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おまけ枠



サブボーカルオーディションで歌う課題曲は、明日動画を撮る予定のABCの予選の曲。


部分的に陽菜乃先輩にも歌ってもらい、歌声の相性も確かめる。


背番号がどうたらこうたら言っていた天馬先輩の歌声は、なかなかのものだった。陽菜乃先輩の歌声には及ばないにしても、サブボーカルとしてなら十分にやっていけるくらいの。


「やっぱベースを弾きながら歌うってカッケェな!」


それにはまったく同意するし、天馬先輩の姿もなかなか様になっていたが、それを自分で言うかね。


でも、陽菜乃先輩のサブボーカルとして考えると、天馬先輩の声は相性があまりよくない。陽菜乃先輩以外の審査員たちも、俺と同じことを思っているようだった。


「実力もあるけど相性がねー。こればっかりはどうにも…」

「そうなの?声にも相性とかあるの?」

「2人でハモったときに心地良い音程になるかどうかも重要なポイントですよ」

「ぽへぇ」


なんとまぁ、気の抜けるお返事ですこと。


こっちの事情など気にも留めず余韻に浸っている天馬先輩をぐいぐいと端に追いやって、すみれ先輩が即席ステージに立つ。


「今週のラッキーナンバー6番!高比良すみれ、参る!」


ラッキーナンバーなんてあるんだ、ぷへぇ。朝のニュース番組の占いコーナーは冬瑚と秋人がよく見てるけど、俺と香苗ちゃんは全然見ない。占いを信じていないというわけではなく、順位が下だったら落ち込むため。朝から落ち込んで一日をスタートさせないためにあえて見ないのだ。



―――数分後。


すみれ先輩が歌い終わり、拳を天に突き上げた。きっと彼女の目にはアリーナが見えているのだろう。


歌の実力は天馬先輩の方が上。だけど相性はすみれ先輩の方が上。なるほど、これは難しい。


総合的に見れば天馬先輩とすみれ先輩が拮抗している。


「ラストを飾るのは~、朝ごはんに魚肉ソーセージを3本食べた為澤虎子だ~!!」


3人目は魚肉ソーセージの数だった。背番号にラッキーナンバーに魚肉ソーセージに、個性が爆発しすぎな件。


虎子は先輩たちに向けた卒業ライブのときにボーカルをしていただけあって実力はある。



―――さらに数分後。


「うにゃーーー!!!なんたる不覚!」


歌い終えた直後に虎子のこの悲鳴である。歌唱力は3人の中でトップクラス。でも、致命的な欠点が今回発覚してしまった。


「見事につられてたわね」


陽菜乃先輩でもわかった欠点。それは陽菜乃先輩の歌声に力がありすぎてメインボーカルの音階につられてしまうのだ。まるでブラックホールに吸い込まれるかのように引き寄せられていた。


「気持ちはわかるぜ…」

「怪獣と人間が仲良くタップダンスを踊るようなものだもん。そりゃ無理だよ」

「誰が怪獣よ」


すみれ先輩のわかるようでわからない例えに陽菜乃先輩がツッコむ。


陽菜乃先輩の歌声につられてしまうのは、今後の努力次第でどうとでもなる。ただ、今日明日でどうにかなりそうな人は…


「じゃあ、おまけの後輩君ね」


おまけって…。他の人たちもノリノリで俺が歌うのを待っているようで、キーボードを囲むようにしてすでに座っていた。


しょうがない、やりますか!俺の歌声に酔いしれな(笑)


「今日は13系統のバスに乗って来ました。御子柴智夏です。おまけに歌います」



―――さらにさらに数分後。


「おぎゃー!!!」

「わー、天馬先輩が産まれたー」


歌い終わるなり産まれた天馬先輩や死屍累々の先輩たち。


「とりあえず予選のサブボーカルは決まりね」

「神様!こいつに才能与えまくりじゃないですか!!」

「こんなの勝てっこないー!」


背中にコアラのように飛びついてくる後輩。


「うわぁーん!パイセンのばか!すごい!うまい!」


冷静に分析する水野さん。


「歌声も歌唱力も相性もバッチリだね!」


あれれ?おっかしーぞー?


「俺っておまけのはずじゃ…」

「あんだけの実力を腐らせておくはずがねぇだろコンチクショー!」


即席サブボーカルオーディションの結果、選ばれたのはおまけ枠の俺でした……。


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