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ぷりちー最強伝説

前半は智夏視点、後半は彩歌視点でお送りします。



俺の恥ずかしい過去をさらに暴露しようとしたエレナだったが、


「これ以上試合妨害するなら失格にすっぞ」

「…」


と結構ガチのトーンで審判の先生に言われた途端に、借りてきた猫のように大人しくなった。最初から無駄口を叩かなければよかったものを…。憐れみを込めた視線を送っていたら、ギロリと睨まれた。


「なに見てんのよ」

「どこぞのヤンキーか」

「あぁん?」


触らぬ死神に祟りなし。これ以上は危険だと理性も本能も警告してくる。


「こちら実況の田中です。さきほどの相手チーム坂井さんが見せた尋常じゃないほどの体の柔らかさですが、たった今情報が入って来たました」

「坂井さんは新体操、個人競技の部でインターハイ優勝経験のある実力者です。体の柔らかさ、体感の強さはこの学校でトップクラスでしょうね」


インターハイ優勝者!?どうりで上半身だけグニャリと動いたわけだ。次元が歪んでるのかと思ったくらいには曲がってたね、あれは。


「バカなこと考えてないで試合に集中!一本集中!一極集中!」

「最後だけ違う!けど了解!」


………あれ?なぜ心の中で考えていたことがバレたんだ?


「唸れ、俺の右手首!マックスプリティーサーブッッッ!」


ははーん、さてはアンドレイ君、プ〇キュア好きだな?


エレナが飛んできたシャトルをロックオンしつつ、技名?を叫ぶ。


「プリティー百倍返し!」


目には目を、歯には歯を、プリティにはプリティを百倍返しで。全然プリティでもなんでもない技名だが、アンドレイ君もエレナもとても満足そうなので良しとする。


新体操部の坂井さんも触発されたのか、ただノリが良いだけなのか、即興で考えた技名を叫んだ。


「ぷりちー最強伝説!」


なんだそれ。技名っぽく叫んでいるだけでもはや技名ではないんじゃないか?いや、そもそも技名ってなんだっけ…?


ゲシュタルト崩壊し始めた技名について考えている間に、シャトルが俺の方に飛んできた。えぇ?これもう一回技名を叫ばないとダメなやつ?


うーん……ぷりちー……あ。


「マイシスターはとってもプリチースマッシュー!!」


全世界に叫びたい、冬瑚の可愛さを。そんな思いを込めて、スマッシュを打たせていただきました。


届け、この想い。


「「「…」」」


何故だろう。俺のスペシャルスマッシュのおかげで点数が入ったというのに、誰も何も言わないのは。


つかつかつか、と坂井さんがアンドレイに近づき、肩に手を置いて言った。


「技名を叫ぶのはもう、やめようか」

「……そうだな。そうしよう」


えぇ?せっかくノッてきたのに?


「坂井さんとアンドレイ君の英断に拍手を」


田中が観客たちに拍手を促し、体育館は酒井さん達に向けた拍手で溢れた。


「点数決めたのは俺なのに…」


世の中の理不尽さを身をもって感じた瞬間だった。




この後、エレナの大活躍と俺の小活躍により点数を順調に重ねていった。


「よっこらしょーい!」

「どんな掛け声だよ」


そんなこんなで1セット目をなんとかもぎ取り、2セット目を俺たちのマッチポイントの場面でそれは起きた。


アンドレイ君が焦ってラケットをすっ飛ばしてしまったのだ。コートを分断するネットの高さはおよそ150センチ。フルスイングして一直線に飛んだラケットはネットを超えて正面の俺たちのいるコートに。そして運悪くラケットが飛んでいった先にあったのが俺のおでこだった。


ガコーン!


あーあ。今回こそは顔面キャッチはしないって決意を固めて、今の今までしなかったから油断してた。まさかラケットまで俺の顔面はキャッチしちゃうんだなー。


世界が揺れて…


バターン!


「チーちゃん!」

「しばちゃん!」

「「「御子柴!」」」





――――――――――――――――――――





『チーちゃん!』

『しばちゃん!』

『『『御子柴!』』』


叫びと共に、ここで途切れたテレビ電話。


「智夏クン!?」


車内で思わず立ち上がり、頭を天井に強か打ったが、その痛みにも気づかないほどに動揺していた。


「鳴海さん!車内で立たないでください危ないので!」


運転中の彩歌のマネージャーが彼女に注意するが、その声も耳には入ってこない。


「ど、どうしようどうしよう!あ、電話…はダメだよね。えっと、救急車!…は私がここから呼んでも意味ないっス。こういうときはとりあえず落ち着いて、深呼吸スーハ―」


彩歌の尋常じゃない様子を見て、マネージャーの友永は車を路肩に停めて振り返った。


「どうしたんですか?鳴海さん」

「友永さん、実は……いえ、なんでも、ないっス。ごめんなさい」

「なんでもないって…」


そんな顔をして言ったところで、彩歌にとって重要な何かが起きたことは、長年マネージャーとして支えてきた友永にはお見通しだった。


「………鳴海さん、ラジオ収録まではまだ時間があります。どこに行けばいいんですか?」

「え…?」

「そんな状態で収録をしても、気もそぞろで集中なんてできないでしょうし。それに、彼氏くんのピンチなんでしょ?それなら彼女のあんたが行かなくてどうするのよ!」

「エミリちゃん…!」


仕事ではマネージャーとして、そしてプライベートでは良き友人として。友永エミリは彩歌を支えているのだった。


~執筆中BGM紹介~

交響詩篇エウレカセブンより「少年ハート」歌手:HOME MADE様 作詞:KURO様・MICRO様・DJ U-ICHI様 作曲:KURO様・MICRO様・DJ U-ICHI様 & TAKAHIRO WATANABE様

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