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インパクトの作り方

作中はバレンタインでも現実は夏ですねぇ…。



謎のチョコに入っていた少量のラム酒でべろんべろんに酔ってしまった香織を保健室に連れて行くべく悪戦苦闘していた。


「香織さーん。歩けないから離れてくださいませんかね?」


俺の腕にしがみついて離れなくなった香織をどう剥がすべきか。下手に腕を動かすと、その……豊かな桃2つに当たりそう、というかもはや当たっているような気がするが、絶対気のせいだ。相手は酔っ払い。そう、酔っ払いだから!


「暑い…」

「そうだね。暑いなら離れようね」

「やーだー。離れるくらいなら脱ぐ~」

「は!?香織、落ち着いて!くっついてもいいから制服を脱ごうとしないで!」

「にゃはは。やったー」


制服のボタンを外していた手を止めて、また俺の腕にくっついてきた。これは、まさかわざと?俺から「くっついてもいい」という言質(げんち)を取るための?


「くそぉ…!策士め!」


思わず漏れてしまった言葉に、横でずっと静観していた田中たちがツッコむ。


「あれは策というより本能だろ」

「もしくは御子柴を揶揄うための行動だろうな」

「田中も井村も見てないで手伝ってくれよ」

「はぁ?俺らが手伝ったらセクハラで訴えられるだろが」


確かに、それならダメか……


「って、おい!俺も現在進行形で危機的状況なんですけど!?」


言われてみれば確かに、この状況かなりまずいのでは!?セクシャルハラスメント的な、コンプライアンス的な問題が!しかもこれは倫理的にも非常にまずい。彩歌さんにこの状況を見られて嫌われでもしたら灰になる自信がある。


「工藤さん!松田さん!」


近くで面白そうに見ていた女子たちを呼ぶ。


「はいはいわかったよ」

「御子柴君がお姫様抱っこして香織ちゃんを保健室に運んでもいいんだよ?」


お姫様抱っこをして保健室に運ぶ?


「俺にそんな筋力と度胸はありません」

「意気地なしめ」


なんとでもどうぞ。この教室から保健室までは階段を下りなければ行けないため、俺の非力な筋肉でそれは不可能だ。最近、ダンベルを購入して鍛えてはいるのだが、どうやら筋肉が付きにくい体質のようで、今のところ成果はあまり見られない。


「さぁ香織ちゃん、そろそろお休みしましょうね~」

「いざ()かん、保健室へ!」

「にゃはは~」


酔っ払い(香織)は友人の女子2人にサイドを固められ、今度こそ大人しく連れて行かれたのだった。こんなところをクラスメイトはともかく、他の誰かに見られたら……って廊下にたくさんいたの忘れてた!


思わず廊下を見ると、たくさんいたはずの他クラスの生徒たちが一人もいなくなっていた。


「あれ?」

「廊下の野次馬共ならとっくに帰らせたぞ」

「玉谷…」

「あんな姿見られたら花村さんが困ると思ってな」

「「「玉谷…」」」


トゥンク…


玉谷の言葉を聞いた俺、田中、鈴木、井村の4人が同時にときめいた。縁の下の力持ち、他人を気遣える男の中の男、玉谷…!


「お前ってやつぁ…!」

「男が惚れる男だぜ!」

「なんで女運がねぇんだろうな!」


田中たちは相変わらず言いたい放題だが、とりあえず俺はこれを言わないとな。


「ありがとう、玉谷」

「別に礼を言ってほしくてやったわけじゃないけど。でも、礼を言われると嬉しいもんだな。へへ」

「………誰か玉谷をお嫁さんにしてあげてぇー!」

「しばちゃん落ち着け。ごりごりの体育会系の玉谷にウエディングドレスは似合わない」

「それはわからないだろ!」

「御子柴も田中も冷静になれ!そもそも俺は旦那さんになりたいのであってお嫁さんになりたいわけじゃないっ!」

「「…」」


なぜ俺はこんなことで田中と言い合いをしていたんだろうか。


「ていうか、こんなとんでもないチョコを置いたのは結局誰なんだよ?」

「「「さぁ…?」」」


こんな混乱を招いた人物は一体だれなのか…


「その言葉を待っていたー!」


教室のドアをパーンと勢いよく開け…すぎて跳ね返って自分のおでこにぶつかって痛みに(うずくま)っているのは……


「もとやん」

「元山と呼んでくれとあれほど……いや、もういい。それより、チョコはどうだったかな?」

「「「最悪だった」」」

「「「最高だった」」」


ちょうど半分に分かれたクラスの意見を聞いたもとやんが満足そうにうなずいた。


「フッ、計画通り」

「もとやん、なんでこんなことしたんだよ?」

「そーだよ、嫌がらせかよ?」


悪い顔をして笑っていたもとやんを、みんな無視して詰め寄る。


「嫌がらせじゃない。僕は3年生からこのクラスの一員になる」

「そうだね」

「知ってる」


みんな知ってることを何故いまさら。


「だからあいさつ代わりにこのチョコを用意したというわけで」

「え?わからん。なにがどうなってその結論に至った?」


田中が息をするようにツッコミを入れる。


「僕が読んだ『初対面の人に名前を覚えてもらう1002の方法!』にはインパクトが大事だと書いてあったから」

「インパクトの作り方よ」

「そもそも、もとやんの名前はみんな覚えてるし」

「本のセンス独特かよ」


わぁ~ツッコミの嵐や~。


「ということで、4月からよろしくお願いします」

「「「よろしく~」」」


強烈な個性を持った愉快な仲間が、4月から桜と共にやってくる。


「後で花村さんに謝ってくる」

「そうだな」

「あと、師匠もごめん」

「本当にな」



~執筆中BGM紹介~

とらドラ!より「オレンジ」歌手:逢坂大河(釘宮理恵)様・櫛枝実乃梨(堀江由衣)様・川嶋亜美(喜多村英梨)様 作詞:渡邊亜希子様 作曲:Funta3様

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