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ちょっと早い



自分の謝り癖について考え込んでいるうちに話はまとまり、水野さんが後日契約書を持ってくるということで解散……する前に。


「陽菜乃先輩、すみれ先輩、虎子。バレンタインのチョコとおせんべい美味しかったです」

「私が作ったんだから当然美味しいに決まってる」

「美味しいお店のチョコを買ったんだから美味しいに決まってる」

「虎子イチオシのおせんべいだから美味しいに決まってる~」

「三者三葉の返事をどうもありがとうございます」


陽菜乃先輩の少し不格好な形の手作りチョコ、すみれ先輩のくまさんの形の可愛いチョコ、そして虎子の超固かったおせんべい。どれも大変おいしゅうございました。


俺の返事に続いて天馬先輩もお礼を言っていく。


「どれもうまかった。ありが、」


とう、まで言えずに天馬先輩と繋がっていたタブレットの画面が真っ暗になってしまった。すみれ先輩が持っていたタブレット端末をビシビシと叩く。


「あれ?天馬どしたの?」

「すみれ、いまどき叩いて直る機械なんてないでしょ」

「バッテリーが切れたのではないでしょうか」

「あ…そういえば充電少なかったかも。いっけね~」


すみれ先輩がカバンから充電ケーブルを出している間に、怖いくらいにこにこしたまま黙っている水野さんに、仕事に戻らなくてもいいのかと聞いてみる。


「急ぎの仕事は入っていないのでゆっくりしても大丈夫なんだよね。それに、これから面白いものが見れるって俺の勘が言ってる」


……その勘ってまさか、いまから俺が出そうとしているものですかね。いや、水野さんの勘、鋭すぎない!?


俺が水野さんの鋭すぎる勘に恐れている間にタブレット端末が復活し、天馬先輩の声が再び聞こえてきた。


「すみれ、お前また充電すんの忘れてたろ」

「なんでわかったの!?」

「何年一緒にいると思ってんだ。幼馴染なめんなよ」


画面の向こう側でなぜか偉そうにふんぞり返る天馬先輩は見えていない。天馬先輩の言葉を聞いて、はにかみながらも嬉しそうに笑うすみれ先輩の可愛い顔は。


「春だなぁ…」(俺)

「春よねぇ…」(陽菜乃先輩)

「春ですねぇ…」(ザキさん)

「春だにゃ~…」(虎子)

「青い春だねぇ…」(水野さん)


あぁ…彩歌さんに会いたくなってきた。


「で?なんでいきなりバレンタインの話なんて出したんだ?」


こっちの常春(とこはる)の空気が伝わっていない天馬先輩の言葉に、そうだったと思い返す。


3月14日(ホワイトデー)にはまだちょっと早いですけど…。バレンタインのお返しです」


と言って俺が取りだしたのはスマホ。俺の行動を見て瞳を輝かせる女子3人と水野さん、俺が何をしようとしているのかまったくわかっていないザキさんと天馬先輩。


スマホのフォルダから目的の物を取り出し、俺たちのグループチャットに送信する。少し時間がかかるみたいだ。


この場にいないため余計に状況がわからない天馬先輩がしびれを切らして聞いてきた。


「お返しって何渡したんだよ?」

「曲ですよ」

「あぁ、なんだ曲か……って、曲!?」

「ホワイトデーのリクエストがチョコと一緒に入ってたので。天馬先輩にはリクエストなかったんですか?」

「ホワイトデーのリクエストなんて普通ねぇよ!」


女子3人からもらったチョコの箱や、おせんべいの入った袋の裏側に「ホワイトデーには曲をくれたら嬉しいな♡」って書いてあったのだ。てっきり天馬先輩にもそういう注文が入ってると思っていたのだが、どうやらこれは俺だけらしい。


正直、ホワイトデーに何をあげるべきかかなり悩んでいたので、こういうリクエストをくれるとありがたい。


天馬先輩がツッコんだところでちょうど曲のアップロードが終わった。


「グループチャットの方に音源をアップしたので」

「それ、聞かせてもらってもいいかな!?!?!?」

「ど、どうぞ…」


水野さんの勘は、この曲のことを指していたのだろう。


「では、流しますね」


相変わらず惚れ惚れするような無駄のない動きでザキさんがカラオケのテレビ画面にスマホを繋げて、俺が作ってきた『ホワイトデーの曲(仮)』を流してくれた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






卒業式が終わり、残った在校生たちは学年最後の期末試験の真っ最中。


カリカリカリカリ…


(せわ)しなくシャーペンが解答用紙を走る音が俺は結構好きだったりする。誰にも理解されないけど。これを田中に言ったら「その音を聞いたら俺は焦る」と言ってた。


「はい。手を止めて~。試験終了」


プハァ…


そして試験終了直後の、みんなが息を吐きだす音も好きだ。


「はぁ~。今日の試験はこれで終わりだな」

「また月曜にあるけどな」

「くっ…現実が痛いぜ」

「なぁー。御子柴、田中。これからラーメン食いにいかね?」


鈴木の「くっ…」は全スルーして井村がラーメンに誘ってくれた。この学校の近くにあるラーメン屋さんは結構おいしいし、なにより安い。だからこうして男だけで放課後によく行っているのだ。けれど、今日は他に大切な、本当ッッッに大切な用事がある。


「ごめん、今日は俺これから用事があって行けない」

「そっか。そんじゃまた月曜な~」


足早に教室を去り、そのまま走って駅まで向かい、電車に飛び乗る。


これから向かう先は、なんと、なんと…!





彼女の家!!!!!





~執筆中BGM紹介~

アオハライドより「世界は恋に落ちている」歌手:CHiCO with HoneyWorks様 作詞・作曲:HoneyWorks様

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[良い点] 宅デート…青春……青春したい [一言] 恋の話なのでオススメ曲投下 TVアニメ「理系が恋に落ちたので証明してみた。」より 『チューリングラブ feat.Sou』byナナヲアカリ
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