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「バナナ」と「ゴリラ」

今年最後の投稿です。投稿を始めてから2回目の年越しですが、時が経つのは早いですね。

今年1年、お世話になりましたー!!



「A組に勝利を!」


叫びながら突っ込んで行った鈴木だが、単身で敵中に飛び込んでもしっぽを取られるだけだ。


「って、相手も思ってるんだろうなぁ」


俺の心を読んだかのようなセリフを言いながら、井村がしっぽの位置を調整しつつやって来た。


「もしかして、なにか作戦があって鈴木は1人で突撃した、」

「いや、ノープランだぞ。あいつ学年主席のくせにアホだから」

「頭良いのにな…」


視線を鈴木に戻すと、ちょうど情けない悲鳴をあげながら逃げまどっている最中だった。


「鈴木のやつ、器用に逃げてるな。ハハッ」

「なんか、こっち見てるな」

「いやいや、御子柴の気のせいだろ」

「え?でも、こっち向かってない?」

「いやいやいや、いや?」


ジグザグと蛇行してはいるが、確実にこちらに向かって近づいてきている。……仲良く敵を引き連れて、だが。


「井村~!御子柴~!たすけてー!」


キラッキラの良い笑顔で鈴木が正面から向かってくるではないか。


「こっち来るなアホ―!!」

「敵を引き連れてきてどうするんだよ!!」


鈴木を追うC組男子2人、俺と井村を追う鈴木、逃げる俺たち………なんだこの構図は。


敵のいない方に走って逃げていると、小さな影が目の端を走り抜けていった。


「隙だらけ」


小さな影は、俺たちを追っていたC組男子2人の背後に素早く回り込むと、両手でしっぽを抜き取った。


「な、んだと!?…ぐはぁ!」

「いつの間に背後に!…へぶぅ!」


名演技だ!……じゃなくて。あの小さな影は!


「「「小鳥遊(たかなし)さん!」」」


自分より低身長の子が大好きなド変態の小鳥遊さんだ!


抜き取ったしっぽを2本、鞭のように床に叩きつけながら、小鳥遊さんが言った。


「おや?助けてあげたのに()が高くないかい、君たち」

「「「はい!すみません!ありがとうございます!!」」」


3人で体育館に正座して、小鳥遊さんを見上げる。


「ねぇ、このタオル……じゃなくて、しっぽはどうすればいいの?」


……どうするんだろう?しっぽを増やす、とか?しっぽが3本あったら、邪魔だな。


悩んでいると、鈴木が珍しくまともな案を出した。


「しっぽは敗者に返したらどうだ?」

「わかった」


まだ床に倒れたままの敵さんたちに近づいていき、奪ったタオルを顔面にかけた。そのまま両手を合わせて―――


「安らかに眠れ」

「なんというタオルの返し方」


いつの間にか立っていた鈴木と井村がタオルを被せられた敵2人の足を持って場外へ引きずり出していく。


「しっぽ取りゲームって、こんなに過酷なゲームだったんだ…」

「それはちょっと違うかもね」

「わっ!びっくりした…」


ひょっこりと後ろから現れたのは、香織だった。俺の呟きに苦笑いをしている。


「普通のしっぽ取りゲームはあんな感じだよ。ほら見て」


ち、近くないですか!?俺の腕に肩がぶつかっておりますよ!?コミュ力の高い女子ほどボディタッチが多い、というのは俺調べ。


「み、見てって…」


至近距離で女子と話す経験なんて、彩歌さんとでもあまりないのに。こういうときはどうすればいいのかわからない。


さりげなーく距離を取りながら、香織が示した方を見る。


今まさにエレナがチーターのようにしっぽを3連続で奪い取っていた。しっぽを取られた女子たちは残念がりながら、エレナから取られたしっぽを受け取り、場外へそのまま出て行った。


「エレナもこれが初めてのしっぽ取りゲームのはずなのに…」


漂う雰囲気は既に歴戦の猛者だ。


「花村さんと楽しそうに話しやがって…」

「A組男子、くたばれぇ!」


智夏ノ前ニ、C組ノ男子2人ガ、現レタ!


「やばっ。香織、逃げるぞ!」

「う、うん!」


咄嗟に手を掴んで走り出した。後ろを見ると、殺気の籠った視線を飛ばしながら追いかけてくるゾンビがいた。


これは危ない。俺の命が。


命の危機を前にして、恥も外聞も二の次三の次。


「エレナー!!助けてくれー!!!」

「合点しゅーち!」

「それを言うなら合点承知!」


エレナがさすがの反応で応じてくれたが、彼女がこちらに追いつく前に、C組ゾンビが追いつきそうだ。


これはもう、あの言ってみたいセリフナンバー1を言うしかない!


「行ってくれ!ここは俺が死守する!」

「智夏君…!」


フッ、特大死亡フラグ、建設完了。


「遺言はまだ早いぜ、しばちゃん!」

「私のチーちゃんとかおちゃんに何しとんじゃー!!」


比較的近くにいた田中と、人外のスピードで追いついたエレナがゾンビの背後に回っていた。


「…!田中、エレナ!」


それからは全部がスローモーションに見えた。


2人がしっぽを勢いよく取り、その勢いが強すぎて、しっぽと一緒にズボンまで引っ張られて、それで…。


「「い、いや~ん」」


バナナ柄のパンツとゴリラ柄のパンツがお目見えした…。


「…………勝者、A組」


この2人のあだ名が、卒業まで「バナナ」と「ゴリラ」だったのは言うまでもない。


~執筆中BGM紹介~

ハクメイとミコチより「Harvest Moon Night」歌手:ミコチ(下地紫野)様/コンジュ(悠木碧)様 作詞・作曲:ミト(クラムボン)様


来年も本作とダメ作者をよろしくお願いします!!良いお年を~!!

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