笑うたぁいい度胸じゃねえか」

「ははっ、すみません」


幸せってこういうことをいうんだろうか。でも、このいつもの風景に一人足りない。


「あの、ザキさんは?」

「信はもうすぐ来ると思うんだけど…」


と、陽菜乃先輩が言ったときだった。


「呼びましたか?」


ザキさんがタイミングを見計らったかのように病室に入ってきた。そしてザキさんの後ろからは、


「しばちゃん!だいじょぶか?」

「智夏、生きてる?」

「智夏君、目が覚めて良かったよ~」


田中、カンナ、香織の順にぞろぞろと入ってきた。わりと広く感じた病室は来客でかなり手狭に。


「お~三大美女が揃い踏みなんて壮観だな」

「うわー眼福だー」


以前から気が合いそうだなと思っていた西原先輩と田中が早速意気投合している。


「でも、なんか火花散ってない?無言でバチバチやってない?」

「やっぱしばちゃん、恐ろしい子」


火花?バチバチ?どういう意味かわからず三大美女に目を向ける。


「「「なぁに?」」」

「いえ、ナンデモ」


御三方とも息ぴったりですね、とか言えない。美女の笑顔迫力ありすぎだろ。しかも誰も目が笑ってなかったよ。俺、もしかして嫌われてんのかな?


その後他愛もない話をしていると、お医者さんがやってきて、


「これだけ元気なら大丈夫だね」


と言って、点滴チューブを外してくれた。お騒がせしてすみません。陽菜乃先輩が別れ際に


「ここに居るメンバーで落ち着いたら打ち上げしましょうよ!」


と提案していたので、その日が非常に楽しみである。ちなみに秋人は三大美女に猫可愛がりされていた。





――――――――――――――――――――




病院にお世話になった翌日。満開アニメーションに加賀さんから呼び出しを受けて訪れていた。が、そこには香苗ちゃんとドリボの社長が。しかも贅肉野郎こと佐藤監督を縄でぐるぐると簀巻きにしていた。


「……え?」

「ほんっっっとうにすみませんでしたぁぁ!!」


ずしゃぁっとフローリングに額をこすりつけてスライディング土下座してくる加賀さん。なんかデジャブ。というか、


「これ、どういう状況ですか?」


至急、解説者を呼んでください!!!現場は非常にカオスです!!!

~第15回執筆中BGM紹介~

NARUTOより「形勢逆転」作曲:高梨康治様

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