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依頼

誤字報告ありがとうございます!




田中兄妹とバスで遭遇、というか待ち伏せされて有無を言わさず連れてこられたのは花屋さんだった。俺がこの時間のバスに乗る、という情報を知っているのは香苗ちゃん達だけだから、少なくともこの2人と家に残っている香苗ちゃんたち3人がグルなのは確定だ。


「田中、これはどういうことだ?なんで花屋に俺を連れてきたわけ?」


花屋さんってもっとルンルンと幸せな気分で訪れる場所だと思ってたんだけど。困惑しかないんだが。花屋に連行されるって一体どういう状況だよ、これ。


「あ、ちょっと待って。連絡入れるから」

「どこにだよ」


という俺の疑問には答えず、スマホを取り出す田中と妹の深凪ちゃんの2人。え、まさか。


「この距離で電話すんの?」

「半分正解だな」


手を伸ばせば届く距離なのに電話で話すのだろうか、という疑問には答えてくれたが、半分正解とはこれいかに。


「こちらデルタ(田中)


で、デルタ?デルタってギリシャ文字とかのΔ(これ)だろ?田中たちに会ってから困惑しかないんだが。俺だけがなにひとつとして状況が理解できないまま時間だけが過ぎていく。


「ターゲットの捕獲に成功した。これより花束作戦を決行する」

『―――――。―――――~?』

「大丈夫さ、アルファ!本番通りやれば練習で成果は出る!」

「深凪、それ逆な。練習通りにやれば本番で成果は出るんだぞ」

「深凪じゃなくてベータと呼んでくだされ」

「わりぃ、つい忘れちまうんだわ。じゃ、そゆことで~」

『―――――』

「「はーい」」


さっき田中に言われた「半分正解」という言葉の真意は、田中と深凪ちゃんと、アルファという3人で電話していた、ということらしい。そしてそのアルファの正体は十中八九、穂希だ。


「で?穂希と3人で企んで、何するつもりなんだ?」


電話が終わるまで大人しく待っていたんだ。いい加減教えてくれてもいい頃だろう。


「「花束作戦」」


だから、それが何かって聞いてるんですけど~?半目になっていた俺の我慢がそろそろ限界を迎えそう、というのを田中が察したらしく、仕方ないなとでも言いたげに花束作戦とやらの概要を説明していくれた。


「俺が花束を見繕う。そんで、その間に」

「不肖、深凪がしばさんの御髪(おぐし)を整えてみせます!」

「…は?」


いまから何をするのかはとりあえずわかった。わかったけど!


「なんでそんなことすんのさ!?」

「「それは言えない」」

「兄妹息ぴったりですね!!!」


肩で息をしながらツッコむ。一体なんなんだ!


田中が花束を作るのも疑問だが、さらに疑問なのがなぜ俺の髪をいじる必要があるのかだ。どこかのパーティーに行くわけでもあるまいし。


「さ、入るぞー」

「レッツゴー!」

「えぇぇぇえぇぇええええ」





―――――――――――――――――――――――





数日前のこと。


智夏を抜いた『しんぶん部』の部員が部室としてもぎ取った教室に集まっていた。田中と穂希以外、ここに召集された理由もわかっていないため、思い思いに駄弁っていた。


「御子柴だけ来てなくね?」

「井村は演劇部の方はいいのか?」

「もう引退しちまったのさ」

「燃え尽きたような顔だな」


鈴木、玉谷、井村、もとやん。


「部活ってお菓子を持ち寄るんでしょ?」

「わぁ~!すごいお菓子の量でありますな!」


姫、深凪。


「みんな~!今日は穂希のために集まってくれてありがとぅ~」


穂希がどこからか持ってきた低めの台に乗って、さながらアイドルのように手を振る。


「ライブかよー」

「お前のライブの為に集められたのか俺たちは」

「ペンライトを持ってくれば良かったでありますな」


姫が持ってきたお菓子をそれぞれ食べながら穂希に注目する。


「今日しんぶん部のみんなに集まってもらったのは、依頼があったから~!」

「依頼?」

「しんぶん部って依頼を受ける部活だったのか?」

「そもそも何をする部活なの?」

「「「知らなーい」」」


しんぶん部の活動内容は発起人の穂希しか知らないのだ。そもそも3年生たちは幽霊部員として入部したつもりだったくらいだ。それでも招集があったら参加するあたり、真面目というかなんというか。


「しんぶん部とは!青春を存分に謳歌する部活ですっ!」


せい()()をぞん()()におうかする部。略してしんぶん部…。


「雑かっ!」

「結局活動内容わかんねぇわ!」

「ツッコミは受け付けておりませ~ン」


穂希が話すたびにツッコんでいたら話が進まないので、見かねた田中が穂希を台から降ろして自分が代わりに乗った。


「で、だ。俺たちしんぶん部が発足して初の依頼は俺と、」


ガラララ、と音を立てて古びた部室の扉をタイミング良く開けたのは…。


「御子柴秋人です」


短く切られた黒髪は爽やかで、黒目はキリッとしていて、整った顔立ちの、自分たちより年下っぽい男の子。そして、御子柴という苗字…。


「「「御子柴(師匠)(友達2号)(しばさん)の弟!?」」」


ガバッと迫ってきた年上の少年少女たちに圧倒され……ることもなく、秋人は口を開いた。


「今日は、頼みがあって。しんぶん部に来ました」


~執筆中BGM紹介~

劇場版ソードアート・オンライン-プログレッシブ-星なき夜のアリアより「往け」歌手・作詞:LiSA様 作曲:Ayase様

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