ホワイトデー
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彩歌さんがバレンタインのときにくれた家の合鍵。今日はそれを使うことができて、しかも「おかえり」って言ってもらえて大大大満足で家に帰ってきたその晩のこと。
Prrrrrr…
試験期間中のためテスト範囲を復習していたとき、スマホに電話が掛かってきた。着信は彩歌さんからだった。
「こんばんは。彩歌さん」
『こんばんはっス!智夏クン、いま時間大丈夫っスか?』
「全然大丈夫です」
『もしかして試験勉強をしてたのにそれを中断して「大丈夫」って言ってる…?』
「………ソ、ソンナコトハ」
俺の部屋が彩歌さんから見えているのだろうか。スマホの画面を見てビデオ通話になっていないか確認したが、音声通話だった。つまり俺の行動を読んだ…?す、鋭い!
『じゃあすぐに終わらせるっス!』
「うぅっ…」
せっかくの彼女からの電話なのに、すぐに終わることになるなんて…。
内心でメソメソしていると、彩歌さんが電話越しに笑った……ように思えた。もしかして俺も彩歌さんの行動を読めるようになってきたのだろうか。
『智夏クン!ふわっクマのぬいぐるみ、ありがとう!』
「バレンタインのお返しです。この前、ふわっクマを見て目を輝かせていたので好きなのかなと」
『目を輝かせてたっスか!?うわ~恥ずかし…』
「可愛かったですよ、こど…」
『子供みたいで、って言おうとしたっスか?』
「…」
見える。ジトっとした目をしている彩歌さんが鮮明に見える!
『…ありがとう。気づいてくれて。ちゃんと見ていてくれて』
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
『でも、なんで直接渡してくれなかったっスか?ソファーにちょこんと乗ってたおかげで、私いま気づいたよ』
「なんでって……あー」
手のひらサイズとはいえ、面と向かってぬいぐるみを渡すのが少々恥ずかしかったからです。って言うのもそれはそれで恥ずかしい。
『これからは直接渡してくれると嬉しーな~。ま、家の鍵を直接渡さなかった私が言えたことじゃないっスけどね』
たしかに。バレンタインチョコが入った箱の底に隠されてあったからね、鍵。俺も家に帰ってから気づいて、彩歌さんに電話したもんな。
「俺たち、似たようなことをしてたんですね」
『ふふっ。そうっスね~。……それじゃあ、テスト勉強頑張ってね、智夏クン』
「あの、今のもう一回お願いします」
『頑張ってね!』
「はい!ありがとうございます!」
いまなら六法全書の中身を全部覚えられる気がする!………六法全書は無理か。あれは分厚過ぎてほんとに鈍器だから。振り上げれば凶器になるから。
彩歌さんとの通話が終わった後、一度も集中が途切れることなく勉強に集中できたのだった。
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3月14日。
試験期間中だが、校内には甘い匂いがちらほらと漂っていた。
「え~女子の皆さん、本日はお集まりいただきー」
鈴木が教室の壇上に立って校長のマネをし始めた。
「鈴木のために集まったわけじゃないんですけど~」
「前置きが長いぞ~」
「本題を早く言いなさーい」
鈴木のおふざけはいつものことなのだが、今は試験日の朝。勉強を中断して鈴木の演説を見ているため、みんな急かしているようだ。
「みんなつめてぇな~」
クラスメイトの反応に落ち込む鈴木の言葉に男子達が追い打ちをかけていく。
「入学してから学年1位をキープしてる鈴木には冷たくして当然だろうが!」
「だいたいなんでお前が学年1位なんだよ!バカのくせに!」
「需要ゼロだろ!」
「お前らほぼ悪口じゃねぇかッ!」
いっこうに話が進まないのを見かねて、井村が本題を話す。
「バレンタインに女子がちょこをくれたので、今日のホワイトデーでクラスの男子ともとやんから女子のみんなにお返しを用意しました!」
「「「やった~!!」」」
「あ!井村!俺のセリフ取っただろ!」
何故もとやんの名も出たのか。それはもとやんもどさくさに紛れてちゃっかり女子たちからちょこをもらっていたためである。それに来月からもとやんもクラスメイトだし。
「男子ありがと~」
「わざわざ用意してくれて嬉しいわ~」
「お返しが板チョコのあたり、うちのクラスの男子らしいというか」
我ら男子が選んだお返しは板チョコです。
今日の分のテストをすべて消化し、ちょうど集まって話していたカンナ、香織、エレナの3人の元へ向かう。
「テストお疲れさま」
「「「お疲れ~」」」
「これ、3人にバレンタインのお返しです」
俺が用意したのは市販の箱に入ったチョコです。この3人からはクラスの男子全員にあげていたチョコとは別にもらっていたので、そのお返しである。ちなみに3人とも同じチョコだ。
バレンタインの日の香織からの事故的な「好き」を聞いてから、俺が一方的に香織に対して気まずさを抱いている。多分、香織は俺にその言葉を聞かれたことを知らない。
「ありがと智夏」
「スパシーバ!」
「ありがとう、智夏君」
「どういたしまして。じゃ、また明日」
すたこらさっさと3人のタイプの違う美女から遠ざかる。決して逃げたわけじゃないです。チョコを渡す人がもう一人いるんです。
廊下をちょこっと歩き、隣の教室に入ると目的の人物が見えた。
「もとやん!」
もとやんもすぐに俺に気付き「師匠」と言いながらやってきてくれた。
「これ、バレンタインのチョコのお返しな」
「!」
「ハズレチョコとか入ってないから」
もとやんがうちのクラス全員に配ったチョコは半分がハズレチョコだったからな。
「あ、ありがとうござぃ…」
最後はごにょごにょと恥ずかしそうに礼を言うもとやんはとても乙女でした。
その後、音楽室に向かい、チョコをくれた早乙女先生にお返しを渡して学校を出て、呼び出された場所に向かった。
「お待たせしてすみません、御手洗先輩」
「待つ時間も楽しいものさ。呼び出して悪いね、御子柴」
俺を今日、カフェに呼び出したのは御手洗先輩だった。
~執筆中BGM紹介~
トップをねらえ!Gun Busterより「アクティブ・ハート」歌手:酒井法子様 作詞:森浩美様 作曲:西木栄二様
読者様からのおススメの曲でした!




