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健闘

今回から「作曲バトル編」です。サブタイトル途中で変えたらごめんなすび。



球技大会を終えて2月に入った。


彩歌さんからもらった手袋をしながらやってきたのは、正月にも来たとあるテレビ局だ。今日は1週間ある撮影期間のうちの1日目。


ロビーに入って誰の目にもつかないようにこっそりとトイレに入る。誰にも見られていないことを確認し…ってなんだか犯罪を犯す前のようだと自分で苦笑いする。前髪をサイドに流し、後ろ髪を結んで雀の尻尾のようにし、最後にリュックから取り出した鼻から上だけの狐面を付ける。


「よし」


最後におかしなところがないか鏡の前で確認して、トイレから出る。


「あの~もしかして御子柴さんでしょうか?」

「あ、はい。そうです」

「控室に案内しますね~」


トイレから出て、ロビーのソファーに座ろうとしたとき、例の番組スタッフから声を掛けられて、そのままついて行く。


「もう聞いてるかもですけど、軽く説明しますね」

「はい。お願いします」


俺が敬語を使うことに驚いたのか、スタッフの男性は少し目を(みは)ったあと、「この人はまともなのか」と何やら不穏な言葉を口にしていた。


「『素人とプロはどっちが強い?』という番組タイトルは知ってます…よね?」

「はい。…見たことは、ないんですけど」


すみません、と謝ると、いえいえ、と首を振るスタッフ。ここは嘘でも「毎週見てます!」と言っておいた方がよかったか。


「番組の内容はもうタイトルの通りです。募集した一般の人と、その道のプロの人とで毎週対決をしてもらうんです。この番組、最初はプロの連勝で終わるだろ、とか言われてたんですけど、コレが意外と素人の人たちと勝敗が五分五分なんですよねぇ。あ、別に御子柴さんが負けるって思ってるわけじゃないですからね!」

「は、はぁ」

「何か聞きたいことはありますか?」


今聞いた内容は香苗ちゃんから事前に聞いていた内容と同じだ。問題は、俺の他に呼ばれているというサウンドクリエイター達。


「俺の他に、誰が呼ばれているんですか?」

「行けばわかります」


控室に行く前の予備知識が欲しかったのだが。もったいぶられたのか、ただ説明が面倒になったのか、前を歩くスタッフは教えてくれなかった。


「控室はここです」

「ありがとうございます」

「いえ、健闘を祈ります」


それは番組での勝敗の話ですよね?もしかして、俺以外にプロ側として呼ばれた人たちのキャラが強烈とか?いやいやそんなわけない。そんなわけないよな?……だれか否定して!


若干震えながら控室の扉を開ける。


ガチャリ、と音がして、一歩踏み込む。と、小さな影が飛び込んできたので、咄嗟に受け止める。


「きつねちゃんだ~!」


俺に飛び込んできた小さな影は、天然パーマが可愛い小さな女の子だった。


「え…?女の子?」


キャッキャと楽しそうに狐面に手を伸ばす女の子を戸惑いながら抱き上げる。と、横から殺気を帯びた声が耳に飛び込んできた。


「我の娘を抱き上げて、何をする気ですかな?」

「…っ!?」


驚いてる隙に、女の子を取り上げたのはふっくらとした体格の眼鏡をかけたアフロの男性……あ、まさか。


AFLO(アフロ)さん、ですか?」

「いかにも。我が『GPシリーズ』のサウンドを手掛けたAFLOである」

「お会いできて嬉しいです!」


『GPシリーズ』といえば、第4期まで放送し、第5期の放送も決定している大人気料理アニメのタイトルだ。髪形からしてもしや、と思ったのだ。


「ちなみにコレはアフロではなく、天然パーマであります」

「なるほど。ではそちらは…」

「我の自慢の一人娘であります」


女の子のクルッとカールした髪はどうやら父親からの遺伝らしい。


「そういう狐面の少年は、御子柴智夏氏でありますかな?」

「はじめまして」

「はじめまして。我はAFLOと申すもの。そしてこの子は紫央花(しおか)であります」

「しーちゃんだよ!」

「可愛い名前だね」

「うん!」


しーちゃんとほっこりしながら笑いあっていると、ぺしっとAFLOさんに引きはがされた。


「うおっほん!」


はっ!しまった。この場には他にもサウンドクリエイターがいたのだった。


「は、はじめまして!御子柴智夏です!ふ、不束者ですがよろしくお願いします!」

「こちらこそよろしゅう頼んます」


関西弁で返してくれたのは右目を眼帯で隠した女性だった。ちなみに服はどこかのアニメで見たような騎士の服装だ。コスプレイヤーみたいだ。


「ウチは佐久間(さくま)ルン。好きに呼んでえぇよ」

「では、佐久間さんと」

「りょーかい。御子柴くん」


最近話題の小説投稿サイト発のアニメ化作品『異世界で人生下克上』のサウンドクリエイターである佐久間ルンさんはどうやら関西の方のようだ。騎士服を着ながら関西弁を喋るってシュールだな。


そして最後に……


「ZZZ…」


寝てる。結構騒いでたのに、ビシッと良い姿勢を保ったまま眠っている。


「あの~」

「あ、御子柴くん。起こさんほうがえぇで」

「へ?」

「寝起き悪いねん。氷雨(ひさめ)は」


それならそーっと離れよう、と思ったら首にぎゅっと何かが抱き着いてきた。


「んんっいい匂い……かぷっ」

「な!!へ!?!?」


なにごと!?いきなり首に手を回して後ろから抱き着いてきたと思ったら首を噛まれたんですけど!?


「氷雨、はよ起きぃや。ご執心の御子柴くんやで」

「みこしばぁー?」


佐久間さんが抱き着いてくる氷雨さんを引きはがしてくれた。氷雨さんはまだ意識が完全に覚醒してはいないようで、ろれつが回っていない。


「あぁ、君が御子柴智夏か」

「はい。よろしくお願いします」


改めて挨拶をしたら、ふふふっと氷雨さんは綺麗に笑って言った。


「ずぅっと君を待っていたよ」

「え…?」


まるで長年離れていた家族にでも会ったかのように、少し目を潤ませながら彼女は、氷雨さんはたしかにそう言った。



~執筆中BGM紹介~

遊☆戯☆王より「明日もし君が壊れても」歌手:WANDS様 作詞:坂井泉水様 作曲:大野愛果様

パソコンのタッチパッドが反応しなくなっちゃいました。アプデをしたのがいけなかったのか…。壊れ、いや、きっと壊れてないって信じてる。

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