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彼シャツ

12月12日の12時投稿!

前半は彩歌のマネージャー、友永さん視点です。



どこに行けばいいんですか?と聞いたのは自分だし、どこへでも行くつもりではあったのだが、ここは…。


「彩歌、本当にここで合ってるの?」

「あって……るっス」


彼氏が年下というのは知っていたが、まさか高校生だったなんて。どこで知り合ったんだろうか。いや待ていまはそれよりも。


「高校って勝手に入っていい、の?」

「……ダメ?」


高校の正門の前で途方に暮れる大人2人。さて、一体どうしたものか…。


コネを最大限使って入るか、いや、そんなことをしたら彩歌に変な噂が立ってしまうか。悩んでいたとき、道路の角からひょっこりとプラチナブロンドの髪の綺麗な子が顔を出した。


あの子、売れる(確信)


(さい)ちゃ~ん!こっちこっち!」

「エレナちゃん!」

「え!?2人とも知り合いなの!?」


キャッキャッとハグを交わす2人に驚いた。彩歌のマネージャーをやって結構長いのに、こんなに高校生の知り合いがいたなんて知らなかった…。


「はいっ!彩ちゃんこれに着替えて!」

「ふぇ?」


宝石みたいな綺麗な子(変なTシャツを着てるけど)が彩歌に服を渡した。


「はやく!」

「ひゃい!」





―――――――――――――――――――





左手があったかい…。


手から温もりが全身に広がっていく。


「―――智夏クン」


呼ばれている、呼んでくれている。だから、もう起きないと。


「さいか、さん」

「ふふっ、おはよう」


幸せな夢か…?


「怪我、大丈夫っスか?」


怪我?………あぁ、たしか、俺、体育館でラケットを顔面キャッチ、おでこキャッチ?したんだった。否応なしに意識を刈り取られたような……あれ?


「彩歌さんだ…」

「うん。彩歌さんっスよ」

「なんで……ここ、学校。ていうか、その恰好」


彩歌さんが学校にいることもそうだが、驚いたのはその恰好だ。ジャージ、いわゆる体操服を着ていたのだ。ダボっと大きめの長袖に半ズボンから覗く白い足がなんともお美し…


「これ、智夏クンのジャージを借りちゃった。ごめんネ?」

「いえ、俺のジャージなんていくらで、………も」


俺のジャージ…?


この瞬間、冷や水を浴びせられたかのように一瞬で意識が覚醒した。


「!?!?!?」


上半身を一気にベッドから跳ねるように起こしたら彩歌さんに注意されてちょっぴり嬉しい、ってそうじゃなくて!


大会中は暑いからと脱いでいた長袖に、たまたま持って来ていた半ズボンを、何故か俺の彼女が着ている件。


「へへへ。智夏クン、驚いてやんの。見て?彼シャツだよ」

「…!ありがとうございます!」

「うん?」


誰か知らんが、俺のジャージを彩歌さんに渡した人、まじでありがとう!なにより俺のジャージを嬉しそうに着てくれている彩歌さんにありがとーーーー!!!


「おでこ、ちょっと腫れてるね」

「そうなんですか?」


試しに触ってみたら、彩歌さんの言った通りぽこりと腫れていた。まぁ、痛みを感じないからなんともないんだけど。


「痛いね」

「いえ、痛みは…」

「痛みは感じなくても、痛いよ…」


あぁ…ほんとだ。


「…」


彩歌さんが泣きそうになっている。それだけで、心がこんなにも。


「好きです、彩歌さん」

「私も、…っ!」


柔らかなその唇に、自分のそれを重ねる。彼女の驚いた顔も、恥じらうような顔も、俺の背中に手を回してギュッとTシャツを握るその手さえも、全てが愛おしくてたまらない。


「ち、智夏クン!ここ、ここ学校だよ!」

「そうですね」


顔を真っ赤にして注意する彩歌さんの頬に手を滑らせる。


「そそりますね」

「智夏クン!?」


そういえば、田中が「しばちゃんの寝起きは18禁だな」ってこの前言っていたような…。


「うおっほんえほんごっほん!」

「……エレナ」

「お取込み中悪いけど、マネージャーさんが彩ちゃんのこと呼んでる」


おっさんよりたくましい咳払いをしながらエレナが保健室に入って来た。


「そ、それじゃあ智夏クン、安静にね!エレナちゃん、今日は本当にありがとう!」


パタパタと急いで保健室から出て行った彩歌さんを追いかけるようにエレナも出て行って、保健室が静寂に包まれる。


「………………………なにやってんだ俺は」


高校生っぽくて可愛かったな、彩歌さん…。



~執筆中BGM紹介~

ダーリン・イン・ザ・フランキスより「KISS OF DEATH(Produced by HYDE)」歌手:中島美嘉様 作詞・作曲:HYDE様

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