表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/467

フェロモン



高校3年生の初日を終え、寄り道もせずに家に帰り、ぐったりとソファーの背もたれに体重を乗せ、脱力する。


家に帰ってきて早々にソファーでへばる俺の周りをソワソワと冬瑚(とうこ)が行ったり来たりする。冬瑚も今日が始業式で、小学3年生になった。冬瑚の小学校は2年おきにクラス替えがあるため、津麦ちゃんと離れ離れになるかもしれないのが嫌だと朝からごねていたのだが。


今はチラチラと俺に視線を送って、何かを話したそうにしている。普段なら俺の隣や膝の上に座って自分から話してくれるのだが、今日は俺がぐったりしているから話しに行ってもどうか悩んでいるのだろう。まったく、子供がそういう気遣いをしなくてもいいのに。可愛い奴め。


頭をよいしょと上げて、冬瑚を見る。


「冬瑚、今日のクラス替えはどうだったんだ?」


とんとん、とソファーを叩いて冬瑚を隣に誘導する。冬瑚は俺の言葉に目を輝かせると、小走りで俺が座っていたソファーの隣に飛び込んできた。


「夏兄聞いて!あのね!津麦ちゃんと3年生でも同じクラスになれたんだよ!」

「そっか!良かったなぁ」

「うん!」


触り心地の良い冬瑚の頭をなでなでする。冬瑚は気持ちの良さそうに目を細めた後、「それでね」と話しを続けた。


「ビッグニュースがあるんだよ!冬瑚のクラスにね、りょうちゃんが転校してきたの!」

「りょうちゃん?」


聞いたことあるような……えーと、


「冬瑚がいた前の小学校でできた、親友のりょうちゃんのことだよ!」

「あー!あの時の子か!」


冬瑚をうちで引き取る前の小学校にいた親友のりょうちゃん。その子にだけはどうしても直接お別れを言いたいと冬瑚が言って、その子の家まで行ったことを思い出した。


「そっかー。転校してきたのか」

「うん!また一緒の学校で過ごせて嬉しいんだ!」


冬瑚が前いた学校はお嬢様学校で、以前に行ったりょうちゃんのお宅も大きな家だった。そこから冬瑚の通う学校に転校してきたとなれば、両親も大変だったんじゃないかと思う。でも、それは大人の事情であって、冬瑚と、それにあと多分りょうちゃんもとても喜んでいる。


「いまはまだ、津麦ちゃんとりょうちゃんは仲良くないけど、そのうちすぐに親友同士になるよきっと!」


仲良くないってなんだろ。バチバチに喧嘩してるってわけじゃないよな。津麦ちゃんとりょうちゃんは共通の友達の冬瑚がいるけど、お互い初対面だからちょっと余所余所しいとかそういうことだろうな。


野生の動物のように警戒する津麦ちゃんと、それを無表情でじっと見つめるりょうちゃんと、間に挟まれてニコニコしている冬瑚のトライアングルが目に見えるようだ。


「冬瑚の話はこれで終わり!それじゃあ次は夏兄の番だよ。なんでそんなに疲れちゃったの?」


まだ話したいこともたくさんあるだろうに、こうして俺の話を聞いてくれるのはもう女神様仏様妹様だよな。


「ちょっと変な後輩に絡まれてな…」

「夏兄そういうの多いよね」

「っ!……言われてみれば確かに」


妹からの的確な言葉に気付かされた。俺、変な人に会う確率高くないか?なんなの?変人ホイホイなわけ?そういう特殊なフェロモン出ちゃってます?


「なに?また兄貴、変な奴に絡まれたのかよ?ウケる」

「お兄ちゃんの危機を笑わないで?」


買い物袋を片手に帰宅した秋人が開口一番に半笑いで「ウケる」って…。弟がどんどん生意気になっていくよー。でも、ご飯作ってくれるから毎日感謝がたえないよお母さん。


「毎日美味しいご飯をありがとう。秋人母さん」

「誰が母さんじゃい。…で?何があったんだよ?」


こうやってしっかり話を聞いてくれるところも世で言う「お母さん」なのでは、と思うがこれ以上言うと飯抜きの刑に処されるため言わないでおく。


「部活に誘われた」

「は?部活って、この時期に?」

「そ。3年の部活を引退するこの時期に」

「不思議だね~」

「そうだね~」


冬瑚の頭を撫でて癒されながら、今日の昼の出来事について思い出す。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





穂希(ほまれ)のこと、スキにしていいから…」


という爆弾発言をした後、とりあえず俺はどうするか考える前に…


「ズズッ」


うどんの最後の1本をすすった。


「おいー!しばちゃんお前、美人の口からいま、と、とんでもない言葉が出たのに、うどんを食うってお前ってやつぁ…!」

「速く食べないとうどんが伸びるだろ」

「それはそうだけどよ!」


ごちそうさまでした…とうどんのすべてに感謝し、改めて穂希に向き直る。


「お願いってなに?」

「新しい部活を作るのっ!それでね、御子柴せんぱいにも入ってほしいな~って穂希は思ったの!」







穂希がこれだけ言い残して食堂を去った後、俺は男子達にもみくちゃにされて、それはもう疲れた。男子ってこういう時に手加減ってのを知らないからホント嫌になっちゃうのヨネ!



~執筆中BGM紹介~

シャーマンキングより「Northem lights」歌手:林原めぐみ様 作詞:MEGUMI様 作曲:たかはしごう様

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ