虎子なのにヒョウ柄
前回、ブクマ登録祝100件と喜んでいたのですが、いつの間にやらアクセス数がドエライことに。日間ランキング入りできたのも、読者の皆様のおかげです。これからも応援よろしくお願いします!
日焼けを知らない真っ白な肌、清楚さを引き立たせる王道の白ビキニ、動くたびにその存在を激しく主張してくる双丘。
「よくお似合いですよ、会長」
「50点」
もっと褒めてよ~と会長が迫ってくるが、高比良先輩のときは俺の頭蓋骨が掛かっていたため恥じらいもなく誉め言葉が出てきた。しかし、命の危機が去った今はただの高校2年生に女性を褒めるという行為は非常にハードルが高い。あと、不用意に近づかないでほしい、切実に。
「御子柴パイセン、虎子も褒めてー」
三大美女の一人、双丘のカイチョー・・・怒られそうだから辞めよ・・・から目をそらし、為澤の方を見る。
虎子なのにヒョウ柄?虎柄じゃないんだ。
「第一印象がそれはヒドイ」
「あ、悪い」
あれ?声に出てたかな?最近人の心読む人多すぎない?プライバシーのへったくれもないな。
改めて為澤に向き直る。健康的に焼けた肌によく似合う黒のビキニ、オフショルダーで露出した華奢な肩、ほどよい大きさのおっ
「急に黙ってどったの?」
「え!?や、なんでもない!」
あっぶねぇ、まるで吸い寄せられるかのように視線と思考が。
「ヒョウ柄が良く似合ってるよ、為澤」
「えへへ、ありがとー」
高比良先輩も為澤も三大美女にこそ選ばれてはいないが、相当可愛い。うちの高校レベル高すぎだろ。三大美女の一人と可愛い女子2人に囲まれて海に来ていると男子生徒に知られたら、闇討ちされてしまう。
「ところで御子柴パイセン、それ暑くないの?」
為澤が言う「それ」とは俺が海パンの上に来ている薄手のパーカーのことである。しかも上の方までチャックを閉めているので傍から見たら、暑そうなのだろう。というか実際暑い。
「よーし虎子!準備運動するよ!!」
「へ?会長ー?」
いきなり横から現れた会長に為澤はずるずると回収された。この場では会長と山崎先輩が俺が虐待を受けていたことを知っている。このパーカーは虐待されていたときの傷跡を隠すために着ている。多分さっきのは会長なりに気を使ってくれたのだろう。
傷跡が薄くなってきたとはいえ、それなりに目立つものである。着替えた時に西原先輩も見たはずだが、何も言わなかった。その話題に触れる素振りすらない。ありがたいといえばありがたいが。
いつの間にか高比良先輩と西原先輩は先に海に入っており、会長と為澤は変な運動をしている。浜辺に残っているのはいつの間にか俺と山崎先輩の二人だけだった。
「行かなくていいんですか?」
「はい。少し、御子柴様と話がしたくて」
「呼び捨てでいいですよ」
「では、智夏と」
いきなり馴れ馴れしいな。別にいいけれども。
真剣な顔で話し出す山崎先輩に少し気圧されながら話を聞く。
「智夏のことを調べたのも、それを全てお嬢様に報告したのも全て僕です」
「それを俺に言ってどうしろというんですか?謝罪は既に受け取ったはずですが」
思わず棘のある言い方をしてしまう。
「ただの自己満足です」
キリッとした表情で言い切った姿に思わず笑ってしまう。
「それじゃあ、謝罪を受け入れます。その代わり」
「なんでしょう?法に触れない範囲でお願いします」
「いや、そんなに危ないことじゃないので」
「山崎先輩って長いので、ザキさんって呼んでもいいですか?」
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僕の家は代々一条家の方にお仕えしている。父も母も兄も、そして僕も。僕がお仕えするのは一条家の同い年の陽菜乃お嬢様。昔からお転婆で、僕がブレーキ役になる、というより一緒にイタズラをやっては一緒に怒られていた。
そんなお嬢様が高校は私立の有名なお嬢様学校ではなく、公立の女学校に行きたいと言い出したのは、公立高校の入試を受けた翌日のこと。一条家は基本放任主義なので、簡単に許可は下りた。ちなみに俺もお嬢様と一緒に黙って受験した。後からしこたま怒られた。
お嬢様に公立高校を受験した理由を聞いたところ、
「学校祭でバンドをしてみたい」
と言ってあっけらかんと笑っていた。
何事にも妥協を許さないお嬢様なので、バンドのメンバー探しにもかなり苦労した。入学前から学生の情報をこっそり集め、あらかじめ目を付けていた生徒に片っ端からスカウトしていくお嬢様。結局納得のいくメンバーが見つかったころには高校最後の夏直前だった。
最後の5人目のメンバーに選ばれたのは完全にノーマークの男子生徒だった。お嬢様に命じられ、彼のコンクールの受賞歴を調べていると、かなりの賞を受賞していることが分かった。しかしそこでおかしな点に気付く。ある年を境にぱったりと受賞歴が無くなっているのだ。しかも受賞歴どころかコンクールに出場した形跡さえないときた。
気になって調べていくうちにわかってきたのは、コンクールに出場しなくなった年に、彼の兄が事故で亡くなっているということ。そして、学校にも行けずに家に閉じ込められ、実の父親から虐待を受けていたことだった。少々ためらったが、すべてをお嬢様に伝えた。いつか彼に謝ろうと決意しながら。
「山崎先輩って長いので、ザキさんって呼んでもいいですか?」
思いがけない言葉に拍子抜けしてしまった。
「ザキさんでもザッキーでもザコでも構いませんよ」
「いや、ザコはおかしいでしょ」
そうツッコんだ彼は、智夏は楽しそうに笑っていた。
「おーい、そこで休んでる二人ともー!女子対男子でビーチバレーやるわよー!」
可愛い後輩君は喜んでくれるかしら、と楽しそうに選んでいた水着を着ているお嬢様がこちらに向かって手を振っている。
「女子対男子ってかなり不公平じゃないですか?」
「確かに、ハンデがあってもいいですね、男子に」
「え!?男子に!?」
智夏は一体何に驚いているのだろうか。
「古来より女性は男性より強いものですよ」
「そうは言っても・・・」
「それに僕は運動が得意ではありません」
「それは俺も同じです」
運動神経超抜群女子3人対インドア男子二人&運動神経抜群男子一人の戦い。もはや女子対西原様の戦いである。
「それじゃあ行きましょうか、ザキさん」
「そうですね」
新しい友の、そして未来のお嬢様の旦那様になるかもしれない彼の背中を追うのだった。
・・・結果は言わずもがな、惨敗でした。
~第10回執筆中BGM紹介~
暁のヨナより「暁のヨナShort ver./Akatsuki-no-YONA Short ver.」作曲:梁邦彦様
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