ちゃんと見てて
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なによりここまで読んでくださった読者の皆様にありがとうの気持ちを込めて…歌いまs(爆
「しばちゃんのあれで勝てたよな〜」
「ホームラン出したかったんだけどね」
俺たちのソフトボールチームは一回戦を勝ち抜き、今はA組チームの応援に回っていた。
D組との試合は5―0で俺たちが勝った。ソフトボールの試合は1日で終わらせるために3回までしかないため、1回裏で4点、そして3回裏で1点追加して計5点で勝った。まさか本当に運動部に勝てるとは思わなかったのでみんな浮き足立っている。
ちなみに今はエレナ率いる女子ソフトボールの試合を観戦中だ。
「エレナさんすごいなぁ」
「3回目のホームランだよ。なにあの貫禄、まるでプロだよ」
「ピッチャーとしても活躍してるもんなー」
攻守ともに輝きを見せる……というか攻めて攻めて攻めまくって点をもぎ取っている。
「女子ソフトボールは2回戦余裕で勝ちそうだし、香織ちゃんたちのバスケ見にいこうぜ!」
ソフトボール以外の球技は全部体育館でやっているためそちらにA組男子のソフトボールチーム全員で向かう。
本当ならグラウンドから玄関に行って上履きに履き替えてから体育館に行かなければならないが、面倒くさいので外から回って近道で体育館に向かう。こういう何気ない行動に「本当に高校生してるんだなぁ」と実感する。
だんだんと体育館に近づくにつれて、ドリブルの音やブザーの音が聞こえてきた。外履きを脱いで脇に置き、開きっぱなしの扉をくぐると、ちょうどA組女子のバスケの試合中だった。
「お〜やってんなぁ」
「いま同点か!」
「頑張れよー!」
こいつらまともに応援できたのか……。試合中のからかい混じりの応援(?)を思い出して横で応援している奴らを冷ややかな目で見てしまう。
「な、なんだよ?」
「普通に応援できるんだなーと思って」
「女子にはな」
「そういう素直なところ嫌いじゃないよ」
「男に言われても嬉しくねぇ」
鈴木、お前ってやつは…。鈴木の現金な態度に呆れる一方で、そんな自分を不思議に思う。
去年の球技大会は一回戦で負けてから田中と2人で応援に回ったり、サボったりしていたので、こういう風に田中以外の誰かと気兼ねなく話すなんて想像できなかったのだ。こんな風に少しずつ自分の世界が広がっていってるのを実感し…
「おわぁっ!?」
ほげーっと試合を見てたら目の前にバスケットボールが飛んできて驚いたが、それよりボールと俺の顔面の間に滑り込んできた手に驚いた。
「智夏くん大丈夫!?」
顔面のピンチを颯爽と現れて助けてくれたのは、ビブスを着て、少し息が上がっている香織だった。
「あ…うん。俺は大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして!もうボーッとしてたらダメだよ?」
バスケットボールを片手に汗を輝かせて笑う香織はとても眩しかった。香織の忠告に大人しく頷く。
「ちゃんと見てて」
ニコッと笑った香織の言った言葉はおかしなものではなくて、普通のものだったのに。そのはずなのに、少しだけ胸が高鳴ってしまった。
言いつけ通りにしっかり見ていると、香織が逆転3Pシュートを最後に決めた。この瞬間を見届けた者たちは語り継ぐ。
女神は実在するのだ、と。
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とあるテレビ局の一室にて、サウンドクリエイターの先駆者と呼ばれる女と、とある番組スタッフが話していた。
「ということで、一般人から選ばれた4人と、サウンドクリエイターとして成功している皆さんで対決して欲しいんです」
へらへらと笑いながらスタッフが番組の内容を説明する。
「番組側で用意したアニメに合ったBGMを皆さんにそれぞれ作曲してもらって、一般人とプロの方で戦ってもらうんです!」
女はその番組の概要が書いてある紙を一通り読み、満面の笑みでこう言った。
「悪趣味ですね」
「へ……?」
思わず赤面しそうなほどの笑顔とは対照的な冷ややかな言葉にスタッフは脳が追いつかない。
「悪趣味で……実に私好みです。私の他のサウンドクリエイターは誰ですか?」
さっきのは幻聴か…?とスタッフが無理やり自分を納得させ、女の質問に答える。
「まだ候補の段階ですが…『GPシリーズ』のAFLOさん、『異世界で人生下剋上』の佐久間ルンさん、そして『月を喰らう』の御子柴智夏さんの3人です」
3人目の候補の名前が出たときに女の笑みが深まった。
「御子柴さんが参加するなら、私もこの話お受けしましょう」
「ほ、ほんとですか!?」
ダメ元で頼んだ話だったが、まさか引き受けてくれるとは。
「わかりました!絶対御子柴さんに出演していただきますので!スケジュール空けといてくださいね!」
「えぇ、もちろん」
それから軽く雑談をしている中で、スタッフがふと疑問を口にする。
「そういえば、どうして御子柴さんなんですか?」
他にもたくさんのサウンドクリエイター達がいるのに、どうして最近出てきたばかりの人物にこだわるのか。
「それは……同じ音がしたから、でしょうか」
「同じ音?」
「えぇ。深い絶望を味わった人しか出せない音」
「なんですか、それ?」
スタッフの質問には答えずに、ただ微笑むだけの女はどことなく血の通っていない人形のような印象を抱かせた。
「それじゃあよろしくお願いしますね、氷雨さん」
「こちらこそ」
~執筆中BGM紹介~
黒子のバスケより「Glorious days」歌手:GRANRODEO様 作詞:谷山紀章様 作曲:飯塚昌明様
読者様からのおススメ曲でした!I can do it! You can do it!




