同じ高校
テレビの生放送で会って以来の再会のため、話が弾む。
「先月出た氷雨さんのサウンドトラック買いましたよ!すっっっごく最高でした!!」
「ありがと。言ってくれればあげたのに」
「それでは我にもくだされ!」
「わかった」
流れで便乗してきたAFLOさんがダメ元で氷雨さんに聞いてみた、のだが。
「やっぱりダメでありますか……えぇぇぇぇええええ!?本当にくれるでありますか!?」
頼んだ本人が一番驚いている。
「いらないの?」
「サイン付きで欲しいであります!」
「わかった。後で送っておく」
「ありがたや~」
えぇ…いいな。
「俺が買ったサントラにもサイン書いてください!」
「わかった」
やったぜ!次に会うときに絶対持って来なきゃな。
「氷雨、なんや優しくないか?」
「仲間だもの」
「「「へへへ」」」
「息ぴったりね」
だって、ねぇ?あの他人に無頓着な氷雨さんに”仲間”だって断言されて贔屓にしてもらったらそりゃもう照れるというか、デレますわ。
「御子柴君!」
美声に呼ばれて振り返ると、そこには先月に会ったばかりの茂木さんがいた。
「茂木さん!こんにちは」
「こんにちは。また一緒に仕事ができて嬉しいよ」
「俺もです。チームは別れちゃいましたけどね」
茂木さんは氷雨さんと同じ人間族チームで、俺は魔人族チームだ。魔人族と書いてデーモンと呼ぶ。もう全部カッコいい。男心がくすぐられちゃう。
「ドリボの魔人族チームの主人公ってあの横浜さんが演じるんだよね?」
「はい。オーディションの映像を見せてもらったんですけど、すごく上手で」
「へぇ~。それは負けていられないな」
ニコニコと顔は笑ってはいるが、声は真剣だった。
途中で抜けてしまった氷雨さん達の様子を見ると、何故か俺のサインを3人で考えていた。なぜ俺のサインをあんな嬉々として考えているのか。理由は簡単。絶対ふざけてる。あっちに参戦しようかどうか悩んでいると、今度は正面から知り合いがやって来た。
「茂木さん。お久しぶりです」
「ん?愛羽さんか。最近また腕を上げたんだって?」
「少しでも先輩方に追いつけるよう、頑張ってます」
「相変わらず真面目だねぇ。あ、そうだ。2人は初対面?」
俺とカンナを見て茂木さんが仲介してくれようとしたのだが、その前にカンナが止める。
「いえ。私と智夏は同じ高校で……友達なので紹介は大丈夫です」
「へぇ~!2人とも同じ高校なんだ。世間は狭いねぇ」
高校という単語を聞いて周りで俺たちの会話を聞いていた人たちが「え!?あの人って高校生だったの!?」みたいなことを言っている。そんなに俺って老けて見えるかな?若作りした方がいい?
「愛羽さん!」
今度はカンナの知り合いがやって来た……っていうか、あのキラキラルックスの人はもしかしなくても。
「横浜さん」
ですよねー。俺たち魔人族チームの主人公の声を務めることになった俳優の横浜真澄さんですよね。
カンナと言い横浜さんと言い、顔面偏差値が高すぎて目がチカチカしてきた。
「香織丸の家で会って以来だよね?」
「そうですね」
香織丸ってもしかして、俺の知ってる香織のことだろうか?本当に横浜さんが香織の知り合いだとすると、世間って本当に狭すぎでは?ていうか家で会ったって。俳優さんって友達の家で会えるもんなのか。
「えと、声優の茂木さんと…」
うんうん。俺の知名度なんてこんなもんだよな。横浜さんの反応になぜかホッとしてしまったよ。
「魔人族チームの音楽制作を担当する御子柴です。よろしくお願いします」
「俺は横浜真澄。本名だよ。これからよろしく!」
大学生くらい、だろうか?ニカッと笑っただけで周囲の女性スタッフが黄色い声を上げた。俳優さんってすごいなぁ。
「さっき愛羽さんと同じ高校って聞こえたんだけど」
「同じ高校ですよ。言いふらさないでくださいね」
「俺って信用ないよね~」
カンナと仲が良いのだろうか?いや、でもカンナはすごい嫌そうな顔してるし。
「ってことは香織ま…香織とも同じ学校ってわけだ」
キラン、と横浜さんの目が鋭く光ったような気がした。
「そう、ですね?」
「なして疑問形?香織のこと知らない?花村香織」
「同じクラス、ですね」
「まじで!?じゃあ御子柴君も頭良いんだねぇ。俺は香織の彼氏だよ」
「やっぱりそうなんですか!?」
俺の予想通り横浜さんはやっぱり香織の…
「彼氏じゃなくて幼馴染でしょ」
「愛羽さんネタバラシが早いよ~」
「智夏で遊ばないでください」
なんだ、俺また揶揄われただけか…。
あ、そういえば茂木さんは………ってあの人も俺のサインを考える会に参加しているし。採用するかしないかは俺が決めますからね!絶対ふざけたやつは採用しないですよ!
~執筆中BGM紹介~
聲の形より「green」作曲:牛尾憲輔様




