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プロモーションビデオ

寒くなってまいりましたね。みなさまお体にお気を付けてください!



アニメ『四界戦争』は四つの制作会社が携わるビッグプロジェクトだ。タイトル通り、四つの世界の住人たちがバトルを繰り広げていく物語である。


四つの制作会社、というだけでも訳が分からないくらいにすごいのだが、驚くのはまだ早い。なんと、主人公も世界ごとに1人ずつの計4人。制作会社が4社なので世界ごとに画風も全然違うし、音楽も4人の作曲者がこれまた世界ごとに分かれて作っているのだ。


これをビッグといわずになんという。


なんでもかんでも世界ごとに分かれているもんだから、PV(プロモーションビデオ)ももちろん4世界分、同時に配信されている。


「あ、そうだ。しばちゃん病院行かなくてもへーきだったんだな?」

「へーきへーき。エレナに蹴られたときの方がダメージ大きいから」


俺のために待っていてくれていたはずなのだが、『四界戦争』のPVに夢中になっていたようだ。俺が作曲した曲が使われているPVに夢中になってくれて嬉しいのだが、心配を最初にしてくれても罰は当たらんよ…?


「そりゃよかったな~」

「球技大会のたびに顔面キャッチして倒れるまでがセットになってるよな」

「アンハッピーセットだ」

「お子様には出せねぇやつ」

「刺激が強すぎてね~」

「修業が足りんな」


みんな色々と酷いけどさ、最後の人は特におかしいな。ロシア出身の武人が混ざってるぞ。


妖精族(フェアリー)のPV可愛いな。このBGMは御子柴が作ったのか?」


鈴木が自分のスマホで見ていたのはふわふわと可愛い世界観が特徴の妖精族チームのPVだ。事前に全チームのPVを見たが、どのチームも本気度がすごい。


「俺じゃないよ。それはAFLO(アフロ)さんっていう………アフロの人」

「アフロなんだ」


AFLOさんの説明をしようと思ったのだが、頭に浮かんだのはあの特徴的なアフロと娘のしーちゃんだけだった。


それにしても、鈴木がそれに喰いつくとは。


「妖精族の主人公はカンナだよ」

「あ~。だからそんなに何度も見てたわけだ」

「だって愛羽(あいば)さんだもんな」

「鈴木の愛しの」

「「「愛羽さんだもんな~」」」

「おいっ!お前ら揶揄うのやめろー!」


鈴木ってやっぱりカンナのこと…。


「俺の味方は御子柴ともとやんだけだな」


俺ともとやんだけが鈴木を揶揄っていなかったので、こちらにすり寄ってきた。


「鈴木は愛羽が好きなのか。よし、覚えた」

「もとやん?そういうことは覚えなくて大丈夫だから!」

「え?でも、さりげなく2人きりにしたりとか、そういう配慮が必要だと思うが」

「そんなご配慮いりませんて!」

「もとやんの言う通りだなー。ご配慮が大事だよね」

「いやいや。そんな配慮いらね……って!お前らまで揶揄うなー!!」


俺たちがニヤついていたのを見て、ようやく揶揄われていると気付いたようだ。鈴木には申し訳ないが、これから当分の間はこれで遊ばれるかもな。


これだけ周りから言われてもなお、妖精族のPV(カンナの音声入り)を見ているのだから本当に好きなのだろう。


これ以上揶揄うのは可哀そうだと思ったのか、香織が好きなPVに話を戻した。


「ぜんぶ好きだけどあえて一つをあげるなら……私は人間族(ヒューマン)のPVが好きかなぁ。スタジオブルースカイが制作してるみたいだからね!」

「スタジオブルースカイ?」


アニメに詳しくない井村が聞きなれない名前に首を傾げているのを見て、香織が早口&ノンブレスで説明する。わかる、俺にはわかるぞその気持ち!


「手掛ける作品は百発百中でヒットするって言われてくるくらいすごいアニメ制作会社だよ!」

「へぇ~。これは御子柴が作曲したやつ?」

「違う違う!人間族は氷雨(ひさめ)さんっていうとんでもなくすごい人が作曲してるんだ」


オタクは好きなものを説明するときは特に早口になっちゃうよな!


香織と俺に早口で説明されて、井村が若干引いていた。そうだなぁ、井村がわかる話題で言うと…。


「人間族の主人公の声優さんは『ツキクラ』にも出てる茂木さんっていう人だよ」

「茂木さん!?その人なら俺でも知ってる!」


ようやく自分の知っている名前が出てきて、井村の目の色が変わった。やっぱり他人の興味よりも自分の興味の方が強いよな。


「ねぇ!チーちゃんの作った曲はどれ?」

「エレナ、このPVは俺の紹介じゃなくて『四界戦争』っていうアニメの紹介だからな」

「わかったから!どれ!」


待て、ができないお犬さんか。


スマホをポケットから取り出して、動画サイトを開く。目的の動画をタップすると同時にエレナにスマホを奪われた。お犬さんというよりガキ大将だよな、コレ。


PVを最後まで見て、目を輝かせた。


「んー!オーチンハラショー!チーちゃんの曲とっても素敵ね!」

「「「おーちんはらしょー?」」」


急なロシア語に揃って首を傾げている。


「ベリーグッドって意味だよ」


たしか。


「しばちゃんはロシア語できるのかー」

「カッコよし男くんめ」

「私もやってみようかなぁ。エレナちゃんともっと仲良くなりたいからね!」


動画にくぎ付けだったエレナがパッと香織を見て、わなわなと震えだした。


「…?エレナちゃん?」

「ヤーアバジャーユティビャー!」


興奮してもはや全部ロシア語になってしまった。


「「「なんて???」」」


俺は翻訳家じゃないんだけどな…。あー、なんだっけ、唸れ、俺の記憶力!


「えっと、あなたのことが大好きです、だって」

「ほんとに!?ありがとうエレナちゃん!」


女子2人がぎゅっと抱き合う姿は眼福ですな。


ほんわかしながら見守っていると、無駄に鋭い田中が横にやって来て小声で聞いてきた。


「しばちゃん、本当はなんて言ってたんだ?」


さっきの翻訳に思うところがあったらしい。


「神様を崇拝するかの如く愛しています、みたいな?」

「……まぁ、最初の翻訳の方がいいよな」

「知らない方がいいことってこの世にはたくさんあるんだよ」

「たしかに」


特に女性の秘密とか、ね…。


「なー、いま玉谷と話してたんだけどよ、これからラーメン食いに行かね?」

「「「賛成」」」


ちょうどお腹が空いていたんだ。すきっ腹にラーメンは最高だよね。


玉谷がスタスタと女子2人に近づいていき、片膝をついた。


「お嬢様型もご一緒に、おラーメンでもいかがでしょうか?」


おラーメンに誘うにしても仰々しすぎないか?


「誘われなかったらチーちゃんを蹴り飛ばすところだったわ」

「行こう行こう!」

「なんで事あるごとに俺を蹴ろうとするのかな!?」


ワ―キャー叫びながらそれぞれがカバンを持ち、教室から出て行く。生徒の大半が帰った後の廊下に声がよく響いて…。


「職員会議中だから静かにしろお前らー!!!」


怒られた。


~執筆中BGM紹介~

五棟分の花嫁より「五等分のカタチ」歌手:中野家の五つ子(花澤香菜様・竹達彩奈様・伊藤美来様・佐倉綾音様・水瀬いのり様) 作詞・作曲:武田将弥(Dream Monster)様

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