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先の話

2月も今日で最後ですね。3月からもゆるっと頑張りましょう!



「ってな感じでやることが目の前に山積みなんだよね。でも、自分で決めたことだし、やりがいもあるから最後まできちんとやり遂げたいんだ」

「しばちゃん、それ過労死フラグだぞ」

「Oh…」


マリヤのこと以外で、現状のやるべきことを田中に教えると、神妙な顔で宣告されてしまった。


「でも睡眠と食事はしっかり取ってるんだろ?肌ツヤは良いし。てか良すぎじゃね?」


ぺたぺたと頬を触られ、引っ張られる。


「香苗ちゃんとドリボの社長が化粧水くれた」

「どの化粧水使ってるか教えてくれー」

「名前なんだっけな…」


いまや男子が化粧水の話で盛り上がっても白い目で見られない。最低限の肌ケアは思春期男子の必須科目となりつつある。


「それで、結局『ヒストグラマー』での名前はどうなったんだよ?」


そういえばその話をしていた途中で脱線しまくったんだったと思い出す。


「しばちゃん」

「へぁ?」

「だから、『しばちゃん』で活動する」

「まじで?」

「まじです」

「名付け親じゃん、俺」

「田中が名付け親っていうのもなんか癪に障るけど」

「なんでだよコラ」

「冗談だよコラ」


サウンドクリエイターとして本名の『御子柴智夏』で活動しているため、本名は使えない。最近めっきり使っていないけど一時期画家の真似事をしてお金を稼いでいたときに使っていた雅号が『夏』だから、そっちも使えない。全く違う名前にすると、呼ばれた時に反応できない。


ならばどうするかと悩んだ結果、田中と田中一族しか呼ばない『しばちゃん』にすることに決めた次第である。


「他のメンバーもしばちゃんみたく芸名にするのか?」

「天馬先輩とすみれ先輩、虎子の3人は本名で活動、陽菜乃先輩は『ひーちゃん』だ」

「『ひーちゃん』!」

「音楽活動を唯一支持してくれたおじいちゃんおばあちゃんにそう呼ばれてるから、『ひーちゃん』にしたんだって言ってた」

「想像以上にしっかりした理由だな」


俺も最初に聞いたときは適当に決めたのかと思ったよ。




現在、俺と田中は複数の大学に見学に行っている。進学先の候補に入れた大学と、先輩たちから聞いた評判の良い大学を田中や他のやつらと最近見て回っているのだ。


これまで見学に行った大学で「コレだ!」とビビッときた学校には巡り合っていない。大学ってそもそも直感で決めるものじゃないか。


「田中は経営が学べる大学に行きたいんだっけ?」

「経営を学べる国立か公立の大学な」


入学料やら授業料やらを考えると、私立より国立や公立の方が負担は少ない。田中もそこら辺のお金は自力で負担しようと考えているらしい。ご両親は「お金のことは気にせず行きたい大学に行きなさい」と言ってくれるらしいが、田中は幼い弟妹達にそのお金を回してくれと言ったとか。


「田中って親孝行者というか、兄バカというか」

「なんだよ。褒めてんのかディスってんのかどっちだ」

「褒めてんだよ。田中は将来を見据えててすごいなーって」

「俺から見たら、その年ですでに家計を支えてる方がすごいけどな」

「いやいやそっちこそ」

「いんにゃそっちこそ」


この後しばらく褒め合い合戦が続き、きりがないなとどちらからともなく止めた。


「しばちゃんさ……音楽の道には進まないのか?」


予定していた大学を全て見て回り、近くのファストフード店に入って夕食を食べていると、田中がポテトを食べながら聞いてきた。


口の中に残っていたハンバーガーを飲み込んでから、質問に質問を返す。


「それは高校を卒業して音楽を学ぶってこと?それとも音楽家として働くってこと?」

「どっちも……っていうか、それは分けて考えなくてもいいんじゃないか」

「それはどういう…?」

「音楽を学びながら音楽家として働くっていう道もあるし、音楽家として活動しながら音楽を学ぶ道もある」


前者と後者は似て非なるもの。でも、どっちも俺の選択肢にはなかった道だ。


「いろんな人と関わりたいから、いろんな人が集まる大学に行くっていうのはわかる。でも、他にも道はたくさんあるんだ。自分で視野を狭めてないか?」


視野が狭い、これは俺が今まで直面してきた俺自身の課題。世界を広く見ることができない、自分の限界を低く見積もる、少し先の成長した自分の姿が想像できない。


でも、課題を課題として認識できたなら、それは一歩前進。


「視野を広く……世界進出とか?」

「急にでかく出たな。ま、いいんじゃね?世界を旅しながらいろんな人と出会って色んな曲を作る、とかさ。大学に行く以外にも、いろんな人と出会う方法はいくらでもあるってこった」

「もしかして田中って人生2週目とか?」

「田中Tueeeee!できるかな?」

「異世界ならともかく現実世界ではちょっと厳しいかも」


この日の田中との会話が、『御子柴智夏』の今後の人生を大きく変えることになる。が、今はまだ先の話。

~執筆中BGM紹介~

琴浦さんより「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」歌手:中島愛様 作詞:西直紀様 作曲:hirao様

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