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だが男だ。

投稿時間がいつもより遅れてすみません。許してくだされ。




放課後に香織の家に1週間通いつめて、カンナの空っぽの頭に詰め込めるだけ詰め込んできた。カンナは勉強をやればできるタイプであり、教えた知識を吸収していく姿はさながらスポンジの如く・・・


「誰がスポンジよ」

「あ、声に出てた?」


期末考査が終わり、「勉強&テストお疲れ様でした会」でお昼を共に食べる約束をしている。今は学校の近くのファミレスで、涼みながら委員会で呼ばれた香織を3人で待っている。


「「さながらスポンジの如く」って。失礼な話ね。そんなに私の頭はすかすかだったかしら?」

「そりゃあ叩けば音が響くんじゃないかと思うくらいには」


おいおい田中、それは思っても言わないお約束。


「田中君?後で体育館裏にいらっしゃいな」

「俺は告白以外の呼び出しには断固として応じない。俺を動かしたいなら果たし状ではなくラブレターを持って出直してくれ」

「田中も言うようになったよね」


初めて顔を合わせたときなんか、ジャングルに突然放り込まれた子ウサギみたいに震えていたのに。


「そういうしばちゃんこそ表情豊かになったよな。メガネと前髪でよく見ないとわからんけど」

「そうかな?」


自分の表情は自分ではよくわからないものである。水滴が滴り落ちるコーヒーが入っていたグラスを眺めながら、髪型変えようかなーと考えていると、


「そのままでいいわよ。これ以上ライバルが増えたら面倒だわ」

「サトリかな?というか、ライバルってなんの?」

「えーそれまじで言ってんの、しばちゃん?」

「智夏は気にしなくていいわ」

「そう言われると気になるけど」


だがこれ以上は田中もカンナも話してくれる様子はないので引き下がることにする。


「ごめんおまたせ~委員会長引いちゃって」

「大丈夫よ。それじゃあ行きましょうか」


香織が合流したので会話を切り上げる。店を出て駅に向かい、そのまま電車に乗った。


「今から行くところってカンナちゃんの行きつけのお店だよね?」

「えぇ。声優の先輩に連れて行ってもらった時に(料理に)惚れたのよ」

「惚れた!?うそうそ誰に!?」

「何を言っているの。料理に決まっているじゃない」

「あ、料理か~」


クールモードのときのカンナは言葉が少ないので、こうして会話が噛み合わないことがある。たまにわざとか?というくらいの言葉足らずな発言をするため、ヒヤヒヤする。このメンバーになら普段の元気娘な姿を見せても問題はないと思うが、周囲の目があるのでできないのだそう。現に今も電車の中でかなりの注目を集めている。


「次の駅よ」

「「「はーい、先生」」」

「引率の先生になった覚えはないわ。というか昨日まであなたたちが私の先生だったじゃないの」


初日に田中が教師をやった翌日は俺が教師をやったが、まぁすごかった。授業中に一体何を聞いているんだ?と問い詰めたくらいには知識が何もなかった。ちなみにカンナから帰ってきた答えは「役について考えてる」とのことだった。真面目なのか不真面目なのか返答に悩む解答だった。


カンナについて歩くこと1分ほど。表通りから一本裏路地に入り、穴場的なお店に入る。モダンな雰囲気で、おしゃれな印象のお店である。


「あ~らいらっしゃい、カンナきゅん!」

「お久しぶりです、星羅(せいら)さん」

「ふぇ~美人ですね~」

「あらありがと!」


パチッと華麗にウィンクを決めて心を鷲掴みされた。

青髪という奇抜な色でも似あうエキゾチックな顔。


「おそろいの制服ってことは、学校のお友達かしら?」

「はっはひぃ!桜宮高校2年A組!田中です!以後お見知りおきを!」

「田中君ね、猫みたいでかわいいわ~」


髪をわしゃわしゃと撫でられ、田中撃沈。ナイスファイトだった、骨は拾ってやるぞ。


「同じく桜宮高校2年A組!御子柴です!よろしくお願いします!」

「眼鏡でわかりにくいけど、君けっこう鼻高いね。それに肌もきめ細かいし。うんうん隠れイケメンと見た!いいね!」


ほっぺたを白魚のような手で撫でられた。・・・御子柴、いっきまーす!ばたん。


「おぉなじく桜宮高校2年A組!花村です!カンナちゃんのお友達です!」

「かっわいい~!!」


星羅さんの満面の笑みが直撃し、香織撃沈。床には死屍累々が。


「そこの(しかばね)ども。星羅さんは男よ」


男よ、男よ、おとこ、よー。


「「「え!?男!?」」萌える!」


弱冠一名の女子が何か言った気がするが、今はそれよりも。


「や~んいきなりバラすなんてひどいわ!カンナきゅん!時間が経ってからのネタバラシが楽しいのに~」


頬をぷくっと膨らませる姿が超かわいい。今ならあの人が言っていた「だが男だ。」が心の底からわかる。


「『お星さまカフェ』のオーナーの星羅(男)でーす!よろしくね~JK&DK?」


首を傾げる姿にきゅんと来る。だが男だ。






「ほんとにおいしー!!連れてきてくれてありがとう!カンナきゅん!」

「ありがと、カンナきゅん」

「きゅんきゅん」


上から香織、俺、田中である。


「次にカンナきゅんと呼んだら指名手配書を親衛隊に流すわ」

「「「ごめんなさい」」」


死しか想像できない。3人で恐怖に震えていたら、カンナがわざとらしい咳払いをした。


「あの、勉強会を開いてくれて、その、ありがとう」


店内で流れていたBGMにかき消されるくらいの小さな声でつぶやいたそれは、不思議と俺たちの耳に届いて。


「いいってことよ」

「また勉強会開こうか」

「授業ちゃんと聞けよ?」


カンナがあまりにも恥ずかしそうに言うので、恥ずかしさが伝染してこっちまで照れ隠しみたいな発言をしてしまう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




数日後、スマホのグループチャットに


「赤点回避」


という四文字熟語がカンナから送られてきたので、無事乗り切れたようだ。


「ほーら終業式だから体育館向かえー」

「うぃーす」

「うぇーす」

「うぉーす」

「お前ら適当すぎだろ」

「ヨシムーが適当だから」

「それなー」


体育館にぞろぞろ向かう。すると列の前方からざわめきが。


「なんだ?」

「さぁ?」


どうやらこっちに向かってきているみたいだが、この体育館に向かう波を逆走するとは何事。

まるでモーゼのように人の海が左右に動いて真ん中に道ができた。そしてその道を我が物顔で歩く女生徒には見覚えが。


「お、おい三大美女の一人の生徒会長がこっち来るぞ!なんでだ」

「いや、知らないよ。それより俺らも横にずれよう」


小声でやりとりしながら右にならえで廊下の端に寄る。会長が通り過ぎるのを待っていたが、目の前で止まってしまった。というかめっちゃこっち見てる。え、なんで。


「御子柴智夏君、だね?放課後時間あるよね?」


あるかな?ではなくあるよね?と聞く当たり、恐怖しか感じない。


「あるよね?ね?」

「あ、りますけど」

「じゃあ生徒会室で待ってるから」


そう言い残すと背を翻して颯爽と去っていった。

田中の「また美女に絡まれてる」というつぶやきにイラっときたので弱点の脇腹に思いっきり手刀を入れる。

一難去ってまた一難。




ついに三大美女が出そろった!


本作にちなんで執筆中のBGMをご紹介。

本日はもののけ姫より「アシタカせっ記」作曲:久石譲様

「せっ」の漢字が無いのが悔しいところです。壮大で深い、いい曲。

みなさんのおススメのBGMがあれば、ぜひ教えてください!

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