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歴代最高得点



「全出場チームの演奏が終了しましたので、ただいまより審査時間に入ります……」


会場アナウンスが入り、審査員たちは用意された控室に入る。その間、誰も何も言わず、無言のまま部屋に入って各々椅子に座った。


机に置いてあったペットボトルのお茶を紙コップに注いで、一気に煽る。カラカラだった喉が潤って、怒涛の勢いで話し出した。


「『ヒストグラマー』ヤバない?」

「そうだな。ABC開催以来の逸材だ」

「ノーマークだったのが恥ずかしいよ」

「え、あの曲って智夏が弾いてた……あのマスクのキーボードの人って……え、え?」

「あのバンドのボーカルの子、ひーちゃんでしたっけ?すごい歌唱力でしたね」

「えぇ。デビュー前からあの実力とは」

「僕たちはいま、世紀の大発見をしてしまったのかもしれません」

「そんな大げさな……とも言い切れないな」

「みなさん、驚きはわかりますが、審査に入りますよ」


横浜真澄はこのとき平等な審査をしようと心がけていた。もしかしたらあの『ヒストグラマー』のキーボードのしばちゃんは智夏かもしれない。でも、それはそれ、これはこれ。知り合いだったとしても審査に影響させてはならない。平等に、全グループを平等に審査せねば…。


「…」


一応審査するにあたっての項目があって、5項目各5点ずつ、最高25点を審査員1人であたえることができる、のだが…。


『ヒストグラマー』の得点が25点になっちまったぜぃ。


MAXだよ。最高得点あげちゃったよ。どうしよう。弟みたいに可愛がってるからって、満点あげちゃっていいのかよ。いや、身内贔屓無しでも満点な演奏だったからしょうがなくね。これは極めて公平で平等な点数だ。うん、間違いない。……自信なくなってきた。


他の審査員たちの点数は……


タブレット上に次々と他の審査員たちの点数が表示されていく。


「やっぱりこぉなるよなー」


ほとんどの審査員たちが満点もしくはそれに近い点数を『ヒストグラマー』につけていた。


「今年のABC優勝は―――」





――――――――――――――――





「ただいまー!!!」


なぜか会場で観客席最前列にいた宝城さんに帰りも送ってもらい、家に駆けこんだ。家の前に吉村先生の車が停まっていたから、みんな帰ってきていると思うけど…。


「おぅ、おかえり~」

「先生!みんなはどうでした?」


吉村先生に3人を病院に連れて行ってもらったから、その結果がずっと心配だった。


「安静にしてろってさ。薬もきちんともらったし、大丈夫だ」

「そう、ですか…」


大丈夫、その一言で安心できた。


力が一気に抜けて、へなへなとリビングに入ると、自室で寝ていると思っていた香苗ちゃん、秋人、冬瑚がいた。


「え、みんなどうして…。寝てないと」

「これだけ、言いたくてね~」

「僕ら、ABCの中継見てたんだ」

「なつに~」

「「「優勝おめでとう」」」


み、みんな…!


「ありがとう!」


今の今までABC歴代最高得点で優勝したと聞かされても自覚は無かったけど、ようやく優勝した実感が湧いてきた。


「もうダメ、旭、部屋まで連れてって…」

「だから言ったじゃねぇか。ったく、」


3人の中で一番重症だった香苗ちゃんが吉村先生に助けを求めた。香苗ちゃんと吉村先生は高校の同級生でバンドも組んでいたらしい。お似合いの2人だよな、まったく。早くくっついちゃえばいいのに、俺が高校卒業するまではこの関係は変えないんだって。変に義理堅いというか…。


「お姫様だっこして~」

「あぁ?なんで俺がお姫様抱っこなんてしなきゃいけない」


とか文句言いつつお姫様抱っこしてあげるんだよなぁ。優しいですなぁ。


「なつに~。冬瑚も抱っこ」


大人たちの甘々な雰囲気にニマニマしていると、冬瑚が俺の手を握って可愛いおねだりをしてきた。


「お姫様のお願いとあれば」


すぐさま冬瑚を抱っこする。あぁ癒される。


「秋人も抱っこするか?」

「僕は自分で部屋に行ける」


スタスタと歩いて行ってしまった。秋人は相変わらず秋人でした。

~執筆中BGM紹介~

PSYCHO-PASS サイコパスより「All Alone With You」歌手:EGOIST様 作詞・作曲:ryo様

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