表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/467

舐められるより100倍イヤ

なめるって「舐める」と「嘗める」があって難しいですね。



周囲には聞こえず、不自然に思われない程度に絶妙な距離を取って小声で彩歌さんが叫んだ。


「可愛い子たちに囲まれて良かったっスね!!」


彩歌さんの言う「可愛い子」とはさっき俺を質問攻めにしていた女性声優陣のことだろう。それを見て彩歌さんがぷりぷりと怒っている理由は、さすがの俺でも察しがつくというもの。……勘違いだったらかなり恥ずかしいんだけど。


これはもしや”嫉妬”では…?


自分の中で結論を言葉にした途端に口角が上がりそうになるのを必死で堪える。


ダメだっ!ここで今にやけたら周囲に不審に思われるし、なにより彩歌さんに怒られてしまう!でも、彩歌さんが、嫉妬してくれた!


これがにやけずにいられるだろうか。嫉妬はある程度の独占欲がないと発生しないと聞いたことがある。それはつまり、彩歌さんの中に少なからず俺を独占したいという欲があるということで…。


「な~にニヤニヤしてるっスか!?」

「すみません申し訳ないやら嬉しいやらで口角が勝手に…」


狐面が鼻から上しか隠してくれていないため、口の形は如実にわかってしまうのだ。


本当に、不安にさせたことは申し訳ないと思ってるんです!でも、嬉しくて嬉しくて…!


「ん~っ!もう知らない!!」


あ、やべ。


彩歌さんは、プイッと顔を逸らしてそのままアフレコブースへと戻って行ってしまった。


ど、どどどどどどうしようーー!!!


「御子柴」

「………はい」


じろぴょんこと、赤川さんがヘッドフォンを外して俺を呼んだが、またもや返事が遅れてしまった。


「なんだその()は?」

「自分の無能さ加減に打ちひしがれてました…」


彩歌さんの反応が可愛すぎて調子乗りすぎた…。これで嫌われたら、もう俺、()からびる…。干からび死する…。


「なんだそれは。嫌味か。あれだけの短時間でこんなにも素晴らしい曲を作り上げておいて「無能」だと?笑わせるな」

「え?」


曲?………あぁ!じろぴょんは『集え、勇者たち(改)』のことを言っているのか!


「もしかして俺、褒められてます?」

「そう聞こえたなら今すぐ病院に行ってこい」


眉間の皺をさらに深くしてじろぴょんが俺を残念な子を見るような目で言った。周囲のスタッフさん達は「やれやれ、素直じゃないな」って顔してるし、俺褒められたんだろうな……多分だけど。


「ありがとうございます」

「………ふんっ」


最初は苦手だったじろぴょんが段々と扱いやす……じゃなくて、親しみやすくなってきた。


「この後、飲みに行くか」

「俺、未成年なんで」


じろぴょんがとんだすっとぼけ発言をしてきたので、すぐに断ってしまったが、これはもしやじろぴょんなりの冗談だったか…?


「「「えぇ!?」」」

『『『えぇ!?』』』


俺たちの周りにいたスタッフと、ちょうど音声が繋がっていたアフレコブースから同時に驚愕の声が聞こえた。


そんな驚くようなこと言ったっけ?


「御子柴お前、未成年だったのか…」

「え?はい…。あれ、言ってませんでしたっけ?」


てっきり五十嵐監督から聞いているものだと思っていたが、この反応を見るに違うらしい。


「高校3年生です」

「「「高校生!?」」」

『『『高校生!?』』』


そんなに驚くことか…?もしかして俺、老けて見える?さっきだって未成年って言ってどよめいたし。うそーん。


「息子と同い年、だと!?」


じろぴょん息子さんいたんだ。ということは結婚しておられるということで……彩歌さんのことをそれとなく相談してみようか。俺よりもだいぶ経験豊富なはずだし。


「そうか…。それはすまないことをした」

「お酒に誘ったことですか?」


じろぴょんが何に対して謝っているのかがまったくわからない。ましてや謝られるようなことをされた覚えもないのでなおのこと。


「それもあるが、高校生の君にきつく当たりすぎたかと思ってな…」


きつく当たってた自覚はあったことに驚いた。が、それについて謝られるのは釈然としない。


「未成年だから、とか高校生だから、という理由で甘やかされるのは、舐められるより100倍イヤです」


舐められたなら実力で見返せばいい。でも、最初から甘やかされたら、高校生だから仕方ないとかそういう最初から妥協されるのはすごく不快だ。


同じく高校生で活躍しているカンナもきっと同じような経験をしているのだろう。常に現場では自分から厳しくしてくれと自分から言っていると聞く。


「俺はプロとしてこの仕事に参加しに来ているんです。見学に来ているわけではありません」


じろぴょんに俺が言われた言葉を今度は俺がじろぴょんに痛烈に返す。


「ふっ……。それはすまなかった。酒の代わりにジュースでもおごってやろう」

「ありがとうございます…。うん?」


結局、子ども扱いされているような?まぁ、仕事ではもう子ども扱いされないだろうからいいか。ジュースを貰うときに彩歌さんのことを付き合ってることがバレない程度に相談してみよう。



~執筆中BGM紹介~

レガリア The Three Sacred Starsより「Divine Spell」歌手:TRUE様 作詞:唐沢美帆様 作曲:本多友紀(Arte Refact)様

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ