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縁を持つ3人



3月14日のホワイトデー、の数日前。桜宮高校では高校入試の合格発表が行われていた。


「やったー!!合格したー!!!」

「受験地獄ともおさらばだー!!」

「俺の番号あったー!受かったぞー!!」


自分の受験番号を探して、肩を落としながら帰る学生や、空に向かってガッツポーズをとる学生、友達と抱き合いながら喜ぶ学生など、多くの学生で溢れていた。




――兄と合格発表を見にきた学生もいれば



「兄上殿兄上殿!ありました!我は4月から兄上殿と同じ桜宮高校の生徒であります!」

「おう。良かったな。今まで家でも勉強頑張って来たもんな」

「家事や自分の勉強の合間を縫って我に勉強を教えてくれた兄上殿のおかげなのです。それと、」


ぎゅっ、と自分の受験番号が書かれた紙を胸にあてて大切に(いだ)き、恩人たちの顔を一人ずつ思い浮かべる。


「我を穴ぐらから引っ張り出してくれた秋人殿や、しば兄さん。ずっと支えてくれた妹や弟や母上には感謝してもしたりない」

「せめて父さんもその中に入れてやってくれ。父さん泣くぞ」

「父上は……ははっ」

「ははっ、て。ま、いいか。それよりケーキ買って帰るか?」

「本当!?大賛成であります!!」


4月から桜宮高校1年A組に通うことが決まった、田中深凪(みなぎ)





――専属の運転手と共に合格発表を見にきたお嬢様もいれば




「爺や!あたしの受験番号あった?」

(ひめ)様、自分はまだ『爺や』と呼ばれる歳ではないのですが」


スーツをビシッと着こなした20代前半くらいの男性が中学生を相手に『姫様』と呼んだのを聞いた周りの学生たちが驚きの目で少女を見る。


「姫様って言わないでって言ってるでしょ!」

「名前が姫なのですから仕方がないじゃありませんか」

「「まったく、我が儘な子供だぜ」みたいな顔しないでくれる!?あんた運転手のくせに生意気よ!」

「姫様こそ年下のくせに生意気ですよね。…あ、受験番号ありましたよ」

「え!?本当に!?やったー!!……じゃなくて、当然よね。だってあたしだもん!」


ガッツポーズまで決めて喜んでいたのに、急に「当然よね」と余裕ぶるが、嬉しさが隠し切れずに頬がぴくぴくしている。


「はんっ」

「いま、あたしを見て笑った?」

「いいえ、鼻で笑っただけです」

「結局、笑ってるじゃないの!!あんたなんてクビよクビ!」

「雇用主は姫様じゃなくて旦那様なので」

「ムキーーー!!ほっんとに生意気!」

「それほどでも」

「褒めてないわよ!!」


4月から桜宮高校1年A組に通うことが決まった、真壁(まかべ)姫。




――バッチリと女装を決めて合格発表を見に来た生徒もいた




「ま、この私が落ちるはずないよねぇ。今日は同級生にどんな奴がいるか見に来ただけだし~?」


パッと目を引く華やかな美人は、歩くだけで周囲の人間が振り返るほどだった。この場の誰も、自分が男であることなど気づいていないことに優越感を感じながら、視線をたっぷりと浴びて満足する。


「あ!良い男、見~つけた」


彼は男が好きなわけではない。自分に惚れさせてから性別をカミングアウトして絶望する男の顔を見るのが好きなカス野郎なのだ。


スーツをビシッと着こなしている男は、学生の親の歳ではないので、今日合格発表を見に来た学生の兄弟だろうか。


「ちょっとお兄さ、」

「わぷっ」


男に話しかけようとしたとき、誰かとぶつかってしまった。自分のちょうど胸あたりに頭がぶつかった彼女は、おでこをさすりながら涙目で見上げてきた。


「ご、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ……」

「受験生の方ですか?」

「はい……。合格、しました」

「おめでとうございます!私は2年の…いや、4月からは3年の小鳥遊(たかなし)です」

「たかなし……さん」

「はい?」

「好きです!」

「はい??」

「ちっちゃくて可愛くて最高に可愛いです!」

「ちっちゃいって言うなー!!」


4月から桜宮高校1年A組に通うことが決まった、御手洗(みたらい)穂希(ほまれ)




――それぞれに智夏と縁を持つ3人が、4月、桜宮高校に入学することになる






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「香苗ちゃ~ん!冬瑚~!ケーキが完成したよー!!」


御子柴家では、ホワイトデーにバレンタインのお返しとして、秋人と俺でケーキを作ったのだ。


「夏くん、ケーキは作れたんだ?」


心底意外そうな顔をしながらテーブルの上に出したケーキと俺を交互に見る香苗ちゃん。


「ケーキは作れた……と言いたいところだけど、爆散の呪いが発動して作れませんでした!」

「夏兄、ケーキもダメだったの~?面白いね~」

「全然面白くないよ、冬瑚」


死活問題だよ~…。


「でも、兄貴はケーキの上のデコレーションやったから。一応は僕と兄貴の合作」


ケーキを焼いたり生クリームを作ったりするのはダメダメのダメだったのだが、クリームを絞ったり、チョコペンシルで絵を描いたりするのはできたのだ。


「悔しいけど絵を描いたりするのはチョコペンでも兄貴の方がうまいし。悔しいけど」

「2回も悔しいって言った」

「よほど悔しいんだね、秋くん」

「どんまい、秋兄」


ケーキを切り分けて、香苗ちゃんがこの日の為だけに買ってきてくれた可愛いお皿に置いていく。誰が合図をするわけでもなく、自然と4人の声が重なる。


「「「いただきます」」」




~執筆中BGM紹介~

仮面ライダーBLACK RXより「誰かが君を愛してる」歌手:宮内タカユキ様 作詞:康珍化様 作曲:林哲司様


次回からは智夏、3年生です。多分。その前に登場人物紹介を挟みますが。多分。

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