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課題曲


アマチュアバンドコンテスト、通称ABCに出場することが決定し、水野さんが滑らかに話を進めていく。


「毎年、予選は主催が指定する曲を演奏して、それを動画にして送るんだ。えーと、資料4ページ目を開いてください」


なんだろう、一時的にでも社会人になった気分だ。これぞ”大人”って感じ。まぁ、こう思ってる時点で自分が子供だって言ってるようなもんだけどな。


「これが今年の課題曲リストです。さてヒストグラマーのみんな、君らはどの曲を選ぶ?」


リストに載っている曲は、ガッチガチのロックの王道から最新のアニソンまで、広く網羅しているという印象だ。


ザキさんが資料から顔を上げて、水野さんに質問する。


「他の出場者がどの曲を選んだかはわかりますか?」

「いや、曲どころか予選の動画すら見せてもらえないよ。ただし、予選を突破した10組のバンドが送った動画は一時的にYeah!Tubeにアップされるよ」


つまり、他の出場者と課題曲が被らないようにすることも、逆に同じ曲を選んで勝負することも難しい。


そういえば、さっき水野さんは「予選()」って言ってたな。


「水野さん、本選は課題曲じゃないんですか?」

「そうだ。本選はそれぞれのバンドのオリジナル曲で勝負する」

「オリジナル曲……あ!この前作ったホワイトデーの曲ですか?」


どおりでここ数か月間、あの曲を俺たちに練習させてたわけだ。水野さんは最初からABCに出場させる気だったんだな。


「予選前からもう本選のことを考えるなんて、余裕だねぇ?」


水野さんが揶揄(からか)うように俺を見てきた。そんなにおかしなことを言っただろうか?


「過信でも慢心でもなく、事実ですから」

「虎子もそ~おも~う!」

「「「…」」」


シーン、と沈黙ができた。え、なんかまずいこと言ったか!?


「だ、だってほら、あの、俺たち粗削りな部分もありますけど、改善すべき点もたくさんありますけど!音楽で一番大切な、聴く人の心を動かす、という点において俺たちはプロのそれにも引けを取らないですし!他のバンドがどのくらいの実力を持っているのかはわかりませんけども!このメンバーなら大丈夫だと、」

「はーいストップストップー!」


しどろもどろになりながら言い訳のように理由を言っていたら、途中ですみれ先輩に止められてしまった。


「いや~わかったつもりでいたけど、やっぱりあたしらの後輩はすごいね~」

「私たち先輩が弱気になってどうするって話よ」

「智夏~お前、カッコいいじゃねぇか!」


あ、いつもの天馬先輩だ。わしゃわしゃと頭を撫でられながら、空元気でも、元気そうな姿にホッとする。


わしゃわしゃした後に、軽く頭をぽん、と叩かれる。


この乱暴さと優しさのブレンドに平和を感じる…。


「本選はホワイトデーの曲を演奏するとして、予選の曲をどうする?」

「やっぱ、全員が知ってる曲が良いよな」

「知ってる曲の横に丸を書いてこう」


かきかきかき…


「せーので出そう」

「わかった!いっせーの、」

「いっせーのじゃねぇよ!」

「じゃあ1、2、3、ハイで出そう」

「ハイで出すんですか?」

「3で出してハイで揃えるの?」

「え?」

「えぇ?」

「はい、じゃあ出してください」

「「「はーい」」」


Angel Beats!より「Alchemy」歌手:Girls Dead Monster様 作詞・作曲:Jun Maeda様

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