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愛の果実

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2月13日


御子柴智夏、高校二年生はそれはもう絵に描いたように浮かれていた。地に足つかないというか、もはや浮いているというか。


だって、彼女の家の鍵をもらったんですよ?これが浮かれずにいられるでしょうか。いや、恋人なら浮かれずにはいられまい。


「御子柴は今年はチョコいっぱい貰えそうだよな~」


羨ましい、と言いながら鈴木が近くの席にやってくる。その隣には井村も一緒だ。


「そうかな?」


去年、学校でもらったバレンタインチョコはクラスの女子が男子全員にくれたお情けチョコ。そしてカンナからもらったチョコだけだ。だけ、というか2個でももう十分なわけだが。それに今年はもう本命チョコを彼女からもらってるわけで。


「なにが「そうかな?」だよ!三年の女子からちょくちょく告られてるの知ってんだからな!」

「それは全部断ってるから」

「だとしても!なんにももらえないってことはないだろ」

「妹からもらえることは確定してる」

「いいなぁ妹。俺も姉妹が欲ーしーい~」


冬瑚がこの前、秋人からクリスマスプレゼントにもらったエプロンを着て言ってくれたのだ。


『夏兄と秋兄には、大好きをいっぱい込めたチョコをあげるね』


もうね、これを聞いた瞬間に幸福感に満たされたよね。妹ってなんでこんなにも尊い存在なんだろうね。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






話に花を咲かせたり、昼食をゆっくり食べたりしてリラックスするはずの昼休みに、軍隊のように一糸乱れぬ動きを見せる集団がとある教室に集まっていた。


「諸君らにこうして集まってもらったのは他でもない。明日のバレンタインについてである!」

「「「バレンタイン???」」」


学年、性別、年齢関係なく集まる彼らはカンナ親衛隊である。影からこっそりとカンナを見守り、カンナが快適な学生生活を過ごせるようにサポート?している………つまりやべぇ奴らである。


「カンナ様のご友人である2年A組の御子柴が今年はチョコを不特定多数から貰う可能性があることがわかった」


仕入れたばかりの情報を公開するのは今年1月から親衛隊のナンバー(ツー)を務める2年の女子生徒である。ちなみにトップはもちろんカンナだ。その情報を聞いた途端に、親衛隊の主に男子が騒ぎ出した。


「うらやましい!」

「リア充爆発しろ!」

「俺にもくれ!」

「静粛に!!」


鶴の一声で教室が静まり返る。それだけで統率のとれた組織だということが窺える。


「純粋な好意でチョコを作って渡す女子もいるだろうが、妙な噂を耳にした!それは、御子柴を妬んだ男子がめっっっちゃ苦いチョコを女子のチョコに混ぜて渡そうとしているとのことだ!」


最近3年の女子を中心に告白が続いている智夏を妬んで、暇な男子生徒たちが考えたちょっとした腹いせ。


「し、ししししし失恋したとはいえ!御子柴はカンナ様が一度は惚れた男であり、今は友人だ!つまり我々が守るべき対象である!」

「「「はい!!」」」

「明日、怪しい動きをしている者がいたら捕まえて、生きてることを後悔させろ!!!」

「「「はい!!!」」」


もう一度言おう。やべぇ奴らである。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






引退してもなお学校全体、特に3年生に圧倒的影響力を持つ元生徒会長の一条陽菜乃。そんな彼女が昼休み、とても悲しそうに言ったのだ。


「私の大切な大切な後輩君に、どうやらちょっかいをかけてる子が多いらしくてね~」

「お気に入りの後輩君って、噂の御子柴君のこと?」

「えぇ。同じバンドメンバーだし、特に目をかけている後輩なの」


()()一条陽菜乃が目をかけている後輩。そしてその後輩に手を出す意味。つまり、無事に卒業したかったら、生半可な気持ちで手を出すなという警告だ。


有名人になった智夏と良い仲になりたくて近寄っていた女子や、興味本位で近づいていた女子たちの顔色が悪くなる。一条陽菜乃が超お金持ちのお嬢様だってことは周知の事実だが、彼女らが怯えているのは財力にではない。一条陽菜乃の持つ圧倒的な人脈だ。


一条陽菜乃の周囲にいる人間は、彼女の目となり耳となるが、それと同時に口にもなるのだ。カンナにとっての親衛隊と同じようなものである。


「今後、私の可愛い後輩君を困らせるようなことがあったら、ちょーっと黙ってはいられないかな~」


ふふふと笑いながら言ったこの言葉は瞬く間に3年生全体に広まり、3年女子の智夏に告白ラッシュが突如終わりを告げたのだった。


智夏本人がその理由を知ることはないままに…。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





裏でカンナ親衛隊と陽菜乃が起こした行動など露知らず、智夏はクラスメイトとチョコについての議論を交わしていた。


「つまりチョコは愛の果実なんだよ」

「鈴木がまた変なこと言ってんだけど」

「井村はいいよな!彼女がいるからチョコもらえるじゃんか!」

「羨ましいならお前も彼女を作れ」


彼女持ちの井村が鈴木に禁断の言葉を口にする。


「井村、お前は言ってはいけないことを言った」

「でも、正論だろ?」

「正論が正しいとは限らないんだよ!……なんか今の言葉、哲学っぽいな」

「なんでこんなバカが学力トップなんだろうな」

「宝の持ち腐れだよね」

「猫に小判だな」

「豚に真珠」

「お前ら!聞こえてんぞコラ!」


勉強ができるバカって本当にいるんだなぁ、と鈴木を見ているといつも思う。そんな鈴木だから嫌味が無くて友達も多いんだろうな。


多いのは男友達だけど。



~執筆中BGM紹介~

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。より「ユキトキ」歌手・作詞:やなぎなぎ様 作曲:北川勝利様

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