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サニーボーイ

ちょっぴり下ネタ。苦手な人はごめんなさい。



防音設備がバッチリのスタジオを借りて、俺はとある人物を待っていた。


スポンサー企業のお偉いさんのお嬢さん(30代)のバイオリンの実力を直接見るためにこうして場を整えたのだ。


メールでやりとりしていた分には、常識人のような印象を受けたが。


―――ガチャリ


防音の重たい扉が開く音がして、立ち上がって例の人物を迎える。


さて、一体どんな人物が来るか…。


「グッモォニンッ!あたしの名前は宝城(ほうじょう)時音(ときね)、宝の城に時の音だ。よろしくな、サニーボーイ!」


…………右を見る。誰もいない。左を見る。誰もいない。後ろを見る。誰もいない。


ツッコミしなきゃいけませんかね?どうしてこうもキャラの濃い人たちにご縁があるんだ?前世の因縁でもあるのか?


眉間に(しわ)が集結していたので、なんとか気力で伸ばして、挨拶?を返す。


「おはようございます。初めまして御子柴智夏です。御子柴の()に御子柴の()、御子柴の(しば)で御子柴です。智夏の漢字は……そうですね、もうご想像にお任せします」


千夏でも知夏でも血夏でもなんでもお好きにどーぞ。


「フッハッハッハッハッ!なんだそのふざけた自己紹介は!」

「宝城さんにだけは言われたくないですね」

「時音でいいぞ?サニーボーイ」

「いえ、宝城さんと呼ばせていただきます」

「距離感を感じて切なくなるねぇ」

「初対面の距離感は大事です」


会って3分でもう疲労困憊(こんぱい)だ。サニーボーイはもう疲れたよ…。


この人本当に30代なのだろうか。どう見ても20代前半くらいにしか見えない。夏のように小麦色に焼けた肌、生命力が(みなぎ)る黒い瞳、切れ長の眉、()を描く少し大きめの口、とてもよく似合っているベリーショートの黒髪。


現れた瞬間に喋り出したために、外見にあまり目が行かなかったが、改めて見るとこちらも相当印象的だ。


作務衣(さむえ)、ですか?」


紺色の、お寺でお坊さんがこれを着て落ち葉を掃いているイメージだ。その作務衣を宝城さんは何故か着ている。おまけに足元は下駄だ。


この人と道ですれ違ったら絶対振り向いちゃうだろうな。


「作務衣を知っているとは感心感心。海外でこういう服を着てストリート演奏をしているうちに普段着になってしまったのさ」

「海外に行ってたんですか?」


しかもストリート演奏とは。


社長から事前に聞いていた、というよりかは聞き出した情報では、職についていないプー太郎さん、というイメージを形成していた。


今のところは、ただのプー太郎ではないということはわかった。


正直、宝城さんがプー太郎でもキャリアウーマンでも関係ない。重要なのはバイオリンの腕とやる気、この2つだけだ。


「アメリカ、ドイツ、オーストリア……まぁ、あちこち行ったね。スリにも遭ったし、ディナー中に強盗が店に入ってきた時もあったね。けど、」


とても刺激的な人生を送ってきていらっしゃるようで…。


誰だ、お嬢様とか言ってたのは。この人はそこらの大人よりも人生の厳しさを知る人だよ。


「それらを補ってあまりあるほどに、カラフルな生活を送ってたよ。あ〜、今度は東南アジアに行こう」


行ってみよう、ではなく、行こう。行動力の権化(ごんげ)だな。


「というわけで旅費を稼がないとな。これからよろしく、サニーボーイ?」

「はい!こちらこそよろしくお願いします。……ところで、サニーボーイはもう固定なんですか?」


最初にそう呼ばれたときから気になって仕方なかったんですわ。


「いいじゃないか、サニーボーイ。嫌だったかい?」

「人前で呼ばれたら恥ずかしいことこの上ないですね」

「それじゃあ2人っきりのときだけそう呼ぼう。……意外と大胆だねぇ?」

「…」


どうしてだろう。外見だけ見ると確かに魅力的な女性のはずなのに。カケラも魅力を感じないなんて。


「ちょっ!サニーボーイ!!そんな未確認生命体(UMA)を見るような目でアタシを見ないでくれ!」


作務衣を着ているし、下駄を履いているし、呼び方に色気もくそもないし、言ってしまえばネーミングセンスがダサいし。


ときめかない理由がこんなにも盛り沢山だ。


冷めた目で宝城さんを見ていると、何かに思い至ったように声を上げた。


「ハッ!まさか、サニーボーイよりチェリーボーイの方が良か、」

「黙らっしゃい!!」


その口、縫い付けてやろうか!



〜執筆中BGM紹介〜

「チェリボム」歌手:SILENT SIREN様 作詞:すぅ様 作曲:クボナオキ様


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