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チキンカツ



朝から女子たちと少しの男子とワイワイして、新しくクラスメイトになったもとやんに挨拶してから3年生一発目のSHを迎えた。担任は2年生のときと変わらず、吉村旭先生、通称ヨシムーだ。


「お前らとうとう受験生だなー。ま、残り一年、悔いのないように行こうやー。あとお前らもう気付いてるだろうが、今日からクラスメイトが1人増えたからな。そんじゃ元山、改めて自己紹介な」

「はい」


ヨシムーの言葉に応じて、廊下側の一番前の席のもとやんが椅子から立ち上がった。


元山(もとやま)蒼穹(そら)です。………………3年A組です」

「「「知ってるわ!!!」」」


この教室にいる時点で3年A組なのは確定だよね。さすがもとやん。今日も通常運転だ。


クラス全員からの総ツッコミに驚きつつ、もとやんが右手をちょっと上げた。


「これからよろしく」

「よろしくなー」

「よろー」

「よろぴー」

「しくよろー」


前から交流があったこともあって、クラスメイトからはすぐに受け入れられたが、理由はそれだけではない。俺もクラスの皆も、もとやんの努力を尊敬しているからだ。A組に編入するには、かなりの努力が必要なのだ。だからもとやんみたいにA組に編入できる生徒は毎年1人いるかいないか。それくらいの困難を乗り越えてきたもとやんには素直に尊敬の念を抱く。


「そんじゃ今日も気張ってこー」

「「「うぃ~」」」


言葉だけだと女子運動部の掛け声みたいだが、ヨシムーが言うと一気に脱力してしまう。だから俺たちの返事も酔っ払いの返事みたいに気が抜けたものになるのだが、もはやこれが恒例になってしまった。







若干授業内の緊張感が増したかな、と感じた午前中の授業を終えて、俺と田中と鈴木と井村と玉谷ともとやん……の男ばっかのむさ苦しい6人で食堂に向かった。


3年に上がったから食堂を使う際の居心地の悪さはなくなった、と思っていたが、


「しばちゃんに視線集まってんなー」


朝は可愛い&美人な女子たちが一緒にいるから注目を浴びていたのだろうが、今は男だらけでも視線を感じる。というか、俺だけ視線の集中砲火を浴びまくっている。


「犯罪者か俺は」


男たちに囲まれて、周囲の視線に晒されて。この場面はもう警察に連行される前の犯人だ。上着を頭に被って両手を前に出せば満足ですか?


「有名人だからだろうが。御子柴いーなー。モテモテじゃんか」

「いやいや。俺を見ている人たちの会話を聞いてみろよ」

「こんなに大勢いたら何喋ってるかなんてわかんねーよ。…え?御子柴わかるの?」

「わかるだろ」

「え?」

「え?」


鈴木が理解できない目で俺を見てくるが、俺も同じような目で鈴木を見ているに違いない。




「ほら、あの人が『ツキクラ』の曲作った人だよ」

「どの人?あの目つき悪い人?」

「違う。その隣の……陰キャみたいな人!」

「え~?狐のお面の下ってあんな陰キャが隠れてたの?」


「3年の御子柴先輩ってあの人だよな!」

「僕、サイン貰ってこようかな?」

「この前テレビにも出てたよな」

「正月にもテレビに出てるの見たぞ」

「へぇ~。あの人、そんなに凄い人なんだな。見た目と違って」





いや、見た目関係なくないですか?曲を作るのに見た目は全く関係ないんですよ。まぁ、サウンドクリエイターの『御子柴智夏』として活動する時は狐面を被っているから、素顔が気になるのも、それを美化しちゃう気持ちもわかりますけど?でも、本人の前で言いますかね?俺は気にしてないけど!でも、そういうの気にしちゃう人もいると思うし!俺は気にしてないけど!


「全部聞こえてる」

「なんか……注目浴びるのも御子柴にとっては大変なことなんだな。ごめーん」

「いーよ。それよりお腹空いたから早く食堂行こう」


結局食堂に着いた後も視線は付きまとってきたが、もう気にしないことにした。これは気にしたら負けな気がする。うどんをすすりながらそう決意していると、チキンカツ丼を食べていた玉谷が箸を止めてこう言った。


「みんな、聞いてくれ」

「ぬぁんだよ?」


もぐもぐと口を動かしながら井村が玉谷に聞き返す。


「俺、受験が終わったら、目黒(めぐろ)さんに告白する!」

「死亡フラグやめろよ」

「第一声がそれかよ!?普通「頑張れ」とかじゃん!」


目黒さんって誰だっけ…?あ、玉谷が球技大会をきっかけに仲良くなってたB組の女子のことか。以前の悲しい恋は忘れて、新しい恋を見つけたんだな、よかったよかった。


「そもそも受験が終わってからって、俺らまだ3年になったばっかだぞ?もっと早めに…」

「それは無理だ!」


井村のアドバイスに間髪入れずに玉谷が「無理」と言ったため、井村がムスッとしながら


「だからチキンカツなんだよ」

「チキンカツは関係ないだろー!」


玉谷が今食べていたチキンカツ丼を見ながらため息をついた。ここまではいつも通りな日常だったわけだが。そこに非日常が飛び込んできた。


「御子柴せ~んぱい!」

「うおっ!?……なんだ穂希かよ。…ズズッ」


椅子をガタッと揺らされたので何事かと思ったが、朝にも絡んできた穂希だったのでそのままうどんをすする。


「御子柴先輩っ!穂希のお願い、聞いてく・れ・る?」

「え~。ズズッ」


面倒な予感がするよー。


「聞いてくれたら、穂希のこと、スキにしていいから…」


(((ごくり…)))


穂希のいかがわし気な言葉に男どもが唾を飲む音が聞こえてきたが、こいつら全員に言ってやりたい。


この人、男ですからーーー!!!



~執筆中BGM紹介~

進撃の巨人 Season2より「attack音D」作曲:澤野弘之様

(追記)

アニメ名間違えてました!すみませんんん!

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