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忘れて



どこだろう、ここ…?


消毒液の匂い、それに白いカーテンに間地切られているベッドに寝ている私。これらの情報から推理をすると、導かれる場所は限られる。


「保健室?」

「あら起きたのね」

「えっと…?」

「あなた、お酒入りのチョコを食べて酔っ払っちゃったんですってね〜。覚えてる?」

「よ、酔っ払っ!?」


ど、どどどどどういうこと!?酔っ払ったって言われても、その記憶がまったく無いんですけど〜!?


とりあえず保健室の先生に言われた通り、寝ている間に少し乱れた制服を整えて、廊下に出る。


キーンコーンカーンコーン


教室に向かっている途中で、鐘の音が鳴り、生徒たちの脱力したような、リラックスしたようなそんな声が一斉にあちこちから聞こえてきた。


つまり、これは授業の終わりを告げる鐘の音ということ。1時間も寝ちゃってたなんて恥ずかしい…。


肩身の狭い思いをしながら教室の後ろの扉からこそっと入ると、みんなの顔が同時に私をみた。


「香織ちゃーん!!心配したんだよ?」

「ご、ごめんね?」

「だってもうお昼になるのに帰ってこなかったから!」

「へ?お昼?」


教室に設置してある時計を見ると、時刻は12時23分だった。


「え、えええぇぇぇぇぇぇええええ!!私こんなに寝てたの!?」


嘘でしょ!?


「香織、その…大丈夫か?」


とんでもなく気まずそうに智夏君が私のことを心配してくれた。


ねぇ、なんでそんなに気まずそうなの?酔っ払った私が何かしたの?どうなの?怖くて聞けないんだけど〜!


「智夏君、あの、あのね。私、酔っ払ってるときの記憶がなくてね……なにか、やらかしたかな?」

「記憶が?そっか……うん。なんにもなかったよ」


そっか、の後の間はなにかな?私、絶対なにかやらかしたよね!?もうやだ!好きな人にやらかすなんて最悪!


「まぁまぁ、とりあえずお昼食べよ?」

「御子柴君がなにもなかったって言うならそれが真実さ。だからもう忘れよ?」


だから、忘れたんだってば。やらかしたことも全部、綺麗さっぱりと。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






香織が酔っ払ったときの記憶がないと知って、全て無かったことにした俺は、とりあえず謎の安堵感に包まれながらお昼を田中たちと食べていた。


「チーちゃん。はい、どうぞ」


今日は香苗ちゃんお手製のお弁当を頬張っていると、後ろからエレナがやってきた。みんなよく後ろからくるよね。俺、殺し屋だったら背後からやられて何回も死んでるな。


「バレンタイン?」

「ダー。ロシアのあまーーーーーいチョコ」

「あまーーーーーい」

「みんなにもあげる」

「「「い、いや遠慮しようかな…」」」


お前ら、エレナからのチョコ断るとか蛮勇だぞ。


「今ここで口にチョコをねじ込まれるか、大人しくチョコを受け取るか。一つに二つよ!」

「惜しい。二つに一つだな」

「チーちゃんうるさい」

「ふがっ!?」


エレナの日本語の間違いを指摘したら、あまーーーーーいチョコを高速で口にねじ込まれた。


「あっ、あまっ、あまい、あっ、あっっ!」


田中達が俺の悶絶する姿を見て180度態度を変えた。


「昼から変な声出すなよ、しばちゃん。エレナさん、チョコありがたく頂きますね」

「どうぞ〜」

「俺も実は甘いチョコ食べたかったんですよねーハハッ!」


口の中が甘すぎて、もう、もう!鼻にも甘さが抜けて、なんというか、顔全体で甘さを感じているというか。チョコを飲み込んだ喉にもあまーーーーーいチョコの香りが残っていて、その後に食べるお弁当のおかずは全部チョコの味がした。






その後、バンド『ヒストグラマー』のメンバーである高比良(たかひら)すみれ先輩や、色々お世話になった音楽の早乙女(さおとめ)先生からチョコを貰い、学校を出た。


去年に比べてなんたる飛躍。この一年でぐぐっと広がった人脈に感慨深くなりながら、呼び出されたカフェに向かう。


「お久しぶりです。本田さん、猫平さん」

「あら、見ないうちに大きくなったかしら?」

「こ、高校生の進化は早いね」


カフェで待ち合わせていたのは、Luna(ルナ)×Runa(ルナ)の2人だ。2人とも相変わらず派手な髪色で店内に入るなりすぐに見つけた。


『劇場版ツキクラ』の主題歌を担当することが決まり、事務所が本格的に2人を実力派の歌手路線で売ることに決めたらしく、最近いろいろ忙しいらしい。


「今日はゆっくり話したいところなんだけど、この後すぐ仕事があってね」

「大変ですね」

「で、ででもやりがいがある。智夏ちゃん、これ受け取って欲しい」

「私たち2人からのほんの少しの気持ち」

「ほんの少しって…」


サイズからしてワンホールのケーキですよ…?全然少しなんかじゃないです。


「わ、私たちがこうして仕事に追われるようになったのも、全部、智夏ちゃんのおかげ」

「それは違いますよ。俺たち3人で成し遂げたことです。誰が欠けていても、この瞬間(未来)には辿り着けませんでした」

「瞬間と書いて」

「み、未来と読む」

「「さすが」」

「忘れてください…」


改めて言われるとこっぱずかしい!


・作者からのお知らせ(言い訳)

今日は初めて最初から最後までスマホで執筆しました。普段はパソコンで執筆しているのですが……なんと、自宅のWi-Fiが機能を停止してしまいまして、急遽スマホから、という形に。Wi-Fiが復旧もしくは新しくなるまでスマホで執筆するため、少し文量が少なくなるかもしれません。ご迷惑をおかけします。

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