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ブラックコーヒー3人衆




急遽作り直したBGM『集え、勇者たち(改)』が採用され、その後は順調にアフレコが進んでいき、予定よりも少し早い時間に終わることができた。


彩歌さんが嫉妬するきっかけとなった若手の女性声優陣の実力も確かで、少ないミスで最高の作品を作り上げていた。しかしこの中でも特に彩歌さんと多田さんと茂木さん、この3人の実力は飛び抜けていた。


しかも、俺が曲を作り直す前と後で、さらに演技に凄みが出ていた。聞いていた監督やスタッフたちが思わず息を呑むほどに。


「お疲れさまでした~!」

「お疲れ様ですー!」

「ありがとうございました!」


労いと礼の応酬がしばらく続き、現場はお開きモードになった。この次に予定が入っている人たちは慌ただしく去って行き、その中には俺の彼女もいたわけで。結局、言い訳も弁明も何もできなかった。


「ハァー…」

「御子柴さん!どうしたんですかため息なんてついて!幸せが逃げてしまいますよ!そんなときはパァ~っと飲みに行きましょ、ってまだ学生だった。じゃあジュースをおごってあげよう!」

「た、多田さん……近っ、近いです!!」


ほっっっっんとに!パーソナルスペースどうなってんだよッッ!!いっそのこともうキスするか!?………いや待て、早まるな、俺。


「多田さん、そんなに近づくとそろそろ殴られますよ」

「あ、ごめん!殴るならお腹で頼む!」

「え…」


それはつまり、殴られるのが好き的なそういう性癖の持ち主だったり…?その考えに至った途端、ザザザッと精一杯多田さんと距離を取る。人生史上最高速度の後ずさりだった。


この爆弾発言を横で聞いていた茂木さんも俺と同じように距離を取り、なんなら俺の後ろに隠れていた。


「多田さんにまさかそういう趣味があったなんて、長い付き合いですけど知りませんでした…」

「茂木さん、俺の後ろに隠れないでください…」

「ごめんね。頼れる兄貴感が背中から出てたから、つい」

「え?そうですか?」


頼れる兄貴の背中とか言われて嬉しくないはずがない。


「2人とも!自分は殴られるのが好きなのではなくて!顔を殴られると仕事に影響が出るからせめてお腹で!という意味だから!」


デカい……声がデカいです多田さん…。思わず両手で耳を抑えていると、仕事を終えたじろぴょんがやって来た。


「御子柴君、飲み物をおごろう。着いてきなさい」

「あ、はい!それじゃあ多田さん、茂木さん、失礼します」


じろぴょんは言いたいことだけ言ってさっさと出て行ってしまったので、手短に多田さん達に別れを告げて小走りで追いかけた。


自販機の前に佇むじろぴょんに追いつくと、「好きなものを選ぶといい」と言われたため、少し悩んで缶コーヒーをおごってもらった。コーヒーを飲めるように日々頑張ってはいるものの、そもそもあまりコーヒーを飲む機会がなかった。だからこれは絶好の機会だと思ったが、どうしよう、ブラックコーヒーを押してしまった…。


「君たちも好きなものを選ぶといい」

「「ありがとうございます!」」

「!」


後ろを振り返ると多田さんと茂木さんが着いてきていた。


「御子柴君はブラックコーヒーか。やるな~」

「は、はは…」


本当は微糖コーヒーが欲しかったんですよね…。


「俺は微糖コーヒーで」

「自分も同じもので!」

「あ、お2人とも待っ、」


俺が止める間もなくじろぴょんが2本分の料金を払い、微糖コーヒーのボタンを押した。


ガチャンゴチョン


2本取り出し口に落ちてきて、茂木さんがまとめて2本取ると、出てきたものは…


「あれ!?ブラック(無糖)コーヒーだ」

「多分業者さんが間違えてしまったんでしょうね。俺も微糖を買ったつもりだったんですけど」

「もうちょっと早めに言って!?」

「すみません」


ブラックコーヒー3人衆をよそに、じろぴょんが買ったのは『ドゥロっと苺みるく(温)』だった。じろぴょんギャップ萌え。


自販機が設置してあった近くに少し開けた場所があり、そこで立ちながら男4人でコーヒーとドゥロっとを片手に話し出す。……前に、この場で顔を隠す必要もないかと思って狐面を外した。


「…本当に高校生なんだな」

「そうですよ」


ピッチピチの現役高校生ですよ、じろぴょん。


「仮面外すと若く見えますね!」

「そんな「眼鏡外すと若く見えますね!」みたいに言われたのは初めてです」


多田さんはいつまで俺に敬語なんだろうか?年上に敬語で話されると自分が偉くなったみたいで居心地が悪くなる。というのを考えながらブラックコーヒーに口を付ける。


「もしかしてハーフ?」

「うっ…。いえ、ハーフ(2分の1)じゃなくてクォーター(4分の1)です。母が日本とロシアのハーフで」


苦かった。想像の5倍は苦かった。思わず「うっ」となってしまった。苦みに堪えながら茂木さんからの質問に答える。今は前髪をサイドに分けているので青い目がはっきりと見えているため、茂木さんは「ハーフか?」と聞いて来たんだと思う。


3人とそれぞれ話したところで、本題に入ろうと思う。


「あの…これは知り合いの話なんですけど…」

「とか言って本当は自分の話だったりして」

「い、イエ。ソンナコトナイデスヨー」

「ブフッ…」


茂木さんが肩を震わせて俯いているけど、なんだろう、ブラックコーヒーが苦かったのかな。


よし、彩歌さんとのことを知り合いの話にして相談する作戦、決行!!!




~執筆中BGM紹介~

文豪ストレイドッグスより「Reason Living」歌手:SCREEN mode様 作詞:松井洋平様 作曲:太田雅友様

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