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アマチュアバンドコンテスト

今回から新章「ABC編」開幕です!



高校2年生の夏。当時3年生だった一条陽菜乃先輩、西原天馬先輩、高比良すみれ先輩と1年生だった為澤虎子、そして俺の5人で『ヒストグラマー』というバンドを結成した。


バンドは先輩たちの卒業と共に解散……はせず、なんとレコード会社の水野さんからオファーを受けて『ヒストグラマー』がデビューすることになったのだ。デビューと言っても、バンドメンバー全員が学生であるため、将来的にデビューをする、という非常に曖昧な話ではある。


高校生活最後の球技大会、そして中間テストを終えて数か月ぶりにバンドメンバー全員が集結していた。もちろん陽菜乃先輩の従者である山崎(ザキ)さんも来ている。


俺たちがいまいる場所は、デビューの話をくれたレコード会社、『リングレコード』の会議室である。


この部屋に行きつくまでに所属の歌手やグループ、バンドなどのポスターがびっしりと貼られていて、圧倒された。いつか自分たちのポスターも並ぶかもしれないと考えると、胸が高鳴った。


久しぶりに全員集まったことだし、それぞれに話したいこともあるだろう。特に女性陣たちはここに来る道すがら、途切れることなく話を続けていた。女性のおしゃべりってなんであんなに話があちこちに飛ぶんだろう。後ろで聞いててずっと不思議だった。


閑話休題。


俺たちヒストグラマーを見出してくれた水野さんが俺たち全員に資料を配り、とある提案をした。


「アマチュアバンドコンテスト、通称”ABC”に出てみないか?」


ABC…?聞いたまんま、アマチュアバンドのコンテストであろうことは想像がつく。これについて知らなかったのはどうやら俺だけだったらしく、他のメンバーたちは「あ~あのABCね」みたいな表情だ。


「君たちの腕試しができるいい機会だし、優勝すれば名が売れるし賞金も出る。どうだい?」


もらった資料をぺらりとめくる。


ABCとは、毎年、レコード会社など音楽関係の会社が合同で主催しているプロの道への登竜門的なコンテストである。


予選は動画審査。ここで20組まで絞られる。選ばれた20組だけがライブ会場で審査を受けられるという。そして熾烈な戦いを勝ち抜いたバンド1組には、優勝賞金100万円が与えられる、と。


俺たちの中で真っ先に自分の意見を出したのは、ドラム担当の最年少の虎子だった。


「虎子はね~、ABCに出た~い!」


ハイハイハイ!と前のめりで手を挙げている。次に手を挙げたのが見ない間に少し痩せてしまった気がする、ベース担当の天馬先輩だった。


「俺も。俺たちの実力を試してみたいんだ」


やっぱり天馬先輩、元気ないよなぁ…。学校で何かあったのだろうか?天馬先輩と幼馴染のすみれ先輩なら何か知っていないかと目を向けると「どした?」と聞かれてしまった。すみれ先輩、もしかして天馬先輩に元気がないことに気付いていないのか?いや、それは無いか。だってあのすみれ先輩だもんな。


「そうだね。あたしも出てみたいかな」


ほんの一瞬、すみれ先輩が天馬先輩の方を見た。あの顔はやっぱり、気づいてて黙っているに違いない。


「陽菜乃パイセンと智夏パイセンはー?」

「みんなとまた演奏できるなら、ABCに参加したい、けど…」

「そうね、私もそうなんだけど…」


虎子に話を振られて、言い淀む。多分、陽菜乃先輩も俺と同じ理由ですぐに返事ができなかったのだろう。


「「顔出しはちょっと…」」


遠慮したいと言いますか、NGと言いますか。


俺はドリボの社長たちと相談したうえで、顔出しNGに。陽菜乃先輩はご実家や親戚たちにバレるのがあまりよろしくないという理由だ。


水を差したようでめちゃ申し訳ないのだが、どうしてもこれは譲れない。しかし、水野さんが「そのためにこれを作ってもらったんだ~」と上機嫌で足元の紙袋からなにかを出してきた。


「マスク…?」

「そう。顔を隠すためのね。御子柴君はサウンドクリエイターとして出るときは顔の上半分を隠しているだろう?それで、ドリボと相談した結果、バンドで活動する時は顔の下半分、口元を隠そうじゃないかという話になってね!」


『御子柴智夏』として顔の下半分、そして『ヒストグラマー』として顔の上半分を晒す。合体するとあら不思議、素顔が露わになるねー。…って、俺は合体おもちゃか!


でもまぁ、前髪で目元は隠れるし、口元だけ隠しとけばどうとでもなるか。


「水野さん、私は歌いますからマスクは邪魔になってしまいます」

「一条さんは御子柴君とは隠す場所が逆だよ。はい、これ」


陽菜乃先輩が受け取ったのは仮面舞踏会で貴族たちが使っていそうな、優雅なデザインの鼻から上を隠すタイプの仮面だった。


俺のマスクとの落差がすごいな。俺のは市販、陽菜乃先輩のは絶対特注だろ。犯人は絶対あの人だ。


「デザインは僕が出しました」


ザキさんがドヤ顔で言い放つ。なるほどやっぱり特注なわけですね。陽菜乃先輩の顔面にジャストフィットしてますもんね。


「これで顔出しの件は解決しましたね。では、改めて聞きます。ABCにエントリーしますか?」

「「します!」」


というわけで、ヒストグラマー、再始動!


~執筆中BGM紹介~

中二病でも恋がしたい!より「Sparkling Daydream」歌手・作詞・作曲:ZAQ様

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